怖い頭痛とは?
ランク1(最も怖い頭痛)
- くも膜下出血
- 髄膜炎
- 高血圧性脳症
- 脳出血
- 外傷(慢性硬膜下出血など)
- 下垂体出血
- 頸動脈・椎骨動脈解離
ランク2
- 緑内障
- CO中毒
- 副鼻腔炎
- 側頭動脈炎
- 脳腫瘍
- 脳膿瘍
- 子癇
- 視神経炎
ランク3
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 頸性頭痛
- 大後頭神経痛
- 三叉神経痛
- 舌咽神経痛
- 眼精疲労
- 発熱に伴う頭痛
- 側頭上顎関節炎
- 帯状疱疹
- 群発頭痛
- 性行為後頭痛
怖い頭痛を除外することが重要
- くも膜下出血(SAH)
- 髄膜炎
から考える。
くも膜下出血を見つける2つの質問!
- Very sudden onset?
- Worst headache in your life?
これまでにない強い頭痛+ゆっくり発症+発熱→髄膜(脳)炎
頭痛で問診すべきこと
- 頭痛の性状
- 既往歴→頭痛持ちか?いつもの頭痛か? 頭部外傷歴はないか?
- 家族歴→家族に頭痛、脳卒中の人いるか?
- 社会歴→カフェインを含む飲料をよく飲むか?チョコレート、アルコール、赤ワインは?
- 内服薬→頭痛を起こす薬剤は飲んでいないか? (硝酸薬、経口避妊薬、ACE阻害薬)
- システムレビュー→嘔気・嘔吐、眼症状、しびれ、浮遊感、回転性めまい、失神、意識障害など
身体所見でチェックすべきこと
- Vital sign→高血圧+徐脈=Cushing現象→頭蓋内圧を亢進させる頭蓋内病変を強く疑う。
- 髄膜刺激症状 ※硬部硬直→SAH、髄膜炎を考える。
- Kernig’s sign・・・膝を90°曲げて伸ばしていく。抵抗すると陽性。
- Brudzinski’s sign・・・仰向けにして首を屈曲させると股関節と膝の両方を屈曲させて下肢を胸に引き寄せる。
- Jolt accentuation・・・2-3回/s頭を横に振ってもらい頭痛が増悪するかを見る。陰性なら髄膜炎は否定的!?(感度97%、特異度60%)
- 神経学的所見
- 瞳孔辺縁不整・拡大、対抗反射(-)、充血、
- 視力低下→緑内障
- 眉間、眉上部に圧痛→前頭洞炎
- 側頭動脈の圧痛・発赤→側頭動脈炎(50歳↑)
- 髪をかきわけ皮疹?→帯状疱疹
頭痛での検査
・くも膜下出血で腰椎穿刺は最後の手段である。
- 頭部CTではっきりしない
- very sudden onsetでworst headache
→腰椎穿刺!! ※血性髄液なら必ず3本
頭痛を起こす典型的な疾患の特徴は?
- 慢性的な鼻閉感や気道感染症に伴う→副鼻腔炎
- 光の中に穴があるなどの視野障害に伴う頭痛→緑内障
- 視野欠損に伴う頭痛→視路障害(下垂体腺腫など)
- 前傾姿勢で目がかすみ、早朝起床時に起こり、立ち上がると軽快する頭痛→頭蓋内圧亢進症
- 慢性的に嘔気を伴い、毎日起こり、次第に増悪する頭痛→頭蓋内圧亢進症
- 突発的で強烈で片側性視覚障害に伴う頭痛→視神経炎
- 55歳以上の疲労感、全身の疼痛と寝汗を伴う頭痛→巨細胞性動脈炎
- 一過性血圧上昇に伴う一時的頭痛→褐色細胞腫
各論①髄膜炎
身体所見
- Kernigサイン(膝を90°曲げて伸ばしていく→抵抗すると陽性)
- Brudzinskiサイン(仰向けにして首を屈曲させると股関節と膝関節の両方を屈曲させて下肢を胸に引き寄せる)、
