脳出血と言えば一番に多いのが被殻出血、視床出血と続きますが、脳出血の中でも重症とされるのが脳幹出血です。

別名「橋出血」とも言われ、脳幹部の橋にあたる部分が出血することが多いため、その名が付きました。

では、この脳幹出血(読み方は「のうかんしゅっけつ」英語表記で「Brainstem hemorrhage」)について

  • 症状
  • 原因
  • CT画像診断
  • 治療法
  • 後遺症
  • 看護

などをご説明したいと思います。

橋出血の「橋」って、脳のどこですか?

脳幹の真ん中の部分です。脳幹は上から中脳・橋・延髄に分かれていて、橋は呼吸や意識にも関わる大切な場所なんですよ。

頭部MRI(画像診断cafe正常例)で見る脳幹(中脳・橋・延髄)

先に結論:脳幹出血(橋出血)のCT

  • 脳幹出血の多くは橋(きょう)出血で、主に長年の高血圧が原因です。脳出血全体の約1割ですが、呼吸や意識をつかさどる場所のため、出血が多いと最も重症になります
  • 急な意識障害・手足のまひ・呼吸の異常や、瞳孔が針の先ほどに小さくなる(pinpoint pupil)などの目の異常が特徴です。縮瞳は、橋を通る瞳孔を広げる神経(交感神経)の通り道が傷つくために起こります
  • CTで橋の白い(高吸収)血腫として診断し、大きさ・脳室への穿破・水頭症を確認します。手術で血腫を取り除くことは難しく、血圧管理などの内科的治療が中心です

※突然の意識障害・手足のまひ・呼吸の異常があるときは、すぐに救急車を呼んでください。

脳幹出血とは?

脳幹で何らかの原因により出血が起こることを、脳幹出血といいます。

全体的な脳出血の中でも約10%を占め(Behrouz 2018)、出血量が多ければ最も重症で予後不良となることが多いものです。

その脳幹出血の中でも最も頻度が高いのが、橋で起こる橋出血です(脳幹出血の大部分を占めるため、脳幹出血の代表として扱われます)。

脳幹出血の場合現れる症状は?

脳幹出血はほとんどの場合、突然起こるといわれています。

  • 頭痛
  • 高熱
  • めまい
  • 意識障害
  • 呼吸障害
  • 目の異常:高度縮瞳(pinpoint pupil)・眼球の正中固定・両眼の下方沈下
  • 四肢麻痺
  • 嚥下障害

まず、突然の頭痛やめまいが起こることが多いといわれています。

そして、息苦しくなり意識を失い発作から数分後には呼吸が止まることもあります。

また、瞳孔が小さくなったり(pinpoint pupil)、黒目が動かなくなったり目の位置がおかしいという目の異常が現れることも多いです。

脳幹を直接損傷するため、命に関わることが多いのもこの脳幹出血(橋出血)です。

橋出血でなぜ瞳孔が小さくなる(縮瞳)?

瞳孔の大きさは、瞳孔を広げる交感神経と瞳孔を縮める副交感神経のバランスで決まります。

  • 交感神経の通り道は、視床下部から脳幹(橋)を通って下へ向かうため、橋出血で両側の通り道が傷つくと、瞳孔を広げる力がなくなります
  • 一方、瞳孔を縮める副交感神経(動眼神経)は橋より上の中脳から出るため保たれます

その結果、両側の瞳孔が針の先ほどに小さくなります(pinpoint pupil)。

左橋出血・右橋出血の症状の違い

橋の片側だけの小さな出血では、

  • 手足を動かす神経の通り道は橋より下で左右が交差するため、出血と反対側の手足のまひ・しびれが出ます(左橋出血なら右の手足、右橋出血なら左の手足)
  • 顔を動かす神経(顔面神経)や目を外に向ける神経(外転神経)は橋から出るため、出血と同じ側の顔のまひ・目の動きの異常が出ることがあります

このように顔と手足で左右が逆になるまひ(交代性片麻痺)は、脳幹の病変を疑う手がかりになります。

どうして脳幹出血が起こる?原因は?

原因は他の脳出血と同様です。

高血圧が原因といわれています。

しかも、急な血圧上昇ではなく、既往歴のある人に起こりやすいといわれていて、高血圧に糖尿病を合併している人も多くなっています。

またそれ以外では、アルコールやタバコの摂取過多も原因の1つに挙げられています。

脳幹出血(橋出血)のCT画像は?

