血液検査の1つに赤血球沈降速度(ESR)があります。

何やらややこしそうな名前ですよね(^_^;)

読み方は、そのまま「せっけっきゅうちんこうそくど」で、ESRはそのまま、「イーエスアール」と読みます。

赤血球が沈降する速度ということで、赤血球沈降速度(ESR)とは、その名の通り血液中の赤血球が試薬内を沈むスピード(速度)を検査するものです。

ではこれが一体何を意味するのでしょうか?

実は、赤血球沈降速度(ESR)とは、CRPと共に最も有名な炎症マーカーの1つであり、炎症が起こっているかどうかを判断するのに使われます。

この数字が基準値から外れている場合は、体内で何らかの炎症・異常が発生している可能性が高く、いろいろな疾患の状態把握をする際に用いられる血液検査です。

今回は、この赤血球沈降速度(ESR)の基準値などについてまとめました。

赤血球沈降速度(ESR)とは?

赤血球沈降速度(ESR)は、臨床的な検体検査の中で古くから用いられているもので、省略して赤沈(読み方は「せきちん」)、一般では血沈検査と呼ばれています。

先ほど申し上げたように、赤血球沈降速度(ESR)とは、CRPと共に最も有名な炎症マーカーの1つです。

体のどこかで炎症がある場合に、CRPと共にこの赤血球沈降速度(ESR)の数値にも異常が起こります。
(例外として後述するようにこれらの値が解離することもあります。)

炎症のほか、後述するように組織の崩壊や、血漿タンパク異常を反映するため、初診時のスクリーニング検査や、慢性疾患の経過観察時などに行います。

※ちなみにESRはerythrocyte sedimentation rateの頭文字を取った略語です。

 

赤血球沈降速度(ESR)を測定する目的は?

少し繰り返しになりますが、赤血球沈降速度(ESR)を測定する目的は

  • 炎症
  • 組織崩壊
  • 血漿蛋白異常
  • 潜在的器質的疾患のスクリーニング
  • 疾患の活動性の指標
  • 慢性炎症の病勢推移の観察
  • 治療判定

をチェックすることです。

つまり、今まさに急性期の病気の評価だけでなく、慢性的な病気の治療の効果判定や、病気の勢いを推測するのにも使われます。

また、どこかに潜在的な病気が隠れていないかをスクリーニングする目的でも使われることがあります。

赤血球沈降速度(ESR)の基準値(正常値)は?

赤血球沈降速度(ESR)の基準値(正常値)と、以下の通りです。

  • 成人男性の場合:2~10mm/hr 
  • 成人女性の場合:3~15mm/hr

単位はmm/hrで1時間あたり赤血球が沈降する距離(mm)ということです。

これよりも、高値を示している場合は赤沈の促進、低値を示している場合は赤沈の遅延と呼ばれます。

ただし、個人差があり、異常がないのに常に基準値より低い人や高めの人もいます

なお、どうしてこの値が高くなったり低くなったりするのかについては以下の要因が考えられています。

赤血球沈降速度(ESR)を促進(高値になる)させる要因

  • フィブリノゲン・ブログリンの増加
  • アルブミンの減少
  • 循環血漿量の増加
  • 貧血

赤血球沈降速度(ESR)を遅延(低値になる)させる要因

  • フィブリノゲン・ブログリンの増加
  • 多血症

 

赤血球沈降速度(ESR)が異常値のときに考えられる病気は?

異常のときに考えらえる病気は、以下の通りです。

赤血球沈降速度(ESR)が基準値より高い場合(促進)

上述のように高グロブリン血症、高フィブリノーゲン血症を起こす疾患を中心にESRが促進します。

以下の病気・病態が挙げられます。

高グロブリン血症、高フィブリノーゲン血症を起こす疾患
  • 急性期あるいは慢性期の各種感染症
  • 膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)
  • 心筋梗塞
  • 慢性肝炎・肝硬変・胆嚢炎
  • 悪性腫瘍 など
血漿タンパク質異常をきたす疾患
  • 多発性骨髄腫
  • マクログロブリン血症 など
低アルブミン血症をきたす疾患
  • 重症貧血 など

赤血球沈降速度(ESR)が基準値より低い場合(遅延)

一方でESRが遅延する病気・病態では以下が挙げられます。

  • 無〜低フィブリノゲン血症
  • 白血球増加症
  • 血漿たんぱく質の減少
  • 赤血球増加症・多血症
  • 鎌状赤血球貧血
  • 高度悪液質
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC) など

赤血球沈降速度(ESR)の検査で注意すべき点は?

病状が重いのに赤沈だけでは正常値、逆に女性は何の病気もないのに高くなるという事があります。

また、色々な病気で赤沈は異常値になりますから、この検査だけでどの病気かを判定することは不可能ですので、身体症状や赤血球数、CRP検査、血清たんぱく分画検査などによって診断されるのが通常です。

上に述べたようにESRはCRPとともに、炎症マーカーとして有名です。
これら2つは基本的に相関して上がるのですが、時として相関しない(解離する)時があります。

これらが相関しない場合は以下の通りです。

CRP<ESRとなる場合

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • シェーグレン症候群
  • 高度の貧血
  • 高γグロブリン血症

CRP>ESRとなる場合

  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)
  • 低γグロブリン血症
  • 多血症

次にESRの測定方法について見てみましょう。

赤血球沈降速度(ESR)の測定方法は?

国際的に認められているものは、標準的なウェスタグレーン法(Westergren法)です。

検査にあたっては、まず血液1.6mlに対して抗凝固剤のクエン酸ナトリウムを0.4mlの割合で混ぜ、目盛り入りガラス棒に入れて台に立て、30分、1時間、2時間後に、赤血球の高さがどの程度下がったかをみるものです。

採取した血液については、室内保存は2時間以内、4℃保存で6時間以内に検査しなければなりません。

 

参考文献)今日の臨床検査 2011ー2012 P255-256

最後に

上記で述べました様に、赤血球沈降速度(ESR)の検査だけでは、特定の疾患を診断すること不可能です。

この検査は、医師にとって患者が炎症などを起こしているかどうかを判断する材料になり、検査結果とそのほかの情報を見て診断がなされます。

赤血球沈降速度が異常値であっても心配し過ぎることなく、症状の原因を見付けるために、医師の指示に従うのが大切です。

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