頭部画像診断 TIPS症例55

【頭部】TIPS症例55

【症例】70歳代 女性
【主訴】右難聴
【現病歴】5ヶ月前より右難聴出現、鼻から水が出るようになった。

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乳突蜂巣ー中耳に液貯留を認めており、その尾側に溶骨性変化を認めています。

気づきにくい所見かもしれませんが、その目で見ると右側頭骨に骨破壊を有する腫瘤を認めています。

骨転移や、側頭骨の場所からグロムス腫瘍などが鑑別に挙がります。

骨転移とすると、これまで見てきた2症例と異なり、造骨性ではなく溶骨性骨転移ということなります。

 

診断:右側頭骨骨腫瘍およびそれに伴う中耳炎疑い

 

とまで、頭部CTでは診断することができます。

 

ここで、問診を進めていくと・・・・

 

 

4年前に他院で左腎腫瘍を指摘されましたが、その後受診しなかったそうです。

 

 

その後の精査で、左腎癌と診断され、経腹的左腎摘除が行われました。

その翌日に撮影された胸腹部CTを提示します。

まず肺野条件から見てみましょう。

多発肺結節を認めており、肺転移を疑う所見です。

次に腹部ですが、術後1日目のCTで腹腔内ガスや出血を認めており、評価が難しいので今回は骨のみ評価します。

ですので骨条件を見てみましょう。

C3、左第5肋骨、Th8・L4、右恥骨に右の側頭骨で認めたような、溶骨性変化を認めており、多発骨転移を疑います。

単なる溶骨性変化ではなく、少し骨から膨張しているように見えます。

腎癌の骨転移はこのように、膨張性変化を伴う溶骨性骨転移を来すことがあるのが特徴です。

また左上腕骨に腫瘍及び骨折線を認めています。

骨転移に伴う病的骨折が疑われます。

この1ヶ月後にFDG-PETが撮影されましたので、それも見てみましょう。

CTで溶骨性変化を認めた、右側頭骨、C3、左第5肋骨、左上腕骨、Th8・L4、右恥骨にFDGの集積を認めています。

  • 骨シンチグラフィ:造骨性骨転移の検出に強い、溶骨性骨転移の検出に弱い。
  • FDGーPET:造骨性骨転移の検出に弱い、溶骨性骨転移の検出に強い

ということを再認識できますね。

 

関連:溶骨性骨転移のCT画像診断(鑑別診断、転移性骨腫瘍)

【頭部】TIPS症例55の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. RCC、HCC、甲状腺がんの一部は骨転移で膨張性変化を伴う腫瘤形成するのでちょっと特徴的ですね。既往歴にがんがなく、転移性腫瘤が先に見つかることもまれにありますが、そういった意味でも今回(過去三例くらいも含めて)の症例提示はありがたく思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >RCC、HCC、甲状腺がんの一部は骨転移で膨張性変化を伴う腫瘤形成するのでちょっと特徴的

      そうですね。これらは特徴的ですね。

      >転移性腫瘤が先に見つかることもまれにあります

      今回も一応転移を見つけてから問診して分かった症例ですね。

  2. 骨転移だと骨条件を見ますが、今回の側頭骨といい軟部条件が見やすいときもありますね。(膨張性変化があるからかもしれませんが)

    1. アウトプットありがとうございます。

      >今回の側頭骨といい軟部条件が見やすいときもありますね。(膨張性変化があるからかもしれませんが)

      そうですね。だとしても乳突蜂巣の場所であり、ちょっと見落としがちな場所ではありますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      溶骨性の膨張性変化は今回のような場所ですと見落としがちですので、注意が必要ですね。
      何の癌の既往があるのかも重要ですね。