炎症マーカーとしては最も有名なのはCRPですが、そのCRPよりも細菌感染症に対しての有用性が高いと言われているのがプロカルシトニン(PCT)です。
ただし、CRPと同様にプロカルシトニンの値が上昇している点だけを見て判断することはできず、他のデータや症状などと合わせて総合的に考えていく必要があります。
そんな、プロカルシトニンについて、
- プロカルシトニンの感度特異度
- プロカルシトニンの基準値(正常値)・異常値・カットオフ値
- プロカルシトニンの問題点
などについてまとめました。
先に結論:プロカルシトニン(PCT)の基準値と見方
- 健常人では血中にほとんど検出されません。基準値は試薬・施設で異なります。抗菌薬を使うかどうかの目安として、軽症〜中等症では0.25ng/mL、重症では0.5ng/mLを区切りとする専門家の提言があります
- 細菌感染で上がり、ウイルス感染では上がりにくいのが特徴。CRPより早く上がり、細菌感染と非感染性炎症の区別では感度88%・特異度81%とCRP(感度75%・特異度67%)より優れますが、値だけで決めることはできません
- 細菌感染がなくても上がる偽陽性(重症外傷・手術後・熱傷・ARDS・甲状腺髄様癌など)と、上がらない偽陰性(超急性期・軽症・局所の感染)があります
- 高値はどのくらい?:敗血症が疑われたICU患者の入室時の中央値は、SIRS 0.6、敗血症 3.5、重症敗血症 6.2、敗血症性ショック 21.3ng/mLと、重くなるほど高い傾向でした(Harbarth 2001)
| PCT値(ng/mL) | 抗菌薬判断の目安(専門家の提言) |
|---|---|
| 0.25 | 軽症〜中等症の患者での区切り |
| 0.5 | 重症の患者での区切り |
※値だけで抗菌薬の開始・中止を決めるのではなく、症状や重症度とあわせて主治医が判断します。重症で細菌感染が疑われる場合は、PCTの結果を待って治療を遅らせないことが大切です。
まずプロカルシトニン(PCT:pro-calcitonin)とは?
プロカルシトニンはカルシトニンの前駆タンパクです。

プロカルシトニンは、甲状腺(C細胞)で産生されるカルシトニンの前駆タンパクであり、健常人では血中にほとんど認めません。
ところが、細菌感染や敗血症、エンドトキシンや炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6など)の刺激で、甲状腺以外のさまざまな臓器・組織からも産生されるようになり、プロカルシトニン値は上昇します。細菌のほか、真菌や一部の寄生虫の感染でも産生されます4)。

一方でウイルス感染などでは上昇しにくいとされています。
感染症の場合、細菌感染なのかウイルス感染なのかの鑑別にこのプロカルシトニンは有用なのです。
つまり、感染がある場合、
- プロカルシトニンが高ければ、細菌感染
- プロカルシトニンが低ければ、細菌以外の感染
と考える目安になります。
プロカルシトニンの感度は?特異度は?
入院患者を対象としたメタ解析では、細菌感染症か非感染性の炎症かの区別に対する
- 感度は88%、特異度は81%でした2)。
※ちなみにCRPは感度75%、特異度67%でした2)。
プロカルシトニンはCRPよりも感度・特異度ともに高いことがわかりますが、プロカルシトニンの値だけを見て、細菌感染の有無を決定することはできないということです。重症患者を対象としたメタ解析(30研究・3244例)でも、敗血症の診断能は感度77%・特異度79%(AUC 0.85)にとどまり、病歴・身体所見・微生物学的検査とあわせて慎重に解釈すべきとされています3)。
プロカルシトニンの正常値は?基準値は?
