先に結論:頸部膿瘍(扁桃周囲膿瘍・咽後膿瘍など)のCT
- のどや首の膿のたまりは、扁桃炎・むし歯(歯性感染)・異物などから起こり、のどの強い痛み・飲み込めない・口が開かない・こもった声などが出ます
- 診断と広がりの評価には造影CTが必須で、縁が造影される液体のたまり(膿瘍)か、膿瘍になっていない蜂窩織炎かを区別し、ドレナージの必要性や経路を決めます
- 最も危険なのは、気道が狭くなることと、感染が咽後間隙・危険間隙を通って縦隔に広がる(降下性壊死性縦隔炎)ことで、命にかかわります
- 扁桃周囲膿瘍と咽後膿瘍の違い:扁桃周囲膿瘍は口蓋扁桃のまわり(多くは片側)にでき、思春期〜成人に多いのに対し、咽後膿瘍は咽頭の後ろ(咽頭後間隙)にでき、幼児に多く、縦隔へ広がる危険があります(下の比較表)
※のどの痛みで飲み込めない・口が開かない・息苦しいときは、すぐに受診してください。
頸部膿瘍
- 中咽頭では扁桃膿瘍、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍。他は、口腔底膿瘍、顎下間隙膿瘍、咀嚼筋間隙膿瘍。
- 原因は上気道感染、歯性感染、外傷性、異物、医原性、鰓裂嚢胞、瘻孔感染など。
- 糖尿病や免疫能低下など基礎疾患を有する場合とない場合もあり。(嫌気性菌感染など)
- 画像診断では、膿瘍か蜂窩織炎か、炎症波及の範囲、ドレナージの必要性・経路などを診断する。ただし、小児の深頸部感染症313例の検討では、CTで辺縁が造影される低吸収域(膿瘍を示唆)が42%にみられたが、そのうち抗菌薬治療を先行した例の63%は抗菌薬だけで治癒した。リング状造影があっても必ずしも全例で排膿が必要になるわけではなく、臨床像と合わせて判断する。
- 単純CTのみでは膿瘍の存在診断も含めて評価はしにくく、膿瘍腔のサイズや性状などの評価に造影CTは必須である。
- 危険間隙に炎症が波及すると縦隔まで連続する。
- 咽後膿瘍の鑑別:化膿性脊椎炎による椎周囲間隙への炎症波及と膿瘍形成、頸長筋腱炎・筋炎。
頸部膿瘍の種類
- 口蓋扁桃膿瘍(扁桃の中に限り存在)
- 扁桃周囲膿瘍
- 咽後膿瘍(咽頭後間隙にある)
- 舌扁桃膿瘍
扁桃周囲膿瘍
- 扁桃周囲腔とは、口蓋扁桃を取り囲む被膜と、覆う咽頭収縮筋、頬咽頭筋膜との間にある潜在的な間隙。
- ドイツの耳鼻科診療所の5,024例の検討では平均年齢39.4歳、女性49%と、成人にも多くみられます(Seidel 2025)。
- 起炎菌は、A群β溶血性レンサ球菌などのレンサ球菌と嫌気性菌が中心で、膿の多くに嫌気性菌が含まれます。デンマークの847例の検討では、Fusobacterium necrophorumが23%と最も多く、A群レンサ球菌が17%でした(Ehlers Klug 2009)。
- 多くは片側性だが両側の場合もある。
- 炎症の主座により、上極型と下極型に分かれる。
- 下極型では、炎症が波及して、急性喉頭蓋炎や咽後膿瘍などを合併することがあるので注意。口蓋扁桃の下極から生じた扁桃周囲膿瘍に急性喉頭蓋炎を合併した報告があります(Ito 2011)。
- 単純X線側面像で、thumb signと呼ばれる喉頭蓋の腫大や披裂喉頭蓋ひだの肥厚などがある。
症例
症例
症例 70歳代男性 急性喉頭蓋炎の合併

動画で学ぶ扁桃周囲膿瘍①
動画で学ぶ扁桃周囲膿瘍②
※膿瘍を作らずに広い蜂窩織炎を作ってくることがある。その場合は嫌気性菌の関与を考える。
咽後膿瘍
- 咽頭後間隙(咽後間隙)に発生した膿瘍。
- 幼児に多い。米国の小児入院データでは、咽後膿瘍・副咽頭間隙膿瘍の平均年齢は5.7歳で、男児に多くみられました(Garvey 2024)。
- 咽後間隙の化膿性リンパ節炎に併発したり、歯原性感染、咽頭感染、外傷などからの進展により発生する。
- 画像所見としては造影CTおよびMRIで咽後間隙に被膜の造影効果を伴う液体貯留として認める。一方、咽後間隙の液体貯留は扁桃炎・咽頭炎、石灰沈着性頸長筋腱炎、内頸静脈血栓症、放射線治療後でもみられ、それぞれ管理が異なるため膿瘍と区別することが重要である。
- 治療は外科的排膿術。
咽頭後間隙(咽後間隙)に浮腫や液体貯留を起こす疾患/鑑別
- 咽後膿瘍
- 咽頭後リンパ節炎
- 川崎病
- 石灰化頚長筋腱炎
- 内頸静脈血栓症
- 咽後間隙周囲炎症波及
- 頚椎の感染症
- 放射線治療後
など
(Bhatt AA.Emergency Radiology.2018;25:547-551)
危険間隙とは?
