胚細胞腫瘍の一般的知識
- 発症好発期は思春期から中年まで。 (思春期以前及び高齢者の発症は少ない。つまり、胚細胞腫瘍は生殖が盛んな時に生じる。)
- 例外として幼児期(特に生後2年以内)に卵黄嚢細胞腫瘍や奇形腫が生じる。
- 小児期以外の胚細胞腫は全て悪性である。 (成熟奇形腫は存在しない。)
- 卵黄嚢細胞腫ではAFPが、絨毛癌では h-CGβが腫瘍マーカーとなる。
- 単一組織型は約半数。そのうちほとんどがセミノーマ。逆にセミノーマ以外が単一で出る事はまずない。
- 非精上皮腫(non-seminoma)は精上皮腫(セミノーマ:seminoma)と比べ転移の頻度が高く、予後も不良である。
- セミノーマは化学療法および放射線療法の感受性が高い。
ですので、セミノーマ単独腫瘍かそれ以外の成分が含まれているかが非常に重要です。セミノーマ単独ですとstageⅠでもⅡでも化学療法が著効して、予後が良好です。
- 悪性胚細胞腫瘍は停留精巣との関連が強く示唆されている。また、一側に発生すると対側にも発生する可能性が高く、総患者の数%に両側精巣に発生する。
- 精巣萎縮、ムンプス精巣炎の既往や、精巣微石症が危険因子と考えられている。
画像に反映される組織学的特徴
- セミノーマ:被膜・隔壁構造、分葉状、内部均一
- 胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌:出血、壊死
- 奇形腫:嚢胞状、脂肪を伴うことはほとんどない。
seminomaの画像所見
- 超音波では類円形で均一な低エコーな結節病変として描出される。
- MRI T1WIで大部分が低信号、T2強調像では比較的均一な低信号域を示す。T2WIで低信号を示す帯状構想を認めることがあり、繊維血管間質を反映するとされる。
- 多結節であることがある。
- ドプラ超音波やダイナミックMRIでは血流信号や造影効果は軽度。
- 非セミノーマと比較して低いADC値。
症例 30歳代男性 右セミノーマ
右精巣に精巣腫瘤あり。
造影CTにて淡く造影効果あり。
T2WIにて低信号の内部に一部高信号あり。
手術の結果、セミノーマ(seminoma)と診断されました。
症例 30歳代男性 右セミノーマ
上の症例同様に、T2WIにて低信号の内部に一部高信号あり。
手術の結果、セミノーマ(seminoma)と診断されました。
症例 30歳代男性 左セミノーマ
こちらも同様に
T2WIにて低信号の内部に一部高信号あり。
手術の結果、セミノーマ(seminoma)と診断されました。
non-seminomaの画像所見
- 超音波でseminomaよりもややエコーが高く、低エコーと中間のエコーの混ざった不均一なエコーの結節病変として描出されることが多い。
- T1WIで不均一。T2WIで著しく不均一
- ドプラ超音波やダイナミックMRIでは、血流信号や造影効果は不均一で高度である。
- 奇形腫では嚢胞形成が見られる。
参考)
- ミッドサマーセミナー、2012年放射線学会秋季臨床大会 イーサイトヘルスケア社 松尾義朋先生
- 知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版 P389