2012年の年間PET検査数は60万件、うち検診は15%の10万件程度と推定される。検診の数はここ10年横ばいである。
どんな癌が発見されるか
・大腸癌・直腸癌が最多。続いて甲状腺癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌と続く。
・感度が高いものは甲状腺癌、肺癌、大腸癌・直腸癌、乳癌で、これらはPETでひっかかりやすいと言える。
・逆に感度が低いものは前立腺癌、胃癌が挙げられる。
PETがん検診の利点と問題点
利点
・1回の検査で全身スクリーニングができる。
・侵襲性が少ない。
・他の検診では発見されないstageⅠの早期のがんが見つかることがある。
・異常がなかった場合の受診者に喜ばれる。
問題点
・PETで見つからない・苦手ながんがある(偽陰性)。
・良性病変にも集積することがある(偽陽性。良悪性の鑑別には限界がある)。
・有効性に関するエビデンス(証拠)が不十分。
・被ばくの問題がある。周囲の人にも若干ある。
・保険適応外なので費用が高額である。
FDG-PETがん検診ガイドライン(2012)概要
・PET単独では偽陰性、偽陽性多くなるので、PETのみで診断しようとするのではなく、PET以外のエコー、CT、MRI、腫瘍マーカー、さらには上下部の内視鏡と併せた総合検診を奨める。
・胸部CTについては2012年10月に改訂された日本CT検診学会ガイドラインに順ずる。今後8mm以上のsolidにはPETをと改訂されるだろう。
・PET/CT装置の分解能には限界があり、5mm以下のものは検出されない。また5-10mmは見えないものが多く、1cm以上になって初めて描出される。ということを覚えておく必要がある。
PETがん検診の読影で注意すべきこと
・異常集積を見逃さない。SUV値が5以上ならば見落とすことはないが、それよりも低集積のものをいかに見逃さないかが重要。
・左右差に注意する、見落としやすいとされる生理的集積の高い臓器の周辺をくまなくチェックすることが重要。
・生理的集積、アーチファクトを知っておく。
・異常集積を見つけた場合はPET/CT融合像をチェックする。
・また遅延像が役立つことがある。特に乳腺と大腸の小さな集積の見極めに有用。
PETがん検診にともなう被ばくの問題
・30〜40歳以下では、がん早期発見による寿命延長よりも発癌による短縮の方が大きい。特にPET/CTでは被ばく多いので被ばくのリスクについては説明が必要。
・逆に、喫煙者などハイリスク集団に対しては検診がより有効と考えられる。
インフォームドコンセントすべきこと
・総合検診の推奨。
・PETがん検診の方法、特徴、メリット、デメリット、リスク。
・被ばくのリスク。
・異常が検出されなかった場合でも、偽陰性(腫瘍はあるがPETにはうつらなかった)の可能性。
・異常が集積された場合は、精密検査の必要性。
※乳腺では軽度の限局性集積の確認→精査すべき。
※大腸では遅延像による集積の変化を確認することが有用。
参考)FDG-PETがん検診ガイドライン(2012) ←閲覧できます。