頸部膿瘍
- 中咽頭では扁桃膿瘍、扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍。他は、口腔底膿瘍、顎下間隙膿瘍、咀嚼筋間隙膿瘍。
- 原因は上気道感染、歯性感染、外傷性、異物、医原性、鰓裂嚢胞、瘻孔感染など。
- 糖尿病や免疫能低下など基礎疾患を有する場合とない場合もあり。(嫌気性菌感染など)
- 画像診断では、膿瘍か蜂窩織炎か、炎症波及の範囲、ドレナージの必要性・経路などを診断する。
- 単純CTのみでは膿瘍の存在診断も含めて評価はしにくく、膿瘍腔のサイズや不朝などの評価に造影CTは必須である。
- 危険間隙に炎症が波及すると縦隔まで連続する。
- 咽後膿瘍の鑑別:化膿性脊椎炎による椎周囲間隙への炎症波及と膿瘍形成、頸長筋腱炎・筋炎。
頸部膿瘍の種類
- 口蓋扁桃膿瘍(扁桃の中に限り存在)
- 扁桃周囲膿瘍
- 咽後膿瘍(咽頭後間隙にある)
- 舌扁桃膿瘍
扁桃周囲膿瘍
- 扁桃周囲腔とは、口蓋扁桃を取り囲む被膜と、覆う咽頭収縮筋、頬咽頭筋膜との間にある潜在的な間隙。
- 小児-若年で男性にやや多い。
- 起炎菌として、インフルエンザ菌B型が最多。他、肺炎球菌やA群レンサ球菌がある。
- 多くは片側性だが両側の場合もある。
- 炎症の主座により、上極型と下極型に分かれる。多くは上極型。
- 下極型では、炎症が波及して、急性喉頭蓋円や咽後膿瘍などを合併することがあるので注意。
- 単純X線側面像で、thumb signと呼ばれる喉頭蓋の腫大や披裂喉頭蓋ひだの肥厚などがある。
症例
症例
症例 70歳代男性 急性喉頭蓋炎の合併
動画で学ぶ扁桃周囲膿瘍①
動画で学ぶ扁桃周囲膿瘍②
※膿瘍を作らずに広い蜂窩織炎を作ってくることがある。その場合は嫌気性を考える。
咽後膿瘍
- 咽頭後間隙(咽後間隙)に発生した膿瘍。
- 5歳以下に好発する。
- 咽後間隙の化膿性リンパ節炎に併発したり、歯原性感染、咽頭感染、外傷などからの進展により発生する。
- 画像所見としては造影CTおよびMRIで咽後間隙に被膜の造影効果を伴う液体貯留として認める。
- 治療は外科的排膿術。
咽頭後間隙(咽後間隙)に浮腫や液体貯留を起こす疾患/鑑別
- 咽後膿瘍
- 咽頭後リンパ節炎
- 川崎病
- 石灰化頚長筋腱炎
- 内頸静脈血栓症
- 咽後間隙周囲炎症波及
- 頚椎の感染症
- 放射線治療後
など
(Bhatt AA.Emergency Radiology.2018;25:547-551)
危険間隙とは?
- 咽頭後壁と椎前筋の間に存在する。
- 咽頭後間隙(咽後間隙)は頭蓋底からC7~Th2レベルに存在し、危険間隙は頭蓋底から横隔膜まで連続して存在する。
- 咽頭後間隙(咽後間隙)と危険間隙の間には翼状筋膜が存在するが画像での識別は困難であり、両者は1つの腔として扱われることが多い。
- 危険間隙は、閉鎖間隙ではないので上下に炎症が広がり、縦隔炎(降下性壊死性縦隔炎)を引き起こすことがある。