心臓CT(冠動脈CT)の画像診断

冠動脈CTを読影する前に知っておくべき事

冠動脈CTの適応
  • 症状がある人に適応あり。(運動負荷心電図で中等度。)
  • 検診ではやってはいけない。有病率が低いから。余計な心カテを増やす。
  • 高リスク群にも無症状ならば推奨されていない。

・冠動脈CTは内腔だけでなく、プラークを診断できる。(内腔を保ちながら外へ広がるのがpositive remodeling)

・冠動脈CTは陰性的中率が高い。つまりなければ否定できる。

・冠動脈CTの検査数は年々増加の一途である。普及によりCAGが減ることが予測されたが、冠動脈CTでひっかける症例も増えたので、CAGも増えている。

・冠動脈CTは被ばくが多いのでは?→やり方による。最近は冠動脈CTAはついに0.1mSv未満になった。冠動脈CTの方が普通の胸部などのCTよりも被ばくを少なくする事ができる。

読影する順番(一例)

step1 まずMIPを見る:石灰化の有無と狭窄の評価をする。
step2 次に3D(VR)を見る:石灰化がなければ狭窄の評価も可能
step3 次にCPRを見る。:最も重要。狭窄、程度、石灰化、プラーク、myocardial bridge
※CPRは偽狭窄を生じることがあるので注意。横断像でアーチファクトの有無をチェックする。心臓外病変の有無のチェックも忘れずに。

所見用紙に記載すべき内容

  • 撮影時の心拍(β-blocker使用の有無)
  • 良好な画質が得られているか。
  • 石灰化指数(カルシウムスコア)
  • 狭窄病変:部位/距離、狭窄の程度、プラークの性状(石灰化、positive remodelingの有無)
  • 冠動脈以外の心臓内所見/心臓外所見

冠動脈の狭窄の評価

・冠動脈の解剖には、AHA(American Heart Association)の分類の#1-15がある。

coronal artery anatomy1 coronal artery anatomy2

内腔のみを評価する。狭窄とアーチファクトの見極めが重要。

・冠動脈CTでは50%以上が有意狭窄
※CAGでは有意狭窄は75(70)%以上とする。(51-75%を75%と評価するので)。冠動脈CTとCAGでは同じ解像度で見れるわけではない。CAGの方がより細かく見える。特にModerate(中等度)の判断が難しい。軽度か重度くらいしかわからないということ。

  • 正常:プラーク、内腔狭窄ともに認めない。
  • 軽微:25%未満の狭窄を伴うプラーク
  • 軽度:25-49%の狭窄
  • 中等度:50-69%の狭窄
  • 重度:70-99%の狭窄
  • 閉塞

で評価する。

・どちらとも言えない微妙な所見であれば、負荷心筋血流検査などを積極的に勧める。

・#にあまりこだわらなくてもよい。なぜなら#2,3の境界、#7,8の境界は明確な基準がない。また#6,7をわけるfirst major septal branchの判断が難しいことがある。

SCCTガイドライン:冠動脈狭窄のグレード分類(0-5(閉塞))より

・CTによる診断能は、感度86-99%、特異度95-97%だけど、陽性的中率66-87%が低い。また、陰性的中率は98-100%と高く、なければないといってよい。陽性的中率が低い理由は、強い石灰化が診断能を下げてしまう。石灰化により狭窄率を過大評価(狭窄ないのに狭窄ありとしてしまう)してしまう。

・CTで狭窄部位の末梢に造影があっても、アンギオでは完全閉塞のことがある。これは側副血行により造影されている。

・アンギオでは、左主幹部病変はわかりにくい。CTでMPRを用いて評価する方がよい。主幹部病変や、3枝病変はバイパスの適応となる。

・狭窄しているように見えても収縮期のときのみの場合がある、その場合は拡張期も作ってもらう。

このような現象は、myocardial bridgeといい、筋肉の中に血管が潜っているときに起こりやすい。CTで24%、アンギオでは5%で認められる。収縮期のみで胸痛が起こることがある。βブロッカーが有効。

プラークの記載

  • 石灰化プラーク
  • 非石灰化プラーク
  • 混合型プラーク

と表現し、 それに「入口部の(ostial)」「分岐部の(branch)」「長い(long)」「ポジティブリモデリングを伴った(positive remodeling)」などの修飾語をつける。

