頭蓋骨は1つの骨ではなく、いくつかの骨が癒合してできています。
その癒合した線のことを縫合線といいます。
この縫合線に冠状縫合(かんじょうほうごう)と呼ばれる縫合線があります。
今回は、この冠状縫合について(読み方は「かんじょうほうごう」・英語表記で「Coronal suture」)について
- 冠状縫合とはどこにあるのか?その場所
- そのほかの縫合
- 冠状縫合に起こる問題
など、画像を交えつつ解説したいと思います。
冠状縫合とは?場所は?
冠状縫合は、頭蓋骨を横に走る縫合線で、下のように前頭骨と左右の頭頂骨の間にある縫合のことをいいます。
冠(ティアラ)の位置にあるため、この名前がつけられました。
この画像を見ると、冠の位置ってなんか納得ですよね。
頭蓋骨にある縫合は?
冠状縫合の他に、頭蓋冠を作る縫合は
- 矢状縫合・・・左右頭頂骨間
- ラムダ縫合・・・後頭骨と左右頭頂骨の間
- 鱗状縫合・・・側頭骨輪部と頭頂骨の間
- プテリオン・・・前頭骨・側頭骨・蝶形骨・頭頂骨がなすこめかみのH状縫合部
などがあり、この縫合で骨が連結されています。
後ろから見ると、ラムダ縫合や矢状縫合も確認できますよ。
頭蓋骨の縫合線を動画でも確認ください。
ちなみに、冠状縫合と矢状縫合には交点があり、それをブレグマ(英語表記で「bregma」)といいます。
しかし、この冠状縫合は出生時にはないんです。
どうして赤ちゃんにはないのかというと・・・
出生児に産道を通る際にもっとも大きな頭が硬いと、出産も大変困難なことになりますよね?
そのため、頭の骨がまだ固まっておらず、隙間ができているんです。
この最初はあるへこみが、脳の発達にも重要な役割を果たしていおり、成長とともに閉じてきて、1.5〜2歳までには閉じます。
冠状縫合に起こる問題は?
ところがこの冠状縫合が早期に癒合してしまうことがあり、短頭蓋(たんずがい)と呼ばれます。
これは冠状縫合のみが早期癒合してしまうもので、単一縫合癒合症の一つに分類されます。
単一縫合癒合症には、
- 舟状頭蓋:矢状縫合が早期に癒合する
- 短頭蓋:冠状縫合が早期に癒合する
- 三角頭蓋:前頭縫合が早期に癒合する
という3つの分類3)があります。
またこれらの頭蓋縫合早期癒合症をきたす症候群が知られており、
- Apert(アペール)症候群
- Antley-Bixler(アントレー・ビクスラー)症候群
- Crouzon(クルーゾン)症候群
- Pfeiffer(ファイファー)症候群
などが2015年の時点で難病に指定されています。
逆にこの頭蓋縫合が通常よりも開大することがあります。
この原因としては、
- 頭蓋内圧亢進症を来す疾患(水頭症、占拠性病変など)
- 甲状腺機能低下症の回復期における急速な脳容積の増大に伴うもの
- 神経芽腫・白血病・リンパ腫による頭蓋骨や髄膜への転移や浸潤によるもの
- くる病、腎性骨異栄養症などの骨代謝異常
などがあります4)。
参考文献:
1)第9版 イラスト解剖学P176
2)解剖学講義 改定2版P495
3)病気がみえる 脳神経 P410
4)単純X線写真読影のためのキーワード201 P12
最後に
ポイントをまとめます。
- 冠状縫合は前頭骨と左右の頭頂骨の間にある縫合のこと
- 冠(ティアラ)の位置にある
- 冠状縫合は出生時にはない
- 冠状縫合が早期に癒合してしまったり、開大している場合は病的なことがある
頭蓋骨にはいくつも縫合線があり、それは正常なことであることがわかりましたね。
参考になれば幸いです。