症例73 解答編

症例73

【症例】60歳代 女性
【主訴】発熱
【現病歴】左大腿骨頸部骨折手術目的で整形外科入院中。手術予定前日に発熱あり。

【既往歴】糖尿病、糖尿病性腎症
【身体所見】身体所見:CVA tenderness右(-)、左(±)
【データ】WBC 20500、CRP 34.23、Cr 3.24

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膀胱壁の全周性の肥厚に加えて、周囲に著明な脂肪織濃度上昇を認めています。
壁の境界が不明瞭になるほど脂肪織濃度上昇を認めています。

さらに、膀胱内の尿は通常の尿の濃度と比べてかなり高吸収になっていることがわかります。

高吸収な場合には、血腫の可能性も考えられますが、今は壁肥厚および周囲の著明な脂肪織濃度上昇を認めていること、著明な炎症反応高値を認めていることからも、考えるべきは、膀胱内膿瘍です。

また両側腎萎縮がベースにあり、両側の腎臓に水腎症を認めています。
尿路の閉塞が疑われます。

診断:膀胱膿瘍(+両側水腎症)疑い

※尿管周囲の脂肪織濃度上昇も認めていますので、膀胱のみでなく尿管内にも膿が貯留していることが推測されます。また膀胱膿瘍という用語は一般的ではないため(上記解説では使用しましたが)、重度の尿路感染(膀胱炎+腎盂腎炎)などと表現するのが無難かもしれません。
※当然、翌日に予定されていた手術は中止となり、泌尿器科コンサルトとなりました。

※尿道カテーテル20Fr留置し、灰白色の膿が引けました。また生食500mlで膀胱内を洗浄しました。

尿培養からはEscherichia coli(大腸菌)が検出されました。
血液培養2セットからは菌は認めず。

—–泌尿器科見解——-

骨折を契機に無症候性膿尿から有熱性尿路感染を発症したと推測します。
尿道カテーテル留置により腎盂内圧亢進の解除は期待できますが、敗血症として培養検査判明まではカルバペネムなどの広域スペクトル抗生物質投与をお願いします。

その他所見:

  • 消化管内に石灰化を認めており、透析を行っており、リン吸着薬(ホスレノール®)の内服が考えられます。(腹部TIPS症例1でやりましたね。)
  • 著明な動脈硬化あり。
  • 陶磁器胆嚢(磁気様胆嚢)の状態。(腹部TIPS症例4でやりましたね。)
  • 左大腿骨頸部骨折(内側型)あり。
症例73の動画解説

passは、73です。

お疲れ様でした。

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