頭部画像診断 TIPS症例9

【頭部】TIPS症例9

【症例】40歳代 男性

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小脳の背側にある低吸収域(LDA)は何?

小脳背側正中〜左側に嚢胞状の形態の低吸収域(LDA)を認めています。

嚢胞の後方の後頭骨内板には侵食を疑う所見もあります。
(※この所見が、くも膜嚢胞と巨大大槽を鑑別できるわけではありませんが。)

サイズは小さく、小脳半球を圧排している!という所見ははっきりしません。

冠状断像でも嚢胞状の形態をしていることが分かります。

横断像や冠状断像でこの嚢胞らしき構造を追うと、くも膜下腔との境界ははっきりせず、連続性がない!とは言えないですが、連続性はなさそうにも見えます(連続性があり、これが嚢胞ではなく巨大大槽とすればやや不自然な印象)。

また、今回は片側性であり、よりくも膜嚢胞が疑われます。

 

診断:くも膜嚢胞

 

※MRIは撮影がありません。またCTで矢状断像がないのも残念ですね。
※厳密にくも膜嚢胞と巨大大槽を区別するには脳槽造影などを撮影することになりますが、そこまでやった経験はありません。
※念のため、知り合いの放射線科診断専門医5名にこの画像を見てもらいましたが、くも膜嚢胞でよいだろうということで一致しました。

関連:巨大脳槽とくも膜嚢胞の鑑別、画像診断は?

【頭部】TIPS症例9の動画解説

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. くも膜嚢胞は今回の部位や側頭葉の底部前側に多い印象です。側頭葉の底部前側でも大抵左側にある気がします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      おっしゃるとおりですね。左に多いのでしょうか。そう言われるとそんな気もしますがどうでしょうか。

  2. 前回のと合わせて理解がすすみました。
    MRIを見てみたいので自施設で探してみようと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      是非探してみてください。巨大大槽と鑑別がしにくいものもありますが。
      くも膜のう胞自体は割と頻度が高いです。

  3. くも膜嚢胞も発生する場所や大きさによっては、頭痛や脳の圧迫による症状、けいれんを呈する場合があるということで気をつけたいと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。正常変異だから大丈夫!無視でいいと思っていると足をすくわれるかもしれませんね。

  4. くも膜嚢胞の壁が薄すぎて普通は描写できないのですね。それで嚢胞とくも膜下腔との境がわからないのか。動画解説を聞いて納得。わかりやすかったです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。画像では通常壁を指摘できません。
      そのため、割と頻度が高い正常変異ですが気づいていないことも多いと思います。