先に結論:気腫性膀胱炎
- 気腫性膀胱炎はガスを作る細菌(大腸菌・クレブシエラなど)の感染で、膀胱の壁の中や膀胱内にガスがたまる病気です
- コントロール不良の糖尿病・神経因性膀胱・尿閉の人、特に高齢女性に多く、CTで膀胱壁に沿ったリング状のガスが見えれば診断できます
- 典型的な膀胱炎の症状(頻尿・排尿痛など)がそろうのは約半数で、血尿や腹部の圧痛で見つかることも多いです(Grupper 2007)
- 多くは抗菌薬・導尿・血糖管理で治りますが、気腫性腎盂腎炎の合併は重症です。膀胱内ガスはカテーテル操作や大腸膀胱瘻でも起こるので区別します
気腫性膀胱炎(emphysematous cystitis)
- 膀胱壁の急性炎症。
- ガス産生菌感染により膀胱壁内や膀胱内腔にガスが認められる状態。
- 約2/3が女性(135例のレビューで64%:Thomas 2007)。
- 単純X線写真やCTで膀胱壁内にリング状ガス像や膀胱内のガス像が認められ、診断は容易。
- 起炎菌は大腸菌、Klebsiella pneumoniaeが多い(Amano 2014)。Enterobacter、Clostridium、Candidaなどによる報告もある。
- 無症状で偶然発見されるものから、頻尿、血尿に加えて気尿が認められる事がある。重症の敗血症を伴う急性腹症を呈することもあり。
- コントロール不良の糖尿病患者に見られる点は気腫性腎盂腎炎に類似。135例のレビューでは、年齢中央値66歳、女性64%、糖尿病合併67%でした。
- 神経因性膀胱、尿閉、慢性尿路感染に合併して認められることもある。
- 一般に予後良好で、死亡率は7%程度(Thomas 2007)。ただし、気腫性腎盂腎炎を合併した場合は予後不良。気腫性腎盂腎炎を合併したときはCTでガスの広がりを評価し、Huang-Tseng分類(class1:集合系のみ、class2:腎実質内、class3A:腎周囲腔、class3B:傍腎腔への進展、class4:両側性または単腎)で重症度を判定する。48例の検討では全体の死亡率は18.8%で、限局型(class1・2)で経皮的ドレナージまたは尿管カテーテルと抗菌薬で治療した例は全例が救命された。
- 治療として、血糖のコントロール、抗菌薬投与や導尿が行なわれる。135例のレビューでは90%が内科的治療のみで、手術を併用したのは10%だった(Thomas 2007)。
気腫性膀胱炎の症状
症状の幅が広く、無症状から敗血症まであります(Amano 2014)。53例をまとめた報告では、頻尿・排尿痛などの典型的な尿路感染の症状がそろったのは53.3%だけで、血尿82.3%、腹部の圧痛65.6%でした。経過中に合併症を起こしたのは18.8%でした(Grupper 2007)。糖尿病のある人の尿路感染で腹痛や血尿があるときは、画像で確かめることがすすめられています(Grupper 2007)。
気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
CTで確認するポイント
| 見る場所 | 確認すること |
|---|---|
| 膀胱壁 | 壁に沿ったリング状・泡状のガスがあるか(内腔だけのガスとの区別) |
| 膀胱内腔 | ガスと尿の液面、壁の厚さ |
| 腎臓・尿管 | ガスが上部尿路や腎実質へ広がっていないか(気腫性腎盂腎炎の合併) |
| 膀胱の周囲 | 腸管との瘻孔、膀胱周囲の脂肪織や静脈へのガスの広がり |
CTは異常なガスの検出に感度・特異度ともに高く、ガスの場所と広がり、さらに治療のいらないガス(カテーテル由来など)の見分けにも役立ちます(Grayson 2002)。135例のレビューでは84%が腹部単純X線写真で診断されていましたが、近年はCTが主な診断法になっています(Thomas 2007)。
膀胱内ガスの鑑別診断
- 気腫性膀胱炎
- 大腸憩室、大腸癌、Crohn病で大腸膀胱瘻を形成する場合。
- 膀胱膣瘻
- 外傷性変化
- 腸壁嚢胞状気腫(pneumatosis cystoides intestinalis)
- 気腫性膣炎(vaginitis emphysematosa)
- カテーテル挿入などの医原性の膀胱内ガス混入
症例 80歳代男性 慢性尿路感染に合併した気腫性膀胱炎

膀胱壁から周囲静脈へのairの迷入もあり。
症例 90歳代女性

膀胱壁内にガスを認めています。
気腫性膀胱炎を疑う所見です。
気腫性膀胱炎でよくある疑問(Q&A)
Q. 膀胱内に空気(ガス)があれば気腫性膀胱炎ですか?
A. いいえ。導尿・カテーテル操作のあとや、大腸膀胱瘻・膀胱膣瘻でも膀胱内にガスが入ります。気腫性膀胱炎を考えるのは膀胱壁の中にガスがあるときで、瘻孔を疑うときは膀胱と腸管の接し方も確認します。
Q. 治療は手術が必要ですか?
A. 多くは抗菌薬・膀胱ドレナージ(導尿)・血糖管理で治療され(Amano 2014)、135例のレビューでは90%が内科的治療のみでした(Thomas 2007)。抗菌薬は尿培養の結果などをもとに主治医が選びます。
参考文献
- Amano M, Shimizu T. Emphysematous cystitis: a review of the literature. Intern Med. 2014;53(2):79-82. PubMed
- Thomas AA, Lane BR, Thomas AZ, et al. Emphysematous cystitis: a review of 135 cases. BJU Int. 2007;100(1):17-20. PubMed
- Grayson DE, Abbott RM, Levy AD, et al. Emphysematous infections of the abdomen and pelvis: a pictorial review. Radiographics. 2002;22(3):543-561. PubMed
- Huang JJ, Tseng CC. Emphysematous pyelonephritis: clinicoradiological classification, management, prognosis, and pathogenesis. Arch Intern Med. 2000;160(6):797-805. PubMed
- Grupper M, Kravtsov A, Potasman I. Emphysematous cystitis: illustrative case report and review of the literature. Medicine (Baltimore). 2007;86(1):47-53. PubMed
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尿カテ挿入でのガス混入との見分け方はありますか
コメントありがとうございます。
気腫性膀胱炎の場合は壁内にガスを認めますので重力を無視して存在しますが、尿カテ挿入でのガス混入の場合は膀胱内に重力に沿って腹側に存在するのが通常です。