頚動脈管(けいどうみゃくかん)という解剖学的構造があります。

文字通り頚動脈(なかでも内頸動脈)が通る(走行する)管のことです。

今回は頚動脈管(英語で「carotid canal」)について

  • 頚動脈管とは・その場所
  • 頚動脈管を通るもの

などについて図や実際のCT画像や動画を用いてまとめました。

頚動脈管って、何が通るトンネルなの?

頭の横の骨(側頭骨)の中を通るトンネルで、脳に血液を送る大切な内頸動脈が、首から頭の中へ入っていく通り道なんですよ。

先に結論:頚動脈管とは・場所と通るもの

  • 頚動脈管(けいどうみゃくかん)は、耳の奥の側頭骨(錐体部)の中を通る骨のトンネルで、首を上ってきた内頸動脈が頭の中へ入る通り道です
  • 通り方:頭蓋底の頸静脈孔の前内側から骨に入り、まず上へ(垂直部)、次に90度曲がって前内側へ(水平部)進み、破裂孔の近くで骨を出て、海綿静脈洞へ向かいます
  • 通るもの:内頸動脈のほか、そのまわりの交感神経(内頸動脈神経叢)と細い静脈叢です。中耳(鼓室)・蝸牛のすぐ前内側にあるため、側頭骨骨折や中耳の病気の評価、内頸動脈の走行異常の確認で重要になります
  • 破裂孔との関係:内頸動脈は破裂孔を通り抜けるのではなく、破裂孔の上を越えて海綿静脈洞へ進みます

頚動脈管とは?その場所は?

頚動脈管とは、側頭骨(錐体部)内に存在する内頸動脈の通り道の一部です。

内頸動脈は現在よく使われるBouthillier分類でC1〜C7に分けられ、このうち頚動脈管を通るのは錐体部(C2)です(旧来のFischer分類のC1〜C5とは番号が逆向きなので注意)。

内頸動脈は上のMRAの画像のようになり、頭蓋底で上行したのち前内側へ屈曲する錐体部(C2)が、この頚動脈管を通る部位に相当します。

この側頭骨錐体部を通った後、内頸動脈は頭蓋内である中頭蓋窩に進みます。

つまり頚動脈管は、内頸動脈が頭蓋外から頭蓋内へ入ってくる骨の部分ということができます。

イメージだとこんな感じです。

頚動脈管の具体的な解剖・位置をCT画像で確認

次に実際のCT画像を見ながら頸動脈管の具体的な解剖・位置を見ていきましょう。

 

頭部単純CTの骨条件の横断像(輪切り)です。

まず頚動脈管は、頸静脈孔の前内側に位置する部位を入り口として骨(側頭骨)に入ります。

その後、鼓室・蝸牛の前内側を上行します。この部位をvertical portionといいます。

さらにその後、90度屈曲し耳管の内側を前内側やや下方へ走行します。この部分をhorizontal portionといいます。

その後、破裂孔の後縁近傍の側頭骨錐体部尖部で終わります1)。

この頚動脈管の一連の連続する様子は動画の方がわかりやすいと思います。

こちらを参考にしてください。

頚動脈管の水平部のgif画像も作ってみました。

上のように赤く塗った部分が頸動脈管の一部です。

横断像(輪切り)を水平に進むためここの場所は頸動脈管のhorizontal portionと呼ばれます。

頸動脈管の中には両側を外から内に向かって内頸動脈が走行します。

頚動脈管・頸静脈孔・破裂孔の違い

頭蓋底のこのあたりには似た名前の孔が集まっています。違いを表にまとめました。

構造 場所 主に通るもの
頚動脈管 側頭骨錐体部の中 内頸動脈(錐体部C2)・交感神経叢・静脈叢
頸静脈孔 側頭骨と後頭骨の間(頚動脈管の後外側) 内頸静脈(頸静脈球)・舌咽神経・迷走神経・副神経など
破裂孔 錐体尖と蝶形骨・後頭骨の間 生体では線維軟骨でふさがり、内頸動脈はその上を越えて走る

内頸動脈の分節では、破裂孔の上を越える部分を破裂孔部(C3)と呼び、頚動脈管内の錐体部(C2)と区別します(Bouthillier 1996)。

頚動脈管を通るものは?

頚動脈管には

  • 内頸動脈
  • 交感神経叢

が通ります。

頚動脈管に起こる問題は?

