感染症があるかどうかを判断する血液検査の一つに、
- 白血球数(WBC)
- CRP(読み方はそのままシーアールピー)
があります。
特にCRPは炎症マーカーの代表として知られており、細菌感染症を始めとする炎症性疾患を中心に高値となり、採血項目の中でも日常的に検査されるものです。
ただし、「CRPが高値=感染」というわけではありません。
また、「CRPが低値=感染ではない」というわけでもありません。
これらはあくまで参考であり、この2つの数値のみを見て感染の有無を判断するのは良くないと言われます。
特に、CRPだけを見ていると全体像が見えなくなります。
つまり、他のデータや体の状態などと総合的に判断する必要があります。
今回はそんなCRPについてです。
- CRPが高いときにはどのような原因が考えられるのか?
- どのような病気の可能性があるのか?
を中心にCRPについて徹底的にまとめました。
ではいきます!
CRPが高い原因は?
CRPが数値が高値になる原因は、大きく3つに分けられます。
まず、CRP値が上昇するのは、
- 感染があるとき
- 炎症があるとき
- 組織が障害されたとき
です。
感染があるとき〜病名は?〜
最も代表的なのが細菌感染症であり、その程度を反映します。
一方で、同じ感染でも、ウイルスや真菌への感染の場合は、軽度上昇にとどまります。
もしこれらの感染で高度上昇を認めた場合は細菌感染の合併を考えます。
逆に言えば、ウイルスや真菌では必ずしもCRPは陰性(基準値以下)というわけではなく、軽度上昇することがあるということも覚えておきましょう。
では細菌感染する病気といえばどのようなものがあるでしょうか?
上から見ていくと代表的な病名としては
- 髄膜炎
- 脳炎
- 咽頭炎、扁桃腺炎
- 副鼻腔炎
- 肺炎
- 胸膜炎
- 胆嚢炎
- 胆管炎
- 膵炎
- 腎盂腎炎
- 膀胱炎
- 腸炎
- 憩室炎
- 虫垂炎
- 前立腺炎
- 卵管炎
- 蜂窩織炎
- 膿瘍
などなどです。
これでは、CRPが高くても原因はすぐにはわかりません。
あくまで他の検査結果や症状などと総合的に診断することが重要であることがわかりますね。
ちなみに私も以前、扁桃腺炎でCRPが13まで上昇しました。
よくある病気でもここまで上がることもあるんです。
ロセフィン®という抗生剤の点滴を受けにしばらく通いましたが・・・
炎症があるとき〜病名は?〜
CRPといえば感染と考えがちですが、感染以外の炎症がある時にもこの値は増加します。
代表は
- 膠原病
です。膠原病とは自己免疫疾患という病気であり、中でも
- 関節リウマチ(RA)
- 若年性慢性関節炎
- 強直性関節炎
- 乾癬性関節炎
- 血管炎
- リウマチ性多発筋痛症
- 反応性関節炎(ライター症候群)
- クローン病
- 家族性地中海熱
で上昇します。(J Clin Invest,111:1805-1812,2003)
同じ膠原病であっても、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)、強皮症(SSc)、シェーグレン症候群では、このCRPは陰性か軽度上昇にとどまることが多いと言われます。
大事なのはこれら関節リウマチや血管炎が背景にある人の場合は、感染がなくてもCRPが上昇することがあるということです。
血圧や呼吸状態、意識状態は良いのに、いつまでもCRPが高い場合、これらの基礎疾患があり、もともとのCRPが高いケースがあるということで注意が必要です。
原因不明でCRPが高いという場合、これらの病気が隠れていることがあるということです。
クローン病では上がることがありますが、同じ慢性腸疾患である潰瘍性大腸炎では陰性のことが多いと言われます。
感染の原因(focus)が見つからない時、これらの膠原病が隠れている可能性を覚えておきましょう。
組織が障害されたとき〜病名は?〜
組織が破壊された場合、壊死に陥った場合もこのCRPが上昇することがあります。
具体的には、
- 心筋梗塞
- 悪性腫瘍(癌、リンパ腫、肉腫)
- 腫瘍塞栓
- 急性膵炎
- 手術や分娩
- 外傷、骨折後
- 熱症
などが挙げられます。
壊死に陥った状態のことを梗塞と言います。
心筋梗塞の他には、肺梗塞、脳梗塞などが有名ですが、心筋梗塞や肺梗塞ではこのCRPは上昇しますが、脳梗塞の場合は、この上昇が軽度です。
また、いわゆる「がん(癌)」である悪性腫瘍でもこのCRP値が高くなります。
特に悪性リンパ腫で広範に転移が見られる場合に上昇すると言われています。
一方で白血病、GVHDでは軽度上昇〜陰性のことが多いです。
そもそも血液検査のCRPとは?基準値(正常値)は?