では実際のCT画像を見てみましょう。

症例 70歳代 男性

橋の真ん中〜やや左寄りに高吸収域(白いところ)があります。

橋出血の状態です。

保存的に加療されました。

症例 70歳代男性 左上下肢脱力

頭部CTで橋に高吸収域(白い)を認めており、橋出血を疑う所見です。

保存的に加療され、2週間後のCT検査では、血腫は吸収されています。

症例 40歳代女性 意識障害

橋に広範な出血を認めています。

脳室内に穿破しており、側脳室下角の開大を認め、水頭症に陥っている事がわかります。CTでの血腫の広がりは予後と関連し、Chungらによる61例の分類では、生存率は片側被蓋型(小出血)94.1%、底部被蓋型26.1%、両側被蓋型14.3%、広範型7.1%でした。また血腫量(10mL超で2点、5〜10mLで1点)とGCSを組み合わせたスコアも、30日死亡の予測に用いられています。

 

脳幹出血の治療法は?

実はこの脳幹出血、脳出血の中でも死亡率が高く治療も困難なものなのです。原発性橋出血の死亡率は40〜50%と報告され、29例の検討では高血圧が90%と最多の危険因子で、血腫量4mL超や腹側の出血が予後不良と関連していました。

どうして治療が困難なのかというと、脳の中心である脳幹には様々な神経が行き渡っているため、下手に手を出すと様々な障害が出るどころか命の危険にもつながります。

なので、手術を行うことじたいが大変リスクの高いものなんですが、中には患者の年齢や血管状態を詳しく調べ脳室穿破による水頭症に対して脳室ドレナージ術を行うことや、施設によっては定位的血腫吸引術が試みられることもあります。

基本的には以下のような治療が行われます。

  • 血圧コントロール
  • 頭蓋内圧を下げる
  • 呼吸を助ける
  • 血流を保つ

基本的には高血圧によって起こったものなので、血圧コントロールが重要となります。

急激に下げるのではなく、徐々に下げ、その血圧をコントロールし保つことが再発予防ともなります。

また、頭蓋内圧を下げないと脳ヘルニアなど重篤な症状につながることもあります。

その他、その時の患者の状態に合わせた治療が行われます。

脳幹出血(橋出血)の予後と後遺症は?

橋出血1437例を含む20研究の系統的レビューでは、早期の死亡率は48.1%でした。予後を最もよく左右したのは来院時の意識レベルと血腫の大きさで、年齢や脳室穿破は一貫した予後因子ではありませんでした(Behrouz 2018)。

助かった場合には、手足のまひ、ろれつが回らない・飲み込みにくい、目の動きの異常・複視、ふらつきなどの後遺症が残ることがあり、重症では意識があっても目の動き以外ほとんど動けない閉じ込め症候群になることもあります。小さな片側の出血では、リハビリで日常生活に戻れることもあります。

脳幹出血(橋出血)の看護・観察項目

呼吸や意識の中枢に近いため、意識レベル、瞳孔(大きさ・左右差・対光反射)、呼吸の回数とリズム、血圧・体温(中枢性の高熱)、手足のまひ、飲み込み(誤嚥の予防)を繰り返し観察し、悪化があればすぐにCTで血腫の増大・水頭症を確認します。

関連記事:小脳出血の症状・原因とCT画像所見|水頭症・手術適応

参考文献

  1. Wessels T, Möller-Hartmann W, Noth J, et al. CT findings and clinical features as markers for patient outcome in primary pontine hemorrhage. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(2):257-260. PubMed
  2. Greenberg SM, Ziai WC, Cordonnier C, et al. 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2022;53(7):e282-e361. PubMed
  3. Xu C, He W, Yi T, et al. Robotic Frameless Stereotactic Aspiration with Thrombolysis for Primary Pontine Hemorrhage: A Therapeutic Evaluation of a Retrospective Cohort Study. J Neurol Surg A Cent Eur Neurosurg. 2025;86(2):111-119. PubMed
  4. Chung CS, Park CH. Primary pontine hemorrhage: a new CT classification. Neurology. 1992;42(4):830-4. PubMed
  5. Huang K, Ji Z, Sun L, et al. Development and Validation of a Grading Scale for Primary Pontine Hemorrhage. Stroke. 2017;48(1):63-69. PubMed
  6. Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018;3(2):101-109. PubMed

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