神経血管圧迫症候群(neurovascular compression)
血管による脳神経の圧迫(神経血管圧迫症候群)は3種類。
・三叉神経(Ⅴ)→三叉神経痛
・顔面神経(Ⅶ)→顔面痙攣 ★★今回はこれ!
・舌咽神経(Ⅸ)→舌咽神経痛
片側顔面痙攣とは
■疫学 | ・顔面神経領域の間欠的不随意運動であり、多くが片側性。 ・やや女性に多い。多くは65歳以上、若年者では稀。 |
■原因 | ・特発性のものは顔面神経が脳幹から出る部分であるroot exit zoneでの動脈による圧迫が原因と言われる。 ・責任血管の頻度は、前下小脳動脈、後下小脳動脈、椎骨動脈の順。 |
■症状 | ・無痛性の眼輪筋の痙攣で、痙攣は心理的負荷により増強することも多い。睡眠中にも起こる。 ・数年で進行し、口角部まで進行する。 |
■診断 | ・臨床症状に基づいて行われる。画像所見のみでは確定診断はできない。 |
■治療 | ・薬物治療は通常無効。 ・神経ブロックとしてボツリヌス毒素の局所注入が行われることがあるが、効果の持続は3〜4ヶ月。 ・脳神経減圧術が施行されることがあり、片側顔面痙攣の完全寛解率は81〜91%であり再発率は5-9%である。※微小血管減圧法(Microvascular Decompression Surgery:MVD) |
片側顔面痙攣の画像所見
画像診断 | |
MRI | ・椎骨動脈および脳底動脈の拡張及び、延長蛇行による、症状の見られる側と同側の顔面神経のroot exit zone(REZ:脳幹から出てすぐのところ)での圧迫。
・一般にREZ付近の脳幹に血管が食い込んで脳幹を変形させるような強い圧迫で生じる。 ・神経と血管を同時に見ることができるMRAの元画像や、MR脳槽撮影(FIESTAやCISS)が有用。 ※REZへの血管圧迫で顔面神経の「麻痺」は生じない。 |
動画で学ぶ顔面神経の圧迫
鑑別
・動脈以外の原因によるroot exit zoneの圧迫
・脳腫瘍
・脳動脈瘤:VA-PICAあるいはVA-AICA分岐部の瘤。
・静脈
・くも膜癒着
・多発性硬化症