先に結論:副鼻腔の粘液嚢胞(粘液瘤・ムコセル)とは

  • 副鼻腔の出口がふさがり、中に粘液がたまって袋状にふくらんだものです。慢性副鼻腔炎や以前の副鼻腔の手術・外傷のあと何年もたってできることが多く、前頭洞・篩骨洞に多く見られます
  • ゆっくり大きくなって骨の壁を押し広げるため、目の近くでは目の腫れ・眼球の突出・物が二重に見える、奥の篩骨洞・蝶形骨洞では視力低下を起こすことがあります。感染すると粘液膿瘤になります
  • CTでは洞全体を満たして骨をふくらませる、造影されない袋、MRIでは中身の蛋白の濃さによりT1・T2の信号がさまざまに変わります。治療は内視鏡手術で袋を開放するのが一般的です
  • 貯留嚢胞(粘液貯留嚢胞)との違い:上顎洞の底によく見つかるドーム状の小さな嚢胞は貯留嚢胞で、まわりに空気が残り骨をふくらませません

※目の腫れや見え方の異常を伴うときは、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

粘液嚢胞・粘液瘤(mucocele)

  • 副鼻腔の鼻腔への自然口の炎症性閉塞(時に外傷後、腫瘍性が原因となる。)→粘膜で被覆された粘液を含む嚢胞
  • 一般に慢性副鼻腔炎の合併症として生じる。
  • 粘液瘤とも呼ばれる(感染したものは粘液膿瘤:pyocele)。
  • 経過は長く、数か月から年余に及ぶ。
  • 貯留嚢胞と異なり、罹患した洞内には残存する空気の層は認められない。完全に洞が充満されるのが特徴。
  • ただし、内部は粘液成分の貯留嚢胞が主体。
  • 多くは前頭洞、ついで篩骨洞(前頭篩骨洞)に発生する。上顎洞はそれより少ない。蝶形骨洞は最も少ない(32例中、前頭篩骨洞27例・上顎洞3例・蝶形骨洞2例:Hssaine 2016)。蝶形骨洞の粘液嚢胞は1施設10年間で12例とまれで、最も多い症状は頭痛(12例中9例)、視覚障害は5例にみられた(Razmpa 2011)。眼窩奥の頭痛や視覚障害を伴う嚢胞性病変では鑑別に挙げ、CT・MRIで評価する。
  • 骨壁の膨隆を認めるが、骨膜は保たれる。
  • 感染を合併すると粘液膿瘤(pyocele)になる。
  • 前頭洞、前部篩骨洞では、眼瞼腫脹、眼球突出、複視、眼痛などを引き起こす。前頭篩骨洞の病変が眼窩内側を圧排することが最も多い。
  • 後部篩骨洞や蝶形骨洞では眼窩尖端症候群の原因にもなる。視力低下を伴う粘液嚢胞の内視鏡手術207例のメタ解析では、71.5%で術後に視力が改善しており、視力障害が強くても可逆的なことが多いとされています(Zukin 2017)。診断後はなるべく早く手術することが勧められています。
  • 無症状で小さい場合は経過観察となることもあるが、症状がある場合は内視鏡下鼻副鼻腔手術で嚢胞を開放するのが一般的。

粘液嚢胞・粘液瘤の画像所見

▶CT、MR所見

  • CTでは造影効果のない膨張性嚢胞性腫瘤。類円形を呈する。
  • ときに骨圧迫性侵食を伴う。
  • MRIでは、T1/T2WIとも蛋白濃度の変化にともない様々な信号を呈する。造影すると辺縁部のみに増強効果を呈することがある。
  • 時に真菌性副鼻腔炎や洞粘膜肥厚のみの症例に類似。
症例 80歳代 男性

mucocele CT findings

CTで篩骨洞から前頭洞にかけて左優位に膨張性嚢胞性腫瘤あり。

mucocele MRI findings

MRIではT2強調像で淡い低信号、MRA元画像では高信号を示しています。

蛋白濃度の高い粘液嚢胞(粘液瘤)を疑う所見です。

MRIの信号のめやす:水っぽいうちはT1低信号・T2高信号、粘液が濃くなるとT1高信号、さらに濃縮するとT2でも低信号になります。蝶形骨洞の病変ではMRIで視神経との関係も評価します。

