PET画像診断-脳腫瘍、てんかん、認知症
脳におけるFDG集積
・局所の神経活動をよく表し、正常脳組織へのFDG集積は他の臓器と比べて極めて高い(SUV値8-10)ため、正常脳組織に隣接する腫瘍や炎症は検出が難しい。
・集積低下(機能低下)は検出しやすいが、器質的病変と機能的病変を必ずしも明瞭に区別できない。
脳FDG-PETの正常画像
・灰白質と白質の集積比は概ね3:1で、皮質における集積は灰白質分布をほぼ反映する。
・皮質領域では後頭葉と後部帯状回、楔前部がやや高く、小脳皮質、側頭葉内側部はやや低い。
・小児は、小脳、脳幹部、側頭葉内側の集積が成人に比べて相対的に低く、10代後半で概ね成人パターンになる。
・20-50歳は変化が比較的少ない。
・老年期になると前頭脳間裂やシルビウス裂の開大により周辺皮質への集積が低下。ただし老年期は個人差が大きい。
・統計画像と正常画像データベースとしてSPMやNEROSTAT(3DSSP)をベースとした自動診断補助ソフトが広く使われている。
脳のFDG保険適用疾患
・脳腫瘍:ただし正常脳への集積が高度なため適応は限定される。逆に保険適用はないがメチオニンは脳腫瘍診断に有用。
・てんかん:難治性てんかんで外科的切除が必要な患者。焦点検索には有用。てんかんの診断そのものに有用なわけではない。
原発性脳腫瘍のFDG-PET診断
・正常脳よりも高集積:悪性リンパ腫、一部の多形性神経膠芽腫、一部の転移性脳腫瘍。
・正常脳よりも低集積:ほとんどの神経膠腫・転移性脳腫瘍
・このように腫瘍部位が高集積に見えることもむしろ低集積に見えることもあり難しい。
・一方、メチオニンは脳腫瘍の局所診断に有用。アミノ酸の取り込みを診ている。FDGの集積部位には完全には一致しない。ただし保険適用外。
・FDG集積は悪性度や腫瘍増殖速度と正の相関がある。
・放射線壊死と再発の鑑別に有用であり、腫瘍細胞密度と相関して集積、壊死組織には集積しない。
てんかん焦点診断におけるFDG-PET
・発作間欠期FDG-PETは、発作時脳血流SPECTや脳磁図とほぼ同程度の検出能があるが役割は相補的。
・焦点側は集積が低下する。
・側頭葉てんかん:焦点側の検出率は60ー90%、偽陰性が15%前後ある。
・側頭葉外てんかん:焦点部位の検出率<60%、他モダリティ対比が必要。
認知症診断におけるFDG-PET
・米国はADとFTDの鑑別診断に保険適用。日本ではまだ適用外である。
・ADにおけるFDG-PET所見はSPECTと同様。
・最初期は後部帯状回、楔前部の集積低下。続いて、下部頭頂葉外側皮質の集積低下。進行とともに、側頭葉外側部、内側部の集積低下。前頭葉の集積低下。
・後期まで相対的に保たれる部位としては、小脳、後頭葉、一次運動感覚野、線条体、視床が挙げられる。
代表的変性型認知疾患におけるFDG-PET所見
・DLB:側頭頭頂葉外側部皮質に加え後頭葉の集積低下
・FTD:前頭葉と側頭葉の集積低下
・PSP:前帯状回、前頭弁蓋部、中脳の集積低下。
・CBD:中心前回を含む局所大脳皮質と基底核の非対称性集積低下
アミロイドPETによる診断
・11C-PiB:アミロイドPETのゴールデンスタンダード。研究用のみに用いられる。
・集積の意義:皮質における老人斑の可視化。
・陰性所見:老人斑がないか極めて少ない→ADの可能性を事実上否定できる。
・陽性所見:老人斑が多数存在する=アミロイドがたまっている。→アミロイドがたまると、ADになるリスクは高いといえるが、全てADになるとも限らない、正常の場合もある。
・ADと診断される約10年以上前からアミロイドの蓄積が始まると考えられ、根本治療薬の対象となる可能性も想定されている。
▶画像の見方:
・陰性所見:皮質への集積は白質よりも少ない。
・陽性所見:皮質に白質を超える集積がある。(皮質と白質の輪郭は保たれるのが正常だが、たもたれなくなる=皮質にアミロイドがたまっていることを意味する)