化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis)とは?

  • 化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis),感染性脊椎炎=脊椎椎体炎(osteomyelitis)+椎間板炎(discitis)、でありほとんどの症例では、両者が同時に起こる。
  • 全骨髄炎の2−4%を占める。
  • 男女比は2:1。
  • 幼児(1-5歳)と高齢者(60-70歳)に多い。
  • 化膿性脊椎炎と結核性脊椎炎では治療法が異なるため、早期に鑑別する必要がある。
  • 原因菌は黄色ブドウ球菌(中でもMRSAは臨床上特に問題となる。)が最多。他、連鎖球菌や、肺炎球菌、サルモネラ菌、グラム陰性桿菌(大腸菌、緑膿菌など)も増えている。しかし半数以上で原因菌が検出できない。
  • 好発部位は腰椎>胸椎>頸椎の順。
  • 原因として、脊椎外の感染巣からの敗血症によることが多い。
  • 感染経路は、通常の経動脈性Batsonの傍脊椎静脈叢を介する経静脈性経路、隣接感染巣からの波及、外傷や穿刺手技からの続発などが考えられている。
  • 1つの椎間板に隣接した上下2椎体に病変が限局することが多い。結核性脊椎炎は3椎体以上の多椎体に信号変化が認められることが多い。
  • 侵襲性が強く、椎間板への浸潤は必発であるが、結核性脊椎炎ではよりおとなしいため、椎間板に浸潤するより前に前縦靭帯下や椎体後部要素へ進展し、椎間板への浸潤が認められる前に診断されることもある。
  • 症状としては、背部痛が多く、発熱、脊髄症、CRP/WBC上昇を来す。
  • 診断までは平均7週と報告されている。

 

参考)脊椎の血流について

  • 脊椎に分布する動脈の分布は年齢により異なる。
  • 15歳以下では、終動脈は椎体終板を穿通し、椎間腔へ進入する。そのため、動脈からの血行感染では最初に椎間板炎(discitis)を生じる。
  • 成人では椎間板の血行は乏しく、椎体の軟骨下に栄養動脈のネットワークが形成されており、通常、椎体前方の軟骨下から炎症が波及していく。
感染の順序(血行性感染) 

pyogenic spondylitis

参考)エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI

化膿性脊椎炎の画像所見(総論)

  • MRIは非常に有用であり、感度96%、特異度92%、正診率94%とされる。
  • 脂肪抑制T2WIもしくはSTIRが骨髄の浮腫と硬膜外の病変に最も良く、造影後も脂肪抑制が必要である。
  • 症状の変化に対応する画像所見を認めない。臨床経過の改善にも関わらず、異常な骨の造影効果は永く残存する。肉芽腫や線維化を反映していると考えられている。

化膿性脊椎炎のMRI所見

①椎体の信号変化

【原則】

  • 急性期には、浮腫と血流増加を反映して、椎間板および終板近傍の椎体はT1WIで低信号、T2WIやSTIRで高信号となる。
  • T1WIにおける椎体の低信号域、終板の不明瞭化、皮質の断裂は典型的所見である。

【variant】

  • 椎体がT2で等〜低信号を示すことも珍しくなく、椎体の硬化所見と、骨髄の浮腫の割合によって決まる。
  • 若年者の赤色髄ではT1で正常な椎体の信号が比較的低いため、骨髄の浮腫がマスクされてしまうことがある。

pyogenic spondylitis7

症例 50歳代女性

pyogenic spondylitispyogenic spondylitis1骨髄や椎間板の炎症、浮腫がT1強調像で低信号、STIRで高信号に描出されており、病変は2椎体であることがわかる典型的な化膿性椎間板炎。

症例 60歳代女性

pyogenic spondylitis pyogenic spondylitis1
pyogenic spondylitis2pyogenic spondylitis3

▶まとめ

spondylitis

②椎間腔の変化

  • 早期に椎間板の信号上昇あり。進行すると椎間腔の狭小化が顕著となり、intranuclear cleft(髄核内裂)の消失により、椎間腔は全体がT2高信号域に置換される。
  • 一方、結核性脊椎炎では、Mycobacteriumが蛋白分解酵素を持たないために、椎間腔が比較的長期にわたり保たれるとされる。しかし、椎間腔の狭小化が見られたとの報告もある。これは、Tbの場合、罹患してからMRIを撮影するまでの期間が長いことも一因だと思われる。

③傍椎体軟部組織の変化

  • MRIでは傍椎体軟部組織の変化の描出にも優れる
  • 傍椎体や硬膜外の腫瘤や蜂窩織炎はT1WIで等信号、T2WIで高信号、Gdにて造影される。
  • 腫瘤には全体が造影される炎症性腫瘤と、辺縁がリング状に造影される膿瘍がある。
  • 結核性脊椎炎よりも、傍椎体の異常信号の境界は不明瞭で、膿瘍の壁は厚く不整である。造影効果も強く均一である。
  • また、後方要素(椎弓、椎弓根、椎間関節周囲、棘突起周囲など)での増強効果所見の頻度が高い。靭帯下炎症性腫瘤の進展は3椎体未満であることが多い。また結核性で見られるskip lesionは化膿性では通常見られない。いずれにしろ、化膿性脊椎炎はTbよりも侵襲性が強いというイメージを持つべし。
椎体周囲への炎症波及、膿瘍の波及をイラストで表すと次のようになります。

pyogenic spondylitis8

 症例 50歳代 女性

pyogenic spondylitis4

造影MRIにおける検査で、椎体の周囲に異常な造影効果を認めており、炎症の周囲への波及を疑う所見です。

椎弓の後方にも異常造影効果があり、後方へも炎症波及あり。


pyogenic spondylitis5

この症例を動画でチェックする。

症例 50歳代女性 化膿性椎間板炎

造影CT

pyogenic-spondylitis

こちらはCTでの所見です。

L4/5の椎間板炎から、両側の大腰筋内に波及して上下方向に膿瘍が形成されている様子がわかります。

また椎体の前方にも膿瘍形成を認めています。

 

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