
補足症例2
【症例】20歳代 女性
【主訴】腹痛
【現病歴】起床時から腹痛あり、嘔吐出現あり、近医受診にて補液。下痢症状出現あり、症状改善しないため来院。
【身体所見】意識清明、BT 37.4℃、腹部に圧痛あり、反跳痛なし
【寄食歴】数日前に焼き肉、トリ摂取あり
【データ】WBC 10600、CRP 16.26
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上行結腸から横行結腸の一部に3層構造を保った壁肥厚を認めています。
いわゆる右半結腸炎です。
下行結腸の一部からS状結腸に液貯留を認めており、下痢症を示唆する所見です。
冠状断像では右半結腸炎の様子が全体像として見ることができます。
さて、このような右半結腸炎を見た場合に考えなければならないのが、
- サルモネラ
- カンピロバクター
- O-157腸炎
といった感染性腸炎(大腸型)です。いわゆる食中毒ですね。
この方は、数日前に焼き肉、トリ摂取ありとのことですので、カンピロバクターの可能性が少し上がるでしょうか。
また感染性腸炎の他に、
- 薬剤性腸炎(出血性)
- アメーバ腸炎
- 赤痢菌
- 好中球減少性腸炎
といった病態でも右半結腸炎をきたすことがあります。
便培養を出されても原因菌の同定に至らないことが多いのですが、今回は便培養から、
Campylobacter jejuni
が出ました。
診断:感染性腸炎(大腸型)疑い
※便培養にてカンピロバクターで確定。
※いずれにせよ保存的に加療されます。
最終診断:カンピロバクターによる感染性腸炎(大腸型)
補足症例①で見たように感染性腸炎は以下のように分類されます。
なかでも大腸型は細菌によるものであり、主に
- カンピロバクター
- サルモネラ
- O-157
などによって起こります。
そしてこれらはいずれも今回のような右半結腸炎として所見を認めるのが特徴です。
補足症例①の小腸型と異なり粘膜下層の肥厚を割と派手に認めることが多いので、目に付きやすいですね。
また左半結腸にこのような所見を認めた場合にまず思いつかなくてはいけないのが虚血性大腸炎でしたね。
合わせてこの機会に復習しておいてください。
その他所見:
- 回盲部小リンパ節散見。
- 両側乳腺症の疑い。
- 少量腹水あり。
補足症例2の動画解説
関連動画
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
「3層構造を保った壁肥厚」と、しっかり所見に記載することができました(^▽^)/
浮腫の影響もあるんでしょうか、左半結腸も少し壁肥厚があるように見え、
「右半結腸炎」と指摘することはできませんでした(;’∀’)
ただ、診断(感染性腸炎)自体は正解だったのでよかったと思います。
でも、保存的に加療されるんですね(;’∀’)(;’∀’)
すっかり忘れていました。
まぁ、自信がなければ看護師さんと本を音読しながら加療しているのでw実際にはそんなに誤った方向にはいかない気もしますが、
今回の解答では適当に、「広域抗菌薬を検討」、みたいに書いてしまい、
本当にそのままやると、抗菌薬の不適切使用につながりかねませんでしたね(;’∀’)(;’∀’)
日々勉強(^▽^)/
アウトプットありがとうございます。
>ただ、診断(感染性腸炎)自体は正解だったのでよかったと思います。
でも、保存的に加療されるんですね(;’∀’)(;’∀’)
そうですね。感染性であり、細菌の可能性を挙げられれば良いと思います。
>自信がなければ看護師さんと本を音読しながら加療しているのでw
いいですね。知ったかぶりや生半可な知識で治療を進めるより100倍いいですね。
日々勉強(^▽^)/
昨日、先生にヒントを頂いていたので、答える事ができました。
これで、
右側大腸:感染性腸炎 細菌性(カンピロバクター、サルモネラ、O-157)
左側大腸:虚血性腸炎
小腸:感染性腸炎 ウィルス性(ノロ、ロタ、アデノ)
と学ばせてもらい、少し自信がつきました。ありがとうございます!
アウトプットありがとうございます。
そうですね。あとは偽膜性腸炎などもありますが、頻度などを考えるとまずは大雑把にそのように認識していただいてOKです。
病歴・症状からカンピロバクターなどの細菌性腸炎が疑わしいと考えながら画像を見て、矛盾しない所見で安心しました。解説も非常にわかりやすかったです。
この症例で造影が撮った理由は、何か除外すべき疾患があったのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>この症例で造影が撮った理由は、何か除外すべき疾患があったのでしょうか?
