腎癌の病期分類
T因子
T1
- 最大7cm以下で腎に限局
- T1a:4cm以下
- T1b:4-7cm
T2
- 最大径7cmをこえ、腎に限局する腫瘍
- T2a:7−10cm
- T2b:10cmをこえる。
T3
- 主静脈または腎周囲組織に発展するが、同側の副腎への進展がなくGerota筋膜をこえない腫瘍。
- T3a:肉眼的に腎静脈やその他区域静脈に進展する腫瘍、または腎周囲・腎洞脂肪組織に浸潤するがGerota筋膜をこえない腫瘍。※血管に腫瘍塞栓を形成し、予後が悪い。これまでunderdiagnosisされてきた。しっかり診断することが大事。
- T3b:横隔膜下の下大静脈内に進展
- T3c:横隔膜上の下大静脈に進展または大静脈壁に浸潤
T4
- Gerota筋膜を超えて浸潤(同側副腎への連続的進展を含む)
淡明細胞型腎細胞癌におけるT分類
①T1a:
- 偽被膜が保たれ、腎に限局していたらT2以下。と診断して感度84%、特異度95%。
▶腎部分切除術ができるのは、
- 偽被膜があること。
- T1a(4cm以下)であること。
- 腎辺縁に存在し、腎門部や腎盂腎杯から離れていること。
※この際、少なくとも2方向での撮影が必要。横断像だけだと距離が分かりにくいことあり。再構成も有用。
症例 50歳代男性 左腎に3cm大のRCC
再構成にて腎門部や腎盂腎杯から離れていることを確認し、腎部分切除術施行。
②T3a:
- 腎周囲脂肪織の毛羽立ちがあればT3aとすると…
- ただし炎症性変化との区別は困難。
- 顕微鏡的浸潤。
- 正診率は64%。(残りはT1/T2)
- いずれも腎全摘術。
③T3b:
- 皮髄相(30s)・腎実質相(80s)で評価。 腎実質相のみだと見えにくいこともある。
- 肝部下大静脈への進展を認めると、肝臓外科のサポートが必要になる。
- T3cだと、開胸開腹手術が必要になり、人工心肺装置が必要になる。
- なので、これらの術前評価は重要。
- 腫瘍塞栓の下大静脈壁浸潤評価は難しい。
④T4:
- Gerota筋膜外(筋肉・隣接臓器・横隔膜)に異常造影効果。
- 脂肪があれば浸潤なし。
- 境界明瞭であれば可能性低い。
- 副腎も同様。異常なければ温存。
N因子
- N0 : 所属リンパ節転移なし。
- N1 : 1個の所属リンパ節転移。
- N2:2個以上の所属リンパ節転移。
- 所属リンパ節:腎門部・腹部傍大静脈・腹部大動脈静脈間・腹部傍大動脈。
▶N分類
- 短径1cm以上を陽性とすると、
・反応性と区別は困難。
・顕微鏡的浸潤。
・正診率は74%、偽陽性率19%、偽陰性率7%。
術前に泌尿器科医が知りたいこと
腎部部分切除術の適応があるかどうか。
- 選択的適応:対側腎機能正常例
- 相対的適応:患側腎合併疾患、潜在性腎機能障害、多発性素因・遺伝性疾患
- 絶対的適応:単腎、両側腎細胞癌、高度な腎機能低下
腫瘍側因子
- T1a腫瘍(<4cm)
- 無症候性
- 単発
- 偽被膜を有する外方突出型
※最近はT1b腫瘍や実質内埋没腫瘍にまで拡大(腎機能温存が予後に影響するため)
宿主側因子
- 潜在的多発例/遺伝性疾患:Von Hippel Lindau病、Birt-Hogg-Dube症候群、乳頭状腎細胞癌など
- 腎不全への移行リスクの高い症例:単腎症、糖尿病性腎症、動脈硬化、水腎症
腫瘍・解剖について
- 腫瘍の形態:充実性・嚢胞性、被膜の有無
- 腫瘍の位置:外側・中下極なら、腹腔鏡、上極・腎門側なら経腹的アプローチ、腎杯と腫瘍の距離。
- 腎動脈の本数とその末梢枝の走行:腎動脈阻血、葉間動脈や弓状動脈と腫瘍との位置関係
術後に知りたい事
▶合併症の有無
- 尿漏、尿腫の形成の有無
- 出血、血腫形成、AVF形成の有無
- 感染
- 切除部位と周囲臓器との癒着。
- 再発・転移の有無。