
【頭部】TIPS症例61
【症例】60歳代 女性
【主訴】ふらつき
【現病歴】1年前に肺小細胞癌と診断され化学療法を受けている。数日前より、上記症状あり。
1ヶ月前MRI
今回MRI
この1ヶ月でどんな変化があり、どう診断しますか?
まず、1ヶ月前のMRIでは副鼻腔炎(上顎洞炎)くらいで特に所見はありません。
それが今回どのように変わったでしょうか?
DWI/ADCを見てみましょう。
側脳室壁に沿ったDWI/ADC=高信号/信号低下を認めています。
脳室の内側壁にくっついているように見えます。
側脳室だけでなく、中脳左背側にも同様の所見を認めています。
こちらも中脳内というよりは辺縁に存在しているように見えます。
さらに脳幹周囲や小脳の脳溝沿いにも同様所見を認めています。
次に、脂肪抑制造影T1WIを見てみましょう。
1ヶ月前の画像と並べるとやはり脳幹周囲や小脳の脳幹沿いなどに異常な造影効果を認めていることがわかります。
またDWIで異常高信号を認めた側脳室沿いや中脳背側にも造影効果を有する腫瘤を認めています。
これは一体何が起きているのでしょうか?
病変が存在する場所はいずれも脳実質内ではなく、髄液が存在するくも膜下腔です。
くも膜下腔に腫瘍が広範に存在する状態、つまり、癌性髄膜炎の状態であるということです。
診断:癌性髄膜炎
※その後、全脳照射、脳浮腫に対する治療などがされました。
関連:
【頭部】TIPS症例61の動画解説
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

安易に「脳転移」でまとめてしまってはだめですね 。。。
髄膜への転移に関しても、硬膜と軟膜(がん性髄膜炎)の違いが大変わかりやすかったです。
リンクの転移性脳腫瘍まとめが網羅的で大変勉強になりました。
出血や密度などから腫瘍の性質が予測でき、原発をある程度予測することもできそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>安易に「脳転移」でまとめてしまってはだめですね 。。。
そうですね。転移ですと皮髄境界に多いですが、髄膜への転移とは別物です。
>出血や密度などから腫瘍の性質が予測でき、原発をある程度予測することもできそうですね。
そうですね。脳転移でもDWIで高信号、ADCで信号低下を来すものはごく一部だというのが盲点かもしれません。
私も研修医のときに知ったときは意外でした。