施設や依頼医にもよりますが、うちの病院は結構腹痛の場合は、造影CTが撮影されることが多いです。
コントラストが明瞭になる、見落としが少なくなるという理由からだと思います。
が、個人的には単純CTも欲しいところです。
尿管結石・総胆管結石は単純の方が診断しやすいですし、
単純との比較が重要となる疾患もあります。
今回の症例では単純のみでも診断は可能でしたね。
補足症例ありがとうございます。
右半結腸、左半結腸、小腸で症状と照らし合わせて原因をだいたい想定できるのですね。
しっかり覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。大きくその3つに分類して場所がどこなのかを意識してみてください。
下行結腸にも炎症があると判断してしまいました。
診断には差がでませんが、重要なポイントですね。
「3層構造を保った壁肥厚」というキーワードをレポートにかけるように精進いたします。
アウトプットありがとうございます。
下痢がありますので、下行結腸にも粘膜の造影効果はやや目立ちますね。
虫垂が1cm程度腫大して見えて少し気になった印象を持ってしまいました。間違っていたらすみません。ごろ〜先生の見解を伺えませんか。
虫垂は腫れていません。
現在の環境ですと何枚目と記載できないので、旧環境を使いますと、(PCのみ対応しています)
http://medicalimagecafe.com/case/R8dgFbX9.html
の135/280で内部にairを有する虫垂が盲腸から出ていく様子がわかります。
airと虫垂と見え理解できました。見ていたのは小腸でした。ご回答誠にありがとうございます。
よかったです!!
症例1と2大変勉強になりました。痒い所に手が届く症例だと思いました。
ありがとうございます。
現場では微妙な画像もたくさんありますが、CT撮影したはいいけど・・・・「んー、腸炎(?)」
という曖昧な状態が少しでも減れば幸いです。
小腸、大腸壁が全体的に厚く、白く見えたのですがこれは炎症性の変化とはとらないのでしょうか?
おっしゃるように、回腸末端やS状結腸では粘膜の造影効果がやや目立ちますね。
回腸末端は炎症波及
S状結腸は下痢症の影響
などが考えられます。
ただし、やはり炎症所見が最も強いのは右半結腸ですので、ここを中心にどのようなことが起こっているのかを考えましょう。
右半結腸が三層構造を保った壁肥厚が著明なことは理解できました。腫れているのでガス像が少ないのですね。
他の方も書いていますが、下行結腸も少し肥厚があるように思いましたが(35~40/282)、これは有意な所見ではないのですね。
アウトプットありがとうございます。
確かに少し肥厚しているようにも見えますが、腸炎としては短すぎますし、憩室炎を疑う所見もありませんので、下行結腸については有意ではないと考えます。やはり主座は右半結腸ですね。
過去のコメントで「造影CTを撮った理由」について言及されていて、それを読んでふと、単相で充分な場合とはどんな場合だろう?と思いました。例えば、体格の問題や血管の虚脱とかで造影剤急速静注に耐えられるサーフロが使いにくいとか、さらに細かいことを言えば被曝量をできるだけ減らすとか。。。無論、複数相撮れば原因疾患に近い診断ができるとは思うのですが。あと、緊急時とフォローアップ外来とでも変わるとは思いますが。
アウトプットありがとうございます。
今回造影で2相撮影されている理由はわからないのですが(普段からダイナミックCTをオーダーすることに躊躇ない先生もおられますので)、女性の腹痛ですので、Fitz-Hugh-Curtis症候群なども考えたのかもしれません。
この症例は単純CTのみで診断可能です。
もちろん造影があればより明瞭ですが。
「3層構造を保った壁肥厚」に気が付けたことは良かったと思います(確証がなかったので、過去の解説動画を見直して確認しましたが)。
今回の場合では、冠状断層面でも粘膜下層の肥厚というのは見たりするものなのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>「3層構造を保った壁肥厚」に気が付けたことは良かったと思います
素晴らしいです。「3層構造を保った壁肥厚」は消化管のCT画像診断で非常に重要な所見なので、今回の症例や虚血性大腸炎、憩室炎などの症例で目に焼き付けてください。
>今回の場合では、冠状断層面でも粘膜下層の肥厚というのは見たりするものなのでしょうか?
冠状断像では結腸の壁肥厚の分布範囲がわかりやすいですので、そういった意味で確認します。