頚動脈管に起こる変異や問題としては

  • 頚動脈管の無形成・低形成
  • 頚動脈管の骨折

があります。

頚動脈管の無形成・低形成

内頸動脈無形成と呼ばれる変異があり、片側の内頸動脈が形成されません。

この場合、頚動脈管も形成されないことが多いとされます。文献例を含む内頸動脈欠損64例のまとめでは、頭蓋底CTで全例に頚動脈管の欠如がみられました(Zhang 2018)。

そのため、MRAやCTAで片側の内頸動脈が写らないときは、骨条件のCTで頚動脈管があるかを確認します。頚動脈管が保たれていれば、閉塞や解離など後から起きた変化を考える手がかりになります。

異所性内頸動脈(aberrant ICA)

内頸動脈が本来の頚動脈管の垂直部を通らず、鼓室(中耳)の中を横切って走るまれな走行異常です。鼓膜の奥の赤い拍動性腫瘤として見え、鼓室型グロムス腫瘍などとの区別が問題になり、見逃して手術すると重大な出血につながりえます(Sullivan 2019)。CTでは鼓室内を走る管状の軟部影と本来の頚動脈管垂直部が見えないことが手がかりです。

頚動脈管の骨折

外傷による頭蓋底骨折(側頭骨骨折など)が頚動脈管に及ぶと、内頚動脈が損傷を受けることがあります。

すると損傷を受けた部位に動脈瘤ができることがあり、破裂の原因となることがあります。ただし頚動脈管骨折があっても内頚動脈損傷を伴うとは限らず、頭部外傷43例の検討では頚動脈管骨折の内頚動脈損傷に対する感度は60%、特異度は67%にとどまりました(York 2005)。骨折の有無だけで判断せず、疑わしいときは血管そのものの評価を検討します。

頚動脈管でよくある疑問(Q&A)

Q. 「頸動脈孔」と「頚動脈管」は同じものですか?

A. 頚動脈管は側頭骨の中の管全体、「頸動脈孔」はその頭蓋底下面の入り口(外頸動脈口)を指すことが多い言葉です。

Q. CTで内頸動脈と内頸静脈はどう見分けますか?

A. 頭蓋底に近づくと内頸動脈は頚動脈管へ、内頸静脈はその後外側の頸静脈孔へ入ります。骨条件で「どちらの孔に入っていくか」を追うと区別できます。

最後に

頚動脈管についてまとめました。

  • 頚動脈管は側頭骨(錐体部)内に存在する内頸動脈の通り道の一部である。
  • またその具体的な解剖をCT画像を用いて見ていきました。
  • 頚動脈管には、内頸動脈、交感神経叢が走行する。
  • 頚動脈管には無形成・低形成の変異があり、内頸動脈が写らないときは骨条件で頚動脈管の有無を確認する。
  • 内頸動脈が鼓室内を走る異所性内頸動脈にも注意する。
  • 外傷の際に骨折すると外傷性の動脈瘤の原因となることがある。

 

という点がポイントです。

参考になれば幸いです。

関連記事:頸静脈孔とは?場所と通るもの(内頸静脈・舌咽・迷走・副神経)、頸静脈孔症候群と腫瘍のCT・MRI画像所見

関連記事:視神経管・上眼窩裂・下眼窩裂を通るもの一覧|眼窩の孔の解剖と眼窩尖症候群をCTで解説

参考文献:
1)画像診断 Vol.23 No.4 2003 P426-427

  1. Bouthillier A, van Loveren HR, Keller JT. Segments of the internal carotid artery: a new classification. Neurosurgery. 1996;38(3):425-432. PubMed
  2. York G, Barboriak D, Petrella J, et al. Association of internal carotid artery injury with carotid canal fractures in patients with head trauma. AJR Am J Roentgenol. 2005;184(5):1672-1678. PubMed
  3. Zayas JO, Feliciano YZ, Hadley CR, et al. Temporal bone trauma and the role of multidetector CT in the emergency department. Radiographics. 2011;31(6):1741-1755. PubMed
  4. Zhang P, Wang Z, Yu FX, et al. The clinical presentation and collateral pathway development of congenital absence of the internal carotid artery. J Vasc Surg. 2018;68(4):1054-1061. PubMed
  5. Sullivan AM, Curtin HD, Moonis G. Arterial anomalies of the middle ear: a pictorial review with clinical-embryologic and imaging correlation. Neuroimaging Clin N Am. 2019;29(1):93-102. PubMed

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの側頭骨CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。

あわせて読みたい:内頸動脈の走行異常|咽頭後壁に寄る内頸動脈と中耳を通る異所性内頸動脈のCT所見

あわせて読みたい:多発外傷の頭頸部評価|鈍的脳血管損傷(BCVI)をCT血管撮影で見つける基準(拡大Denver)と読み方

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