脳は様々な部位に分かれ、出血を起こした部位により起こる症状は違ってきます。
その中でも、後頭部に位置する小脳に出血が起こると、くも膜下出血に似た症状が起こると言われています。
しかし、実際どういう症状が起こるのか気になりますよね?
そこで今回は小脳出血について
- 症状
- 原因
- 診断、CT画像所見
- 治療法
- 後遺症
ということをご説明していきたいと思います。
小脳出血の場合、どんな症状が出る?
日中に突然症状が出ることが多いと言われています。
- 後頭部痛
- 突発するめまい
- 嘔吐
- 歩行障害
- 顔面神経麻痺
- 共同偏視(健側をにらむ)
以上のような症状が起こります。
突然の頭痛の中でも、激しい後頭部痛が特徴でもあり、この症状こそがくも膜下出血に似ていると言われています。
またその他の症状として、回転性のめまいや、反復する嘔吐も小脳出血の特徴でもあります。
めまいを起こす病気はたくさんあり、小脳出血は頻度が少ないですが、めまいが起こった時にこの病気も考慮する必要があります。
そして、症状が進行すると立っていられなくなり、歩行障害や顔面神経麻痺、出血がある側とは別な方向を向いてしまう共同編視が現れることがあります。
小脳出血はどうして起こる?原因は?
主に高血圧が原因です。
しかも、突然の高血圧でなく、高血圧を長年患ってるような既往歴のある人に多く、1日のうちで最も血圧が高くなる日中の活動時間帯に起こりやすいと言われています。
また、それ以外にも交通事故などの脳の外傷によっても起こると言われています。
小脳出血の診断は?CT画像所見は?
小脳出血の診断にはCT検査を行います。
MRIでも出血はわかりますが、いずれにせよこららの画像検査が診断には必要です。
小脳の中でも歯状核に小脳出血は起こりやすいと言われています。
歯状核の場所は下の画像を参照にしてください。
(MRIの画像です)
出血の有無以外に注意すべきポイント
小脳と脳幹の間には、第4脳室がありますので、血腫によってここが圧排されると閉塞性水頭症になることがあります。
そのため、水頭症の有無をチェックします。
また、同じく血腫により、脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア(小脳扁桃ヘルニア)、上行性テント切痕ヘルニア)を起こすことがありますので、これらの有無を画像でチェックします。
症例 70歳代 女性 頭部CT
右の小脳半球に高吸収域を認めており(白く見える)、小脳出血の所見です。
水頭症や脳ヘルニアは認めていませんでした。
小脳出血の治療法は?
血腫の大きさが3cm以上か以下か、それによって治療が異なります。
もちろん治療法以前にこの血腫の大きさによっても生存率が大きく変わるとも言われています。
- 血腫の大きさが3cm以下の場合→保存的療法
- 血腫の大きさが3cm以上→手術適応
となります。
保存的療法の場合
まずはこれ以上出血を起こさせないことが大切で、絶対安静となり、高血圧状態なため、血圧を下げ安定させることが大切です。
症例 80歳代 男性 頭部CT
左小脳半球に2cm大の高吸収域を認めています。
小脳出血を疑う所見です。
保存的に加療されました。半月後→2ヶ月後と血腫が吸収されている様子がわかります。
手術療法の場合
血腫を取り除く手術が行われますが、手術方法は開頭手術、内視鏡的血腫除去、吸引術などがあります。
ですが、これらの手術は救命を目的としているため命が第一優先で、後遺症までは防ぐことはできません。
ちなみに手術が適応となる高血圧性の出血には、
- 小脳出血
- 被殻出血
- 皮質下出血
であり、橋出血などの脳幹出血には原則的に手術適応はないとされています。
症例 70歳代 男性 頭部CT
右小脳半球に4cm大の出血を認めています。
サイズが大きく、手術により血腫が取り除かれました。