健常人では、プロカルシトニンは血中にほとんど検出されません5)。基準値(正常値)は測定試薬や施設によって異なるので、検査を受けた施設の基準値を確認してください。
(単位はng/ml(ナノグラムパーミリリットル)です。)
抗菌薬を使うかどうかの判断には、軽症〜中等症の患者では0.25ng/mL、重症の患者では0.5ng/mLを区切りとする専門家の提言があります6)。(論文ではμg/Lと書かれますが、ng/mLと同じ値です。)
下気道感染症の患者をプロカルシトニンの値にもとづいて治療した試験では、通常の治療と比べて副作用などの悪い結果は増えずに、抗菌薬を使う期間が短くなりました7)。
ただし、値だけで抗菌薬の開始・中止を決めるのではなく、症状や重症度とあわせて判断し、重症の場合はプロカルシトニンの結果を待って治療を遅らせないことが大切とされています8)。
プロカルシトニンで保険が認められる病名や点数は改定されることがあるので、最新の診療報酬を確認してください。
カットオフ値を変えると感度・特異度はどう変わる?(菌血症の場合)
血液培養で菌が見つかる菌血症をプロカルシトニンで見分けられるかを調べたメタ解析では、カットオフ値によって次のように結果が変わります。
| カットオフ値 | 感度 | 特異度 | 報告 |
|---|---|---|---|
| 0.1ng/mL | 93% | 36% | 市中の菌血症、40研究(Kaal 2026)12) |
| 0.4〜0.5ng/mL | 76% | 70% | 救急外来の菌血症、17研究(Jones 2007)13) |
カットオフ値を低くすると見逃しは減りますが(感度↑)、菌血症でない人も多く「陽性」になります(特異度↓)。低い値は「菌血症の可能性を下げる」目的で使われ、臨床所見とあわせて判断します12)。
プロカルシトニンの高値とはどのくらい?10以上は?
敗血症が疑われてICUに入室した78人の検討では、入室時のプロカルシトニンの中央値(範囲)は次のとおりで、重症になるほど高い値でした14)。
| 最終診断 | PCT中央値(範囲) ng/mL |
|---|---|
| SIRS(感染なし) | 0.6(0〜5.3) |
| 敗血症 | 3.5(0.4〜6.7) |
| 重症敗血症 | 6.2(2.2〜85) |
| 敗血症性ショック | 21.3(1.2〜654) |
この検討では、1.1ng/mLを区切りにすると、感染のないSIRSと敗血症関連の病態を感度97%・特異度78%で区別できました14)。
つまり、10ng/mLを超えるような値は、敗血症性ショックなど重い細菌感染でみられることが多い値です。ただし、範囲が広く重なりもあるうえ、重症外傷・手術後・熱傷などの感染症以外の原因(下記の偽陽性)でも大きく上がることがあるため、値だけで重症度や原因を決めることはできません。
プロカルシトニンとCRPの違い
| プロカルシトニン(PCT) | CRP | |
|---|---|---|
| 主に上がるとき | 細菌感染・敗血症。ウイルス感染では上がりにくい | 感染症(細菌・ウイルス)、膠原病、外傷・手術など炎症全般 |
| 上がる速さ | エンドトキシン注射の4時間後に検出、6時間後にピーク5) | PCTより遅れて上がる |
| 細菌感染と非感染性炎症の区別 | 感度88%・特異度81%2) | 感度75%・特異度67%2) |
| 単位 | ng/mL | mg/dL(施設によりmg/L) |
どちらも単独で診断を決める検査ではなく、症状・診察・ほかの検査とあわせて判断します。
細菌感染の時にプロカルシトニンが上昇するまでの時間は?
では、細菌感染をしてからプロカルシトニンが上昇するのにかかる時間はどれくらいでしょうか?
健康な人にエンドトキシン(細菌の毒素)を注射した実験では、プロカルシトニンは4時間後に検出されるようになり、6時間後にピークとなって24時間後まで高い値が続きました5)。
感染が始まってから4〜6時間で上昇をとらえられるとされ4)、CRPと比較して早いのが特徴です。
よくCRPは遅れて上ってくると言われますが、それよりはPCTは早いということです。
また、敗血症性ショックの患者では、ICUの重症度スコアであるAPACHE IIとプロカルシトニン(PCT)の値が相関していました。ただし最初の値だけでは予後はあまり予測できず、48時間以内に値が下がった人のほうが生存しやすかったと報告されています9)。
さらに、市中肺炎では、重症度評価であるPSIの高いクラスの人や、合併症を起こした人・亡くなった人でプロカルシトニン(PCT)が高かったと報告されています10)。
プロカルシトニンの問題点は?