血液検査でされるCRPとは、 C反応性蛋白と言われ以下の蛋白です。
- CRPは、肺炎双球菌のC多糖体と反応する蛋白のこと。
肝臓で作っているタンパク質の一つです。
英語では、C-reactive proteinでこの頭文字をとって、CRPとなります。
肺炎球菌に感染した患者から初めて発見されたタンパク質です。
上で説明したように炎症性疾患や壊死がある場合などに上昇します。
CRPの基準値は?
定量法で、
- 0.3mg/dl以下
が正常値です。
小児のCRPの正常値は?特徴は?
このCRPは性別や年齢による基準値、正常値の違いはありません。
そのため、小児であっても0.3mg/dl以下が正常です。
ただし、例外として、出生直後から数日の間は急激に上昇し、日齢2-3日でピークとなります。
CRPと赤沈との関係は?
他の炎症マーカーと比較して、CRPは変動幅が大きく、上昇するときは1日以内に数倍に増大します。
炎症マーカーの一つである赤沈との関係は、
- 増加はCRPが先行
- 回復もCRPが先行
するという特徴があります。
CRPが高ければ細菌感染なのか?
CRPが高くても感染以外の炎症などの可能性があるのはすでに述べた通りです。
では感染があるとわかっている場合、細菌なのか細菌以外なのかの鑑別にCRPはどの程度使えるのでしょうか?
- 感度81%、特異度67% (Clin Infect Dis(2004)vol.39(2)pp.206-17)
と報告されています。
ここで報告されているカットオフ値つまり、細菌感染か非細菌感染かを分ける値は0.6~10mg/dlと様々でした。
このデータからわかることは、CRPだけを見ていては不十分であり、2-3割は見落としてしまうということです。
また、
- CRPが上昇するのは感染後24時間以上経過してから(Pediatr Infect Dis J,16(8):735-746,1997)
とも報告されており、数字のみを見るのではなく採血をしたタイミングも重要となります。
あくまで補助的に使うということです。
とくに予想外にCRPが高かった時などは、何か隠れている可能性があると考えることができます。
CRPが高ければ重症なのか?
では次にCRPが高ければ、それだけ重症なのでしょうか?
肺炎の場合CRPは?
感染症の代表とも言える肺炎では、
- CRPの値では重症度の判定はできない。
と報告されています。(事例で学ぶ感染症診断ストラテジー,P10-17)
さらには、日本呼吸器学会による「成人市中肺炎診療ガイドライン」の市中肺炎の重症度分類であるA-DROPシステムにはCRPの項目はありません。
つまり、CRPの値で肺炎の重症度を判断できないということを意味します。
急性膵炎の場合CRPは?
ただし、急性膵炎では重症度判定基準の項目の一つに
- CRP≧15mg/dl
があり、日本の急性膵炎の診療ガイドラインにも推奨度Aとして採用されています。
ですので、急性膵炎の場合は重症度の判定に用いるということができます。
このようにCRPは必ずしも感染症の重症度を反映するとは言えないですが、急性膵炎については相関することがわかっています。
また感染症ではありませんが、関節リウマチにおけるCRPについては、活動性や治療効果判定の良い指標であると言われており、
- CRP高値の持続は関節破壊の危険因子となる。(Semin Arthritis Rheum,24(2):91-104,1994)
とも報告されています。
CRPが下がったのに熱が下がらないのはどんな時?
もともと高かったCRPが下がったので、採血データ上は良くなったけども熱が下がらないということがあります、その場合には、
- 薬剤熱
- 深部静脈血栓症
などが原因で熱が下がらないことがあります。
また、CRPが下がっているときに、肝機能や腎機能が落ちている場合は、一概に感染症が良くなっているということはできません。
というのは、CRPというのは肝臓で作っているタンパク質であり、臓器障害が起こっている結果、CRPが下がっている可能性があるからです。
つまりこの状態はCRPを上げることもできないくらい重症だということです。
最後に
CRPは代表的な炎症マーカーであり、炎症や壊死を反映します。
ただし、CRPが高値があるからと言って、必ず感染があると早とちりしてはいけません。
症状や他のデータ(細菌培養、各種血清反応、タンパク分画、免疫グロブリン、自己抗体、腫瘍マーカーなど)などを参考にしながら、その原因を突き止めていく必要があります。
ちなみに他の炎症マーカーには、以下のものがあります。
- プロカルシトニン(PCT)
- IL-6
- IL-8
- neopterin
- 赤血球沈降速度(ESR)
参考になれば幸いです( ´ ▽ ` )ノ。
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