・プラークを「非石灰化」と表現するのは、CT値が低くても必ずしも病理学的検査あるいは生化学検査と相関しないから。「ソフトプラーク」「リピッドリッチ」という表現より好ましい。

・可能ならば、潰瘍形成、解離・亀裂などのプラークの形態的特徴を記載する。



脆弱プラークとは

Vulnerable Plaque (脆弱プラーク)
  • 低いCT値(<30HU)の部分がある
  • Positive remodeling(正常径の1.1倍以上)
  • Spotty calcification(大きさ<3mm)    Motoyama S, et al. J Am Coll Cardiol 50: 319-326, 2007

positive remodeling:動脈硬化の初期において、血管内径を保持するように血管自体が外方へ代償性に拡大する現象。

Positive remodeling

positive remodeling1

low density plaque(< 30HU) : ただし全体の染まりの違いで異なってくるかなり不確かなもの。

low density plaque

spotty calcification: 長さ30mm以上、血管の輪切りで石灰化が90度以下。

spotty calc

Napkin-ring sign造影CTにて偏在性のやや高吸収→fibrous plaque=不安定プラークを示唆。

カルシウムスコア(Agatston score)とは

冠動脈の石灰化を定量評価する方法の一つであり、単純CTを用いる。

・つまり、カルシウムスコアは冠動脈疾患のリスク評価に使える。

・CT値130HU以上とその面積で算出され、一般的に400を超えれば冠動脈疾患の罹患率が高いとされる。

・石灰化のmax CT値よりfactor(1-4)が与えられる。石灰化の面積を計測してfactorと掛けて 石灰化スコア(Agaston score)が算出される。

CT値

CT値 重み
130-199 1
200-299 2
300-399 3
400以上 4
Agaston score=  石灰化の面積(m㎡) × Factor

・石灰化スコアはリスク層別化に用いられる。石灰化スコアが100未満の症例は予後が良好。スコアが100以上になるとスコアが増加するにつれて生命予後が不良となる。

石灰化スコアが81以上で心血管系事故リスクが10倍400以上で25倍と極めて高リスクになる。

冠動脈CTで認められるアーチファクト

Stairstep artifacts(Banding artifact)心拍動間で生じる動きが原因となるずれによるアーチファクト。冠状断がわかりやすい。冠動脈があたかも狭窄しているように見えてしまう。

Streak & beam hardening artifacts冠動脈の石灰化によるアーチファクト。低吸収になるのがbeam hadening artifactであり、冠動脈があたかも狭窄しているように見えてしまう。

Motion artifact右冠動脈の#3で起こしやすい。横断像でチェックする。冠動脈があたかも狭窄しているように見えてしまう。

冠動脈CTの最大の問題点

高度石灰化により評価が困難であり、診断能が低下(冠動脈CTを撮影しても病変を除外できなく、結局CAGによる確認が必要となる)すること。

・なので、著しい冠動脈石灰化が予想される患者でないこと(透析患者、高齢者など) が患者要件として求められる。

石灰化スコアが400(-600)を超えると、適切な診断ができなくなると考えて良い。

・まず単純CTを撮影してみて、この値を超えるようだと造影CTは中止してCAG(冠動脈造影)を勧めるのがよい。

・つまり、冠動脈CTの最もよい適応は若い、石灰化の少ない人で、 冠動脈疾患を否定したい時。高齢者の石灰化バリバリの人には向いていない検査である。

βブロッカーにより心拍数を抑えることが大事

▶︎なぜ心拍数を抑えるのがよいか?
①画像作成が容易、読影も容易、評価不能部位の減少、診断精度の向上のため。
※モーションアーチファクトは右冠動脈でしばしばおこる。
※心拍数が早いと画像を得たい拡張中期がなくなってしまう

②被ばくを低減できるため。(ECG dose modulationやProspective gating)

▶︎どうやって抑えるか。

【検査前日】
・検査前12時間はカフェイン製品を摂らない。

【検査当日】
・経口β遮断薬 (セロケン, 1錠)、検査1時間前 ・静注β遮断薬 (コアベータ)

・目標心拍数は?65bpm以下が目安。

 

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