 症例 60歳代男性

mucocele

右の上顎洞から突出する膨張性嚢胞性腫瘤あり。

粘液嚢胞(粘液瘤)を疑う所見です。

粘液嚢胞・貯留嚢胞・術後性上顎嚢胞の違い

「上顎洞の嚢胞」と呼ばれるものには性質の違うものが含まれます。

粘液嚢胞(mucocele) 貯留嚢胞(粘液貯留嚢胞) 術後性上顎嚢胞
成り立ち 洞の出口がふさがり、洞全体に粘液がたまる 粘膜の小さな腺の出口がつまって粘膜の中にできる 上顎洞の根治手術の何年も後に生じる
多い場所 前頭洞・篩骨洞 上顎洞の底 手術をした上顎洞
CT 洞全体を満たし、骨をふくらませる。空気が残らない ドーム状の軟部影でまわりに空気が残る。骨はふくらまない 手術で変形した洞の中の膨張性の嚢胞

貯留嚢胞は、歯科のCT(コーンビームCT)などで偶然見つかることが多い病変です(Niknami 2018)。術後性上顎嚢胞は上顎洞の根治手術の晩期の合併症です(Fukumura 2025)。

副鼻腔の嚢胞でよくある疑問(Q&A)

Q. 「ムコシール」とは何ですか?

A. 英語のmucoceleをカタカナにしたもので、粘液嚢胞・粘液瘤と同じものです。

Q. 上顎洞に嚢胞があると言われました。放っておいてよいですか?

A. 空気が残る小さなドーム状の貯留嚢胞で無症状なら、経過観察が多いです。頬の腫れや痛み、目の症状があるときは耳鼻咽喉科で相談してください。

あわせて読みたい:サイレント副鼻腔症候群(Silent Sinus Syndrome: SSS)の画像所見

参考文献

  1. Zukin LM, Hink EM, Liao S, et al. Endoscopic Management of Paranasal Sinus Mucoceles: Meta-analysis of Visual Outcomes. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;157(5):760-766. PubMed
  2. Hssaine K, Belhoucha B, Rochdi Y, et al. [Paranasal sinus mucoceles: About 32 cases]. Rev Stomatol Chir Maxillofac Chir Orale. 2016;117(1):11-14. PubMed
  3. Bosmans F, Vanhoenacker F. Giant Frontal Paranasal Mucocele: Case Report and Review of the Literature. J Belg Soc Radiol. 2020;104(1):48. PubMed
  4. Chowdhury R, Aldajani A, Almhanedi H, et al. Paranasal Sinus Mucoceles With Intraorbital and Intracranial Involvement: A Case Series Analysis and Surgical Outcomes Assessment. Ann Otol Rhinol Laryngol. 2024;134(3):225-233. PubMed
  5. Razmpa E, Naghibzadeh B, Bagheri A, et al. The clinical manifestation, evaluation and surgical management of sphenoid sinus mucoceles: a case series and literature review. B-ENT. 2011;7(2):87-90. PubMed
  6. Niknami M, Mirmohammadi M, Pezeshki A. Evaluation of the Prevalence of Mucous Retention Pseudocyst and its Correlation with the Associated Risk Factors Using Panoramic Radiography and Cone-Beam Computed Tomography. J Dent (Tehran). 2018;15(2):123-129. PubMed
  7. Fukumura T, Takabayashi K, Akiyama K, et al. Detailed evaluation of the risk of infraorbital nerve injury in postoperative maxillary cyst surgery. Auris Nasus Larynx. 2025;52(3):229-233. PubMed

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