- 咽頭後壁と椎前筋の間に存在する。
- 咽頭後間隙(咽後間隙)は頭蓋底から上縦隔レベル(下端は文献により異なる)に存在し、危険間隙は頭蓋底から横隔膜まで連続して存在する。
- 咽頭後間隙(咽後間隙)と危険間隙の間には翼状筋膜が存在するが画像での識別は困難であり、両者は1つの腔として扱われることが多い。
- 危険間隙は、閉鎖間隙ではないので上下に炎症が広がり、縦隔炎(降下性壊死性縦隔炎)を引き起こすことがある。
扁桃周囲膿瘍と咽後膿瘍の違い(比較表)
| 扁桃周囲膿瘍 | 咽後膿瘍 | |
|---|---|---|
| できる場所 | 口蓋扁桃の被膜と咽頭収縮筋の間(扁桃周囲腔) | 咽頭後壁と椎前筋の間(咽頭後間隙・危険間隙) |
| 多い年齢 | 思春期〜成人(平均39.4歳:Seidel 2025) | 幼児(平均5.7歳:Garvey 2024) |
| CTでの見え方 | 扁桃の外側〜上極(または下極)に、縁が造影される低吸収域。多くは片側 | 咽頭後間隙に縁が造影される液体のたまり。気道の前方への圧排 |
| 注意する広がり | 傍咽頭間隙、下極型では喉頭蓋・咽頭後間隙 | 危険間隙を通って縦隔へ(降下性壊死性縦隔炎) |
頸部膿瘍のCTでよくある疑問(Q&A)
Q1. 咽後膿瘍とは?
A. 咽頭の後ろの咽頭後間隙に膿がたまった状態で、小児では咽頭後間隙のリンパ節の化膿から起こることが多く、成人では異物・外傷・感染の波及などで起こります。気道狭窄と縦隔への広がりに注意が必要です。
Q2. CTで膿瘍と蜂窩織炎は区別できる?
A. 縁が造影される低吸収域は膿瘍を示唆しますが、区別には限界があります。小児の深頸部感染80例の検討では、手術所見と比べたCTの正診率は63%、感度68%・特異度56%でした(Vural 2003)。症状や経過とあわせて判断します。
あわせて読みたい:扁桃周囲膿瘍とは?原因・症状(片側の喉の痛み・開口障害)と治療(切開・穿刺)、CT画像所見、頸部間隙と深頸筋膜(浅葉・中葉・深葉)とは?CT・MRI読影のための解剖と危険間隙
参考文献
- Capps EF, Kinsella JJ, Gupta M, et al. Emergency imaging assessment of acute, nontraumatic conditions of the head and neck. Radiographics. 2010;30(5):1335-52. PubMed
- Bhatt AA. Non-traumatic causes of fluid in the retropharyngeal space. Emerg Radiol. 2018;25(5):547-551. PubMed
- Hoang JK, Branstetter BF, Eastwood JD, et al. Multiplanar CT and MRI of collections in the retropharyngeal space: is it an abscess? AJR Am J Roentgenol. 2011;196(4):W426-32. PubMed
- Virbalas J, Friedman NR. Impact of neck CT on the management of suspected pediatric deep neck space infection. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2021;147:110782. PubMed
- Seidel DU, Bode S, Kostev K. Seasonal variation and demographic characteristics of acute tonsillitis and peritonsillar abscess in ENT practices in Germany (2019-2023). Eur Arch Otorhinolaryngol. 2025;282(1):317-326. PubMed
- Ehlers Klug T, Rusan M, Fuursted K, et al. Fusobacterium necrophorum: most prevalent pathogen in peritonsillar abscess in Denmark. Clin Infect Dis. 2009;49(10):1467-72. PubMed
- Ito K, Chitose H, Koganemaru M. Four cases of acute epiglottitis with a peritonsillar abscess. Auris Nasus Larynx. 2011;38(2):284-8. PubMed
- Garvey EA, Jamil TL, Levi JR, et al. Demographic disparities in children with retropharyngeal and parapharyngeal abscesses. Am J Otolaryngol. 2024;45(2):104140. PubMed
- Vural C, Gungor A, Comerci S. Accuracy of computerized tomography in deep neck infections in the pediatric population. Am J Otolaryngol. 2003;24(3):143-8. PubMed
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