ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例18

症例18

【症例】60歳代 男性
【主訴】血便
【身体所見】意識清明、BP 142/117、HR 67、RR 20、SpO2 97%(RA)、眼瞼結膜蒼白、四肢冷感あり、腹部:平坦、軟、心窩部・下腹部左〜正中に圧痛あり、反跳痛なし。
【既往歴】CIDP、腰部脊柱管狭窄、化膿性脊椎炎治療後、糖尿病、心不全、慢性腎臓病、脳出血
【データ】Hb 9.6、Cr 3.83、BUN 59.7、WBC 11000、CRP 0.01

画像はこちら

S状結腸から直腸を中心に腸管内に高吸収な血腫を疑う所見を認めています。

消化管出血を疑う所見です。

S状結腸に憩室と思われる構造が1箇所ありますが同部からの出血かは単純CTではわかりません。

この方はCr高値であることもあり、造影CTは撮影されませんでした。

今回のように単純CTのみで高吸収血腫を判断し、内視鏡へと繋げるシーンも臨床の現場では、割とあるかと思います。

診断:下部消化管出血(S状結腸ー直腸からの出血が疑わしい)

※消化器内科コンサルトにて緊急内視鏡となりました。

下部消化管内視鏡では、直腸内に多量の血性物を認めており、液面を形成していました。

また直腸に出血性の潰瘍を認めており、同部からの出血と同定。

止血されました。

内視鏡後の診断:下部消化管出血(出血性直腸潰瘍からの出血)

急性出血性直腸潰瘍
  • 無痛性の突然の大量血便で発症。
  • 脳血管障害、寝たきり状態、糖尿病などを有する高齢者に発症する。
  • 歯状線近傍に発生する。治療は内視鏡止血術。
  • 宿便性潰瘍とオーバーラップも多い。同一疾患と考える報告もあり。

※実はこの方、血便という主訴ですが、実際はズボンにまで血液が付着しているほど大量の血便でした。この点も出血性直腸潰瘍に合致しますね。

関連:下部消化管出血の鑑別診断と画像診断

その他所見:

  • ペースメーカー植込みあり(洞不全症候群(SSS)にて)
  • 胃内残渣あり。
  • 両側腎萎縮あり。
  • 両側輸精管の石灰化あり。
  • 冠状断像にてL5/Sに椎体終板の骨破壊像あり。既往の化膿性脊椎炎後の変化を疑う。

 

症例18の動画解説

CTでの血腫の同定方法

注意:動画内で言っている症例R=今回の症例18です。

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. 出血だったのですね。
    直腸管内の出血を壁肥厚だと
    とらえてしまいました。
    何か良くわからないものが
    腸管内のあると思ったのですが
    良くみると少し高吸収な感じで
    これを血腫ととらえなければいけなかったということですね。
    腸管内の出血像は初めて見ました。
    覚えておきます。
    SMVがSMAより少し小さく見えるのですが気のせいでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >良くみると少し高吸収な感じで
      これを血腫ととらえなければいけなかったということですね。
      腸管内の出血像は初めて見ました。

      おっしゃるとおりです。次に生かしてください。

      >SMVがSMAより少し小さく見えるのですが気のせいでしょうか?

      おっしゃるとおりですね!出血により循環血液量が減っていることが原因と考えられますね。

  2. 急性出血性直腸潰瘍もあまり聞かない病名ですね.
    いあさんと同じく私もSMV<SMAのように感じました.

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。頻度はそれほど多くないと思います。

      >私もSMV<smaのように感じました. おっしゃるとおりですね。典型的に小さくなっていますね。=”” <=”” p=””></smaのように感じました.>

  3. お世話になっています。

    大腸出血で明らかな原因は不明(内視鏡で精査)ということで、思い切って出血部位の推測にチャレンジしてみました。直腸やS状結腸に血腫が見られるためS状結腸出血か?、高濃度の液体貯留が脾弯曲付近まで認められるため下行結腸出血か?と考えました。
    結局、脾弯曲付近の下行結腸出血と推測しましたが、出血性直腸潰瘍ということことで間違えてしまいました。
    素直に、「血腫が目立つ直腸およびS状結腸からの出血が疑われる」とするべきでした。今日も学ぶべきことが多い症例でした。

    1. アウトプットありがとうございます。

      今回は出血部位を画像のみで同定するのは極めて困難だと思います。
      が、それでも探しに行く姿勢は大事ですね。

  4. まずは純粋に、
    「腸管内出血」を「明記」できたかどうか(僕はできませんでした( ̄▽ ̄;))
    が最初のハードルでしょうか。

    高齢・左半結腸・DM・血便から、僕のように、
    虚血性腸炎に走った人も少なくない(と願っています(^-^;)と思いますが、
    今回は、粘膜下層の肥厚は一応、「見られる」ということでいいですか?