プロカルシトニンの問題点は以下の通りです。
- 検査の結果が出るのに時間がかかることがある。
- CRPに比べて費用がかかる検査である。
- 偽陽性・偽陰性がある。
プロカルシトニン検査の結果が出るのに時間がかかることがある。
細菌感染があることがわかればすぐに抗生剤の投与が必要となります。
それに大きな役割を果たすプロカルシトニンの検査の結果が出るのに時間がかかる場合があります。
院内で検査ができない施設では外注に出す必要があり、その場合は検査結果が出るまでに時間がかかることがあります。
そのため、院内で測定できる機器や迅速検査キットも使われていますが、測定法によっては低い値のわずかな上昇をとらえにくいものもあるので1)、どの方法で測ったかも確認が必要です。
プロカルシトニンの検査の値段は?保険点数は?保険病名は?
プロカルシトニンの検査で保険が認められる病名や保険点数は、診療報酬の改定で変わることがあります。具体的な条件や点数は最新の診療報酬を確認してください。
プロカルシトニンが偽陽性で上昇するのはどんな時?どんな病名?
プロカルシトニン(PCT)が実際は陽性でないのに、陽性と出てしまういわゆる偽陽性となるのは、以下の場合が報告されています。
- 生後間もない新生児
- 急性呼吸促迫症候群
- 重症外傷
- 外科的侵襲
- 成人型スティル病
- γグロブリン投与
- 化学性肺炎
- 重度熱傷・熱中症
- ホルモン産生腫瘍(甲状腺髄様癌、肺小細胞癌、カルチノイドなど)
- サイトカイン・ストーム状態(TNF-α投与、家族性地中海熱)
これらの場合にプロカルシトニン(PCT)が、細菌感染ではないのに高値となることがあります1)。なお、カンジダなどの全身性真菌感染症や熱帯熱マラリアでも上昇することがあり4)、細菌感染とは限らない点に注意が必要です。
プロカルシトニンが偽陰性となるのはどんな時?
逆に細菌感染があるのに、上昇しない偽陰性の場合は以下の通りです。
- 超急性期の感染
- 軽症の感染症
- 局所的な感染症
- 亜急性心内膜炎
菌血症のある発熱患者でも、プロカルシトニンが上がっていないことがあると報告されています1)。
参考文献)
- ICU実践ハンドブック―病態ごとの治療・管理の進め方 P429-431
- 診断に直結する検査の選び方、活かし方 P241-245
プロカルシトニンでよくある疑問(Q&A)
Q. プロカルシトニンとは何ですか?
A. 甲状腺で作られるカルシトニンのもとになるタンパクです。健康な人の血液にはほとんどありませんが、細菌感染や敗血症では全身の臓器で作られて血中で上がるため、細菌感染の目安として測られます。
Q. プロカルシトニンが高値になる原因は感染症だけですか?
A. いいえ。重症外傷、手術のあと、重い熱傷・熱中症、ARDS、甲状腺髄様癌などのホルモン産生腫瘍、新生児などでも上がることがあります(上記の偽陽性)。真菌感染や熱帯熱マラリアでも上がることがあります4)。
Q. プロカルシトニンが低ければ細菌感染は否定できますか?
A. 否定はできません。感染のごく早い時期、軽い感染、局所の感染では上がらないことがあり、菌血症でも上がっていない例があります1)。検査結果が気になる場合や発熱が続く場合は、主治医や医療機関に相談してください。
最後に
細菌感染の判断に役立つプロカルシトニン(PCT)についてまとめました。
有用ではあるものの、限度があり、またいくつか問題点もあることがわかりました。
一つの検査に頼るのではなく、あくまで補助的に、そして総合的に細菌感染の有無を考える必要があるということです。
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