
【頭部】TIPS症例60
【症例】60歳代 女性
【主訴】意識障害、嘔気、全身倦怠感
【現病歴】糖尿病で当院外来でインスリン治療中であったが、一週間前より、食欲不振、嘔気を認めインスリン注射を自己中断していた。本日症状が増悪してきたため来院。
【身体所見】BP 146/90mmHg、BT 36.2℃、HR 98、SpO2 98%(RA)、JCS1(会話は成立するがちぐはぐ)、脳神経症状なし、運動・感覚障害なし、左指鼻試験 やや拙劣
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CT
MRI
異常所見と診断は?
まずCTから見ていきましょう。
両側の側脳室の拡大を認めています。
側脳室下角も著明に拡張しており、水頭症が示唆されます。
小脳正中部に嚢胞性病変を認めています。
この腫瘍が、第4脳室を圧排して、閉塞機転となり、非交通性(閉塞性)の水頭症を来していることがわかります。
よく見ると、嚢胞性病変には壁在結節を伴っているように見えます。
次にMRIを見てみましょう。
側脳室は著明に拡張し、周囲白質に浮腫性変化を認めています。
また、やはり小脳正中部に嚢胞性病変があり、第4脳室を圧排していることがわかります。
嚢胞性病変の周囲には浮腫性変化を認めています。
造影前のT1WIと造影T1WIを比較すると、壁在結節は造影効果を認めていることがわかります。
嚢胞+壁在結節の様子は矢状断像でよくわかります。
さて、このように小脳半球に嚢胞+壁在結節の形態の腫瘍を見た際にまず考えるべきは、小脳血管芽腫です。
診断:小脳血管芽腫による非交通性水頭症疑い
※脳浮腫に対して、リンデロン、グリセオールの点滴が施行されました。入院7日目に開頭腫瘍摘出術を施行し、術後の経過は良好で、特に合併症もなく経過しました。腫瘍組織は病理検査の結果、やはり血管芽腫でした。
関連:
【頭部】TIPS症例60の動画解説
【補足】髄液の流れと水頭症
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

小脳血管芽腫というのを知らなかったので勉強になりました。画像から状況はある程度読み取れても『なんだろう?』となりました。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
小脳血管芽腫は、成人の後頭蓋窩腫瘍では、割とよく見かける腫瘍ですので、是非この機会に覚えておいてください。
私も小脳血管芽腫を知りませんでしたが、よくあるのですね。
物理的な圧排により症状が出るとは思いますが、それ自体の悪性度は高くないことが画像から読める分かるだけでも大きなことですね。
アウトプットありがとうございます。
>それ自体の悪性度は高くないことが画像から読める分かるだけでも大きなことですね。
そうなのです。壁在結節があるので何となく悪性度が高いのかと思ったらGrade1なのがちょっと意外かもしれませんね。
小脳血管芽腫は典型的なものであればわかりやすいのですね。grade1でも強い症状がでるのは大変ですね。
アウトプットありがとうございます。
典型的な壁在結節を有する嚢胞のパターンですとわかりやすいですね。