上咽頭の悪性腫瘍(総論)
- 癌が80-90%。
- 悪性リンパ腫が10-20%。
- 上咽頭は組織生検が比較的容易。
- 画像診断は病巣の進展度診断が主体。
- 頭蓋底に接するため、外科的切除が困難。
- 病期によらず放射線治療が第一選択となる。
上咽頭癌
- アジア、北アフリカに多く、欧米、日本では稀。
- 好発年齢は40-50歳代。(30歳以下も15-20%)
- 男女比は3:1。
- 危険因子はEVウイルス、HLA-A2、食物中のnitrosamin。
- 病理組織学では、扁平上皮癌、非角化癌、未分化癌の3型に分類されるが、未分化癌が多い。
- 臨床症状では頚部腫瘤が最も多い。これは高率に併存するリンパ節転移の症状。また、耳閉、伝音性難聴、脳神経症状により発見される場合もある。
- 治療は病期によらず放射線治療が第一選択。
上咽頭癌の病期分類
上咽頭癌T分類(UICC 2009)
- T1 上咽頭に限局 or 中咽頭 and/or 鼻腔進展
- T2 傍咽頭間隙に進展*
- T3 頭蓋底骨組織 and/or 副鼻腔に進展
- T4 頭蓋内進展 and/or 脳神経・下咽頭・眼窩 or 側頭下窩・咀嚼間隙に進展
*傍咽頭間隙への進展=後外側への進展
・T2aであった中咽頭・鼻腔進展がT1へ区分
・T2は傍咽頭間隙進展で統一された。
・上咽頭癌の骨浸潤は、主に2つ。頭蓋底への直接浸潤、後方へ進展して、頸椎に進展するパターン。
※特にT2が