頚動脈管(けいどうみゃくかん)という解剖学的構造があります。
文字通り頚動脈(なかでも内頸動脈)が通る(走行する)管のことです。
今回は頚動脈管(英語で「carotid canal」)について
- 頚動脈管とは・その場所
- 頚動脈管を通るもの
などについて図や実際のCT画像や動画を用いてまとめました。
頚動脈管とは?その場所は?
頚動脈管とは、側頭骨(錐体部)内に存在する内頸動脈の通り道の一部です。
内頸動脈はその場所でC1〜C5に分けられますが、このうち頚動脈管を通るのは内頸動脈錐体部と呼ばれるC5の部分です。
内頸動脈は上のMRAの画像のようになり、前方へと屈曲し、上行するC5がこの頚動脈管を通る部位に相当します。
この側頭骨錐体部を通った後、内頸動脈は頭蓋内である中頭蓋窩に進みます。
つまり頚動脈管は、内頸動脈が頭蓋外から頭蓋内へ入ってくる骨の部分ということができます。
イメージだとこんな感じです。
頚動脈管の具体的な解剖・位置をCT画像で確認
次に実際のCT画像を見ながら頸動脈管の具体的な解剖・位置を見ていきましょう。
頭部単純CTの骨条件の横断像(輪切り)です。
まず頚動脈管は、頸静脈孔の前内側に位置する部位を入り口として骨(側頭骨)に入ります。
その後、鼓室・蝸牛の前内側を1cmほど上行します。この部位をvertical portionといいます。
さらにその後、90度屈曲し耳管の内側を前内側やや下方へ走行します。この部分をhorizontal portionといいます。
その後、破裂孔の後縁近傍の側頭骨錐体部尖部で終わります1)。
この頚動脈管の一連の連続する様子は動画の方がわかりやすいと思います。
こちらを参考にしてください。
頚動脈管の水平部のgif画像も作ってみました。
上のように赤く塗った部分が頸動脈管の一部です。
横断像(輪切り)を水平に進むためここの場所は頸動脈管のhorizontal portionと呼ばれます。
頸動脈管の中には両側を外から内に向かって内頸動脈が走行します。
頚動脈管を通るものは?
頚動脈管には
- 内頸動脈
- 交感神経叢
が通ります。
頚動脈管に起こる問題は?
頚動脈管に起こる変異や問題としては
- 頚動脈管の無形成・低形成
- 頚動脈管の骨折
があります。
頚動脈管の無形成・低形成
内頸動脈無形成と呼ばれる変異があり、片側の内頸動脈が形成されません。
この場合、頚動脈管も形成されないことが多いとされます。
頚動脈管の骨折
外傷による頭蓋底骨折(中でも側頭骨の縦骨折)により、骨折が頚動脈管に及ぶと内頚動脈が損傷を受けます。
すると損傷を受けた部位に動脈瘤ができることがあり、破裂の原因となることがあります。
最後に
頚動脈管についてまとめました。
- 頚動脈管は側頭骨(錐体部)内に存在する内頸動脈の通り道の一部である。
- またその具体的な解剖をCT画像を用いて見ていきました。
- 頚動脈管には、内頸動脈、交感神経叢が走行する。
- 頚動脈管には無形成・低形成の変異がある。
- 外傷の際に骨折すると外傷性の動脈瘤の原因となることがある。
という点がポイントです。
参考になれば幸いです。
参考文献:
1)画像診断 Vol.23 No.4 2003 P426-427