「関節ねずみ」(Joint mouse)という疾患をご存知ですか?
この病気は、関節内に骨や軟骨のかけらが見られる病気で、浮遊するチョロチョロとした小さなかけらをねずみに例え、この病名がつきました。
関節ねずみは、別名「関節内浮遊体」(Joint loose body)ともいいます。
今回は、関節ねずみ(関節内浮遊体) について
- 原因
- 症状
- 診断
- 治療法
など、手術は必要となるのかどうかについても触れながら、手術経験者の声も含め解説したいと思います。
関節ねずみとは?
何らかの原因で砕けてしまった(小さな骨折)関節内の骨や軟骨のかけらが、関節内で浮遊する疾患です。
この骨や軟骨の小さなかけら(遊離体)が、関節面にひっかかることで症状を引き起こします。
関節というだけあって、膝・足首・肘など、関節のあるどの部位でも発生する可能性のある疾患です。
関節ねずみの原因は?
- 骨軟骨骨折・・・骨折
- 遊離性骨軟骨炎(離脱性骨軟骨炎)・・・炎症
- 変形性関節症・・・変形
- 滑膜性骨軟骨腫・・・腫瘍
などが原因となります。
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つまり、これらが原因となり遊離体が生じ、それが関節内にはまると症状が出るというわけです。
関節ねずみの症状は?
- 疼痛
- ロッキング(運動制限)
などが現れます。
この痛みは、膝軟骨を浮遊するかけらがひっかかることで、突然疼痛やロッキングが起こりますが、かけらが外れると症状は改善するのです。
また、滲出液が関節内にたまると、疼痛やロッキングのほか、腫れたように膨れることもあります。
患者自身は、何かが動く・・・といった違和感や触った感じでかけらがわかると訴える方も・・・。
関節ねずみの診断は?
- 問診(臨床症状)
- 触診
- X線撮影
- MRI検査
- 関節鏡検査
などを行い診断されます。
しかし、遊離体が軟骨片のみの場合、X線だけでは診断がつきません。
実際に、関節にひっかかった遊離体を関節鏡検査で確認できると一目瞭然です。
それでは実際の関節ねずみ(関節内遊離体)の画像を見てみましょう。症例 60歳代男性 右肘痛 変形性肘関節症
右肘レントゲンの画像です。
関節内に石灰化を認めており、関節ねずみ(関節内遊離体)と診断されました。
このCT画像の冠状断像です。
上腕骨、橈骨、尺骨以外に石灰化を2箇所認めています。
関節ねずみ(関節内遊離体)は2つあることがわかります。
また骨棘形成を認めており、変形肘関節症もあります。
こちらのCT画像を動画でチェックする。
関節ねずみの治療法は?手術は必要?
関節鏡視下手術を行い、遊離体を摘出しますが、かけらが大きい場合は、関節切開をして整復・固定します。
遊離体を摘出してしまえば、完治しますが、原因となる疾患を治療することも重要です。
しかし、中には手術をせずに保存療法をとる場合もあります。
保存療法となるのは、症状が軽度、遊離体が小さい場合に限ります。
また、手術をしないと選択するのは、原因も関係するのです。
中には、一度遊離体を取り除いても、また再発しやすい人がいるからです。
そうなると、何度も手術をしなければいけないことになり、部位にも負担となります。
スポーツをする人などにとっては、手術をした翌日からまた今まで通りの動きができるわけではなく、リハビリが必要になることもあるためです。
体験者の声
手術後、5ヶ月たちますが引っかかりはなくなったものの何もしなくてもまだ鈍痛があって、思ったように膝が曲がらないAさんの場合・・・
もともと、バレーでのジャンプの繰り返しと仕事での重い荷物の配達などで、膝に痛みはあったんです。
整骨院に行って電気をあてたり、アイシングしたりストレッチしたりで乗り切ってきたのですが、いよいよ痛みが強くなって、整形外科に行くと、ねずみが原因だということがわかりました。
私の場合は関節内の水分を栄養として、ねずみがかなり大きくなっていたのですぐに手術をして取り除こうということになりました。
お医者さんには、手術をしないとよくなることはない、といわれたんです。
膝の関節内のねずみを無事摘出し、スクリューみたいなものを使って膝の中をきれいにしてもらいました。
さぁこれで3ヶ月もすればバレーができるようになるでしょう、といわれていたのですが…。
5ヶ月たって引っかかりはなくなったものの、膝をきれいにしてもらう時にかかった圧が原因なのか、鈍痛が残ってしまっています。
またまだうまく膝が曲げられなくて、バレーには一応復帰したものの怖々やっているといった感じで…。
うまく付き合っていくしかないのかなぁと思っていますが、膝周りの筋肉をつけるべく筋トレをがんばっている状態です。
参考文献:
整形外科疾患ビジュアルブック P385
100%整形外科 国試マニュアル 改定第6版P91
骨・関節のMRI P126
最後に
関節ねずみについて、ポイントをまとめます。
- 何らかの原因で砕けてしまった関節内の骨や軟骨のかけらが、関節内で浮遊する疾患
- 関節に遊離体がひっかかることで、症状が現れる
- 骨折・炎症・変形・腫瘍などが原因となる
- 疼痛やロッキング(運動制限)といった症状が現れる
- 問診(臨床症状)・触診・X線撮影・MRI検査・関節鏡検査などを行い診断する
- 関節鏡視下手術で遊離体を摘出する
- 保存療法となることもある
スポーツ選手などには多い疾患で、野球選手が「手術はしないことにした」「手術に踏み切った」などというニュースをよく耳にします。
手術を受けると症状はなくなり改善するものの、再発する(遊離体が現れる)と、また治療を検討しなくてはならなくなるのが厄介な問題です。
手術をするしないの選択は、症状を見ながら主治医と相談するのがいいでしょう。