    それとも、虚血性腸炎とは全然違う画像ですか( ̄▽ ̄;)?
    (先生の虚血性腸炎のページも再確認しましたが、似ているようにも見えます(^-^;)。

    あと、心臓はペースメーカーだったんですねぇ。
    胸からとられていればよくわかりますが、上腹部からだとよくわかりませんでした。
    確かに、ステントにしては変な感じだなと思っていたのですが、そういう可能性もあると覚えておきます(^^♪

    1. アウトプットありがとうございます。

      >今回は、粘膜下層の肥厚は一応、「見られる」ということでいいですか?

      単純なのではっきりしないですが、今回は粘膜下層はほとんど見られないと思います。

      見られるのは、

      結腸の拡張
      内部の液貯留
      出血
      粘膜の軽度肥厚

      ですね。

    2. >あと、心臓はペースメーカーだったんですねぇ。
      胸からとられていればよくわかりますが、上腹部からだとよくわかりませんでした。

      おっしゃるように装置そのものが映っていないのでちょっと戸惑いますね。

  5. S状結腸~直腸に出血がある+冠状断38/80でS状結腸内に腫瘤性病変が見えたので腫瘍からの出血と考えてしまいました、あれは憩室だったんですね。
    消化管出血疑いでも腎機能障害で造影できないケースは多々あるので、見る対象によってWLやWWをうまいこと調節するのは大事だなと、こういう症例を見ると実感します。
    どこかで「単純CTで出血や血腫を探す際はWLやWWを調節して『CT的肝腎コントラスト(=肝が白く、腎が黒く見える)』を付けると見やすい」というような話を聞いたことがあるのですが、ごろ~先生が単純CTで出血や血腫を検索する際にどのようにWLやWWを調節されているか教えて頂けるとありがたいです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >「単純CTで出血や血腫を探す際はWLやWWを調節して『CT的肝腎コントラスト(=肝が白く、腎が黒く見える)』を付けると見やすい」というような話を聞いたことがある

      その通りですね。
      単純CTで血腫を探す方法としては、

      ①CT値を測定する
      ②膀胱や胃液などの水濃度と比較する
      ③CT値を調整して視覚的に明瞭化させる

      という方法があります。

      今回おっしゃっているのは③の方法で、おっしゃるように、WWを肝臓もしくは脾臓を高吸収に(白く)、腎臓を低吸収に(黒く)させるように狭め、
      WWを40HU前後、WLを60HU前後に調整することで明瞭化させることができます。

      また動画解説したいと思います。

  6. こんばんは。いつもお世話になっております!
    今回は腸管内の高吸収から、血腫の存在を指摘することはできました!
    のですが、しかし…
    ①横行結腸や下降結腸、胃、さらには盲腸内の高吸収領域があることから、出血点はもっと口側に存在するのではないか、と考えててしまいました。胃内の高吸収は内服薬の影響だったのですね…(結腸内の高吸収もそうでしょうか?透析もやっていないようですし…)。以前ごろ〜先生から習ったのに完全に失念しており、勉強不足を実感しました。
    ②膵臓や肝臓、体幹の筋肉や腸腰筋が痩せているように思うのですが、栄養状態が悪いから、ということでよろしいでしょうか?胆嚢が収縮して肝内胆管もやや目立つことからもそう推測してみました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腸管内の高吸収から、血腫の存在を指摘することはできました!

      それはよかったです。

      >横行結腸や下降結腸、胃、さらには盲腸内の高吸収領域があること

      おっしゃるとおり、胃には残渣と内服薬がありますね。

      横行結腸や下行結腸は普通〜やや硬いと思われる糞便があります。これくらいの糞便はよく見る範囲ですので、
      TIPSの症例aの便の石灰化との違いをよく復習しておいてください。

      >膵臓や肝臓、体幹の筋肉や腸腰筋が痩せているように思うのですが、栄養状態が悪いから、ということでよろしいでしょうか?

      肝臓や膵臓も年齢を考えると正常範囲です。
      腸腰筋や臀部、大腿部の筋肉などは確かに痩せている様に見えますね。
      既往歴からも家に引きこもりがちなのかも知れません。活動性が低そうですね。

      >胆嚢が収縮して肝内胆管もやや目立つこと

      胆嚢が収縮しているのは食事を食べているからですね。胃内に残渣がありますね。
      肝内胆管の拡張は今回認めていません。
      見えているのは肝静脈と門脈ですね。

  7. 復習でしたが、また虚血性と誤診してしまいました・・・
    コメントを見る限りでは、虚血性と迷っている人は少なそうですね(-_-;)

    もう一度解説も見直しました。
    「無痛性」であることも鑑別のヒントになりそうですね☆

    1. 虚血性の場合は、左半結腸に粘膜下層の肥厚を認めるのが通常です。
      今回はそのような所見はありませんね。

  8. 似たような症例がつい最近あり 復習になりました.
    ありがとうございます.

    横断面 53/60 下行結腸内にある円形の軽度高吸収域はS状結腸のそれとはやや離れていますが出血でしょうか.

    ささぶねさんもご指摘している点ですが
    胃内の高吸収領域は内服薬ということでしょうか.