- 項部硬直は、あれば髄膜炎として役に立つ。なくても髄膜炎の否定は全くできない。
- neck flexion test(口を閉じたまま自分で顎が前胸部につく)→感度81%、特異度39%
- Jolt accentuation(イヤイヤをするように頭部を2~3回左右に振ると頭痛が増悪する現象)→感度100%、特異度54%→首を振ってもらい、頭痛が増悪しなければ髄膜炎は否定的。
臨床症状
細菌性髄膜炎
- 頭痛
- 発熱に続き髄膜刺激症状(羞明、項部痛、Kernig徴候、Brudzinski徴候、眼球圧迫痛)
- 痙攣
- 意識障害
- 頭蓋内圧亢進症状(嘔気、嘔吐)
などが急激に出現する。
※肺炎球菌、インフルエンザ菌が圧倒的に多い。他には髄膜炎菌、リステリア、大腸菌など年齢に応じて。
関連記事)細菌性髄膜炎の症状や診断、治療法のまとめ
ウイルス性髄膜炎
- 発熱、頭痛、髄膜刺激症状を示す。
病初期には頭痛と発熱のみのことがある。意識障害はあっても傾眠程度と軽い。脳実質症状(腱反射亢進、病的反射出現)をみることはまれ。
真菌性、結核性髄膜炎
上記の症状が亜急性に進行する。
関連記事)
細菌性髄膜炎の髄液の特徴
- 初圧↑ ※50cmH2Oなどと↑↑ならクリプトコッカス髄膜炎など
- 白血球↑
- 特に多核球(好中球)↑ ※ただし細菌性以外でも初期には多核球優位のことあり
- 蛋白↑※蛋白正常なら細菌性の可能性は極めて低い。
- 糖が低め(血糖値の50%以下で優位減少)
髄液所見による髄膜炎の鑑別診断
外観 | 髄液圧(髄液の正常圧は60~150mmH2O) | 細胞数 | 細胞種類 | 蛋白(mg/dl) | 糖(mg/dl) | |
細菌性 | 混濁、膿性 | 高度上昇 | 500~10000 | 好中球 | 50~1000 | 高度減少 |
結核性 | 日光微塵、水様透明 | 上昇 | 30~500 | リンパ球 | 50~500 | 40以下 |
ウイルス性 | 水様透明 | 正常または軽度上昇 | 10~1000 | リンパ球 | 40~100 | 正常ないし軽度上昇 |
真菌性 | 水様、ときに混濁 | 上昇 | 10~1000 | リンパ球 | 50~500 | 40以下 |
癌性 | 水様~白濁 | 正常または軽度上昇 | 0~500 | リンパ球 | 40~500 | 40以下 |
末梢血所見
- 細菌性:白血球増多、血沈著明亢進、CRP強陽性
- ウイルス性:白血球は正常のことが多いが、減少していることもある。
- 結核性:白血球軽度上昇(15000以上になることはまれ)、血沈軽度亢進、CRP陽性
- 真菌性:特徴的な所見なし。
診断
一般的に髄液中の細胞数が10(/mm3)以上で髄膜炎と診断する。
髄膜炎を疑ったら順番が大事!!
- 血液培養を2セット採取(このとき、尿中肺炎球菌抗原が陽性ならば、抗菌薬投与の直前か同時にデカドロン®(デキサメタゾン)10mg(or0.15mg/kg)投与を6時間ごと4回)
- 抗生物質を投与
- 頭部CT
- 腰椎穿刺。
※脳の後遺症をより少なくするために診断よりも治療を優先する。
腰椎穿刺の禁忌
- 頭蓋内圧の亢進(頭部CTで確認必要)
- 血小板減少
- 凝固能異常
- 抗血小板薬の服用
※デキサメタゾンは小児では聴覚障害の予防になるが、大人では生命予後改善が言われるが、エビデンスがない。専門外ならば、救急の場で使うのは??
感染性髄膜炎の治療例
- ロセフィン®(セフトリアキソン)2g +バンコマイシン®1g
+生食50ml 12時間ごと - ゾビラックス®(アシクロビル)500mg
+生食50ml 8時間毎 (また、年齢3ヶ月以下、50歳以上の患者はビクシリン®(アンピシリン)2g+生食50ml4時間毎を追加する。ロセフィン®に抵抗性のリステリアをカバーするため。)
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各論 ②くも膜下出血
初期対応ですべきことと目的
【目的】
- 再出血予防
- 頭蓋内圧コントロール
- 全身合併症の改善
【やること】
- ルートキープ+採血
- 頭部CTへ CT上、
SAHを認めれば - 脳神経外科call
早期から
- 降圧:収縮期血圧120-140mmHg
- 鎮静:プロポフォール(ディプリバン(R))、ミダゾラム(ドルミカム(R))c.i.v
- 鎮痛:ペンタジン1A iv
※呼吸障害強ければ気道確保することも。ただし安易な気管内挿管は再出血も。
※再出血は発症6時間以内に特に多く発生。なので発症直後から安静を保ち、侵襲的な処置や検査は避けたほうがよい。
各論 ③脳出血
初期対応
- vital signの安定化
- ルートキープ+採血
- 頭部CT
頭部CT上、出血を認めれば、 - 脳神経外科call ※呼吸障害強ければ先に気道確保することも。
- SBP>180mmHg、DBP>105mmHgの状態続くなら、降圧を開始。満たさなければ必要なし。発症前の血圧を目標にする。(脳卒中ガイドライン)
※脳ヘルニア徴候+やCT上のmidline shiftが著明な例(頭蓋内圧亢進例)では、bed up(20°~30°)とし、グリセオール200ml/1h程度でdivただし、発症6時間以内なら組織圧低下により出血を助長させるので原則使用しない。
※止血剤は頻用されるが、エビデンスなし。使用しても発症6-12時間まで。
各論 ④片頭痛
【診断基準】
- A:B~Dを満足する発作が5回以上あり
- B:頭痛発作が4~72時間持続する
- C:次のうち2つ以上を満たす。
1)片側性頭痛
2)拍動性
3)中~重度の痛み(日常生活を妨げる)
4)動くと悪化 - D:発作中次の1項目を満たす
1)悪心、嘔吐
2)光過敏症、音過敏 - E:その他の疾患によらない。
※片頭痛のうち、拍動性の頭痛は50%程度しかない。前兆(aura)は30%程度しか出ない。
片頭痛の3item簡易診断
- 嘔気
- まぶしいの嫌(photophobia:羞明)
- 日常生活を妨げるような頭痛
2つ以上○で、感度81%、特異度75%、陽性的中率93%
問診すべきポイント
○「手首に手をやってください。このようにドクンドクンとなりますか?」
△「脈を打つような痛みですか?」
×「拍動性の頭痛ですか?」←これでは患者はわからない。
片頭痛のトリガー
- 精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠不足・過多
- 内因性因子:月経周期(エストロゲンの関与)
- 環境因子:天候の変化、温度差、頻回の旅行、高山
- 食事:アルコール、特に赤ワイン(ヒスタミンを含む)。アルコール以外は人により反応違い、一様に制限する必要ない。チョコレート(チラミン)、チーズ(ヒスタミン、チラミン)、カフェインの摂りすぎはダメ。
片頭痛の治療
- 軽症~中等度→ロキソニンで様子見
- 中等度~重度→イミグラン®3mg皮下注+プリンペラン®1A静注。内服できるならイミグラン(50mg)1T頓服
※1Tで効果乏しいなら1日2回まで内服可能(2時間以上空ける)
※プリンペランは吐気止めとしてでなく、単独で片頭痛に効果あり。軽症でも使用してOK。
※片頭痛も緊張性頭痛も元来は同じ疾患
その他の頭痛の原因への初期対応
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)への初期対応
プレドニゾロン60mg/日を処方し、翌日内科外来受診。
緑内障への初期対応
ピロカルピンを15分毎に点眼しながら、眼科にコンサルト。
頭痛を救急外来から他科へ依頼するポイント
- 眼痛・視力障害が出現→眼科へ(緑内症)
- 眉間痛なら耳鼻科へ(前頭洞副鼻腔炎)
- 遅れて発疹が出現→皮膚科へ(帯状疱疹)
これら以外は基本的に、翌日神経内科、脳神経外科受診を勧める。
以下に当てはまればすぐに再診するよう伝える。
- 頭痛が激しくなってきた。
- 頭痛の性質が変わってきた。
- 普段と比べて様子がおかしい。
- 何度も嘔吐する。
- 手足が動かしにくかったり、しゃべりにくい。