失神へのアプローチ
- 危険な病歴・既往歴を見逃さない。
- 心血管性失神を見逃さない。
- 最低必要な検査は、採血、ECG、尿妊娠反応
- リスクが高い場合は入院精査。
- ただし、若年1回目で原因不明なら精査不要。
そもそも本当に失神なのか?
失神とは・・・
- 一過性の(瞬間的な)意識消失発作。
- 脱力を伴う。
- 数分で完全に元の状態に戻るもの。
- 脳血流の減少または、途絶で起こることが多い。
なので、回転性めまい、浮遊感、痙攣を除外し、外傷がないかをチェックする。
また、来院時、意識レベルがクリアでなければ、意識障害として対応する。
失神の原因検索
- ①心血管性失神
- ②起立性失神(出血、貧血、脱水)
- ③神経調節性失神
※最も頻度の高い血管迷走神経反射はここに含まれる。
(④薬剤性失神)
最後に、TIAを考える。
①心血管性失神
見逃してはいけない。老人ではまず疑う。
∵致死率が高いから(1年死亡率18-33%)。
原因
- 不整脈・・・頻脈性、徐脈性
- 器質疾患・・・弁膜疾患、心筋症、心不全、大動脈解離、肺梗塞
【問診すべきこと】
- 心疾患のリスク(心不全など) ・老人
- どのように発症したか?
- 仰臥位発症(不整脈)
- 前駆症状なし
- 胸痛の合併
- 労作時発症(器質性)
【検査】
ECG
失神患者で、
- ①収縮期血圧90mmHg以下
- ②息切れあり
- ③非洞性不整脈または新たな心電図異常
- ④心不全の既往
- ⑤Ht≦30%
のいずれかを満たす時は心血管性失神である可能性が高く、死亡率も高い。一つでも引っかかったら入院を!
若い人なら・・・
怖い原因は2つ
- ①肥大型心筋症・・・家族歴、運動で血圧低下
- ②QT延長症候群・・・興奮、恐怖、運動、ストレスで発症
②起立性低血圧
- 起立後3分以内に急激な血圧低下が起こる。
- 臥位と座位3分後の血圧測定→SBPの20mmHg以上の低下なら診断。
- SBP<90mmHg
- 前駆症状あり→冷や汗、ふらつき、めまい、嘔気
- 出血、貧血、脱水、(感染)を検索する。
【問診すべきこと】
- 消化管出血・潰瘍・LCの既往
- 便の色
- 食道静脈瘤
- 婦人科疾患
- 妊娠(最終月経)
- 貧血の既往
- 薬剤(NSAID、降圧薬)
- 立ち上がって3分以内に目の前が真っ暗にならないか
【検査】
- Hb値
- 尿妊娠反応
※ただし、急性のものではHb変化なし→怪しければ経鼻胃管、便潜血反応をチェック。
③神経調節性失神
- 血管迷走神経反射
- 状況性失神・・・排尿後、咳後、食後
- 頸動脈洞過敏症
- 自律神経失調症(Parkinson病、糖尿病など)
血管迷走神経反射
- 最も多い!
- 驚愕、怒り、笑い
- 排尿、排便、咳、嘔吐、嚥下→状況失神!
- 老人→食後血圧が下がりやすい
- 飲酒、風邪などは助長する要因。
- 前駆症状あり→冷汗、ふらつき、めまい、嘔気
- 多くは輸液のみでよくなる。
- 機序:立位→静脈pooling→静脈環流減少→交感神経賦活化(頻脈)→ventricular mechanoreceptors(C-fiber)を刺激→逆説的に交感神経刺激の離脱→副交感神経優位→血圧低下+徐脈
(参考)失神vs痙攣
失神 | 痙攣 | |
意識回復 | 早い | 遅い(>5min) |
もうろう状態 | - | + |
舌咬症 | - | + |
失禁 | - | + |
前兆 | - | + |
冷汗、めまい疼痛、排尿 | + | - |