    1. アウトプットありがとうございます。

      >横断面 53/60 下行結腸内にある円形の軽度高吸収域はS状結腸のそれとはやや離れていますが出血でしょうか.

      そうですね。血腫だと考えます。

      >胃内の高吸収領域は内服薬ということでしょうか.

      です。

      いずれも動画内で言及しています。
      お時間あるときに見てみてください。

  9. 単純しか撮れない施設で働いています。
    CTで血腫を見つける方法、大変参考になります!

    1. アウトプットありがとうございます。

      参考になってよかったです(^^)

      >単純しか撮れない施設

      ほんと施設によりますね。
      私も常勤先は割と造影が多いですが、当直先はほとんど撮影されていません。

  10. お世話になっております
    S状結腸の65〜70にあるのは憩室でしょうか?憩室出血の可能性はないのでしょうか?

    1. すみません記載を途中までしか見ておりませんでした
      憩室出血かははっきりしないということですね

      1. アウトプットありがとうございます。

        >S状結腸の65〜70にあるのは憩室でしょうか?

        おっしゃるように憩室ですね。

        >憩室出血かははっきりしないということですね

        ダイナミックCTで早期相でまさにそこから出ているextravasationが確認できれば憩室出血と同定できますが、そうでない場合は「その可能性がある」とまでしか言えませんね。

  11. 素朴な疑問です。
    今回直腸潰瘍からの出血でしたが、S状結腸の方まで血腫が広がっていますが、消化管出血で口側の方に出血や血腫が逆行することもあるのでしょうか?(体位の影響ですか?)
    腸管内の血腫を見たらその口側に出血源があると思い、下行結腸などの憩室出血を考えてしまったのですが。。

    1. アウトプットありがとうございます。

      体位などの影響で逆行することはしばしばあります。
      注腸検査でも体位により容易にバリウムが口側に動きます。

      結腸〜直腸に出血点があることがわかればOKです。

  12. 胃内の高吸収部位を出血だとおもってしまいました。内服薬かどうかどういう点でみきわめているのでしょうか

    1. アウトプットありがとうございます。

      ダイナミックCTの早期相でextravasationとしてここまで高吸収にみえることはあるかもしれませんが、単純CTで出血はここまで高吸収になりません。
      おっしゃるように内服薬が疑われます。

  13. いつも勉強になる症例をありがとうございます。
    直腸〜S状結腸内に高吸収の部分があり、分布と症状から虚血性腸炎?と思いましたが、高吸収の部位が不整形だったのと、直腸がやたらと拡張していることに違和感を感じました。
    結果的に虚血性腸炎と誤診してしまいましたが、違和感は当たっていたんだな〜と思いました。
    単純CTでの血腫の見え方はとても勉強になりましたので、今後に生かしていきたいと思います。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >分布と症状から虚血性腸炎?と思いましたが、高吸収の部位が不整形だったのと、直腸がやたらと拡張していることに違和感を感じました。

      そうですね。下行結腸はほぼ正常なので、虚血性腸炎とすると違和感がありますね。
      頻度としては虚血性腸炎の方が圧倒的に多いのですが典型的でないばあい今回のような出血もあることを覚えておいてください。

    1. アウトプットありがとうございます。

      S状結腸は壁肥厚様にも見えるかもしれませんが、今回は壁肥厚はなさそうです。

  14. 直腸からSDJにかけてハウストラが消失し、ツルンとした腸管に見えました。
    血腫の高吸収を粘膜の肥厚と読み間違えてしまいまして、潰瘍性大腸炎ではないかと
    誤診しました。三層構造を保った壁肥厚と思いましたが、そうではないのですね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      単純CTですので分かりにくいかもしれませんが、今回は結腸や直腸に壁肥厚は認めていませんね。

  15. 胃腔内、回盲部、横行結腸の高吸収にまず目が行き、直腸の液体貯留も気になりました。下部消化管内の粘膜高吸収でリン吸着剤服用を推測でき、直腸での内容物が淡い高吸収も吸着剤の影響かなぁと思ってしまいました。それで、胃腔内、回盲部、横行結腸、直腸あたりを出血源とする消化管出血、っていう診断にしたのですが、Hb低下著名なほどの出血で胃からの出血をした場合、よく考えたら血液で胃のなかが液体貯留状態になってるはずですよね・・・と反省しました。ちょっと言い訳させてもらうと、血便の性状が黒色便かそうで無いか程度の情報は欲しかったなぁと思いました(苦笑

    1. アウトプットありがとうございます。

      >血便の性状が黒色便かそうで無いか程度の情報は欲しかったなぁと思いました(苦笑

      確かにそうですね(^_^;)

      胃腔内の高吸収は、内服薬ですね。

      また、結腸内は確かに高吸収ですが、通常の便でも説明可能な範囲かなと考えます。
      この方が透析をされているかは不明で、もちろんリン吸着剤の可能性もありますが腹部TIPSの症例1ほどではないですね。

      参考:腹部TIPS症例1
      https://imaging-diagnosis.com/view/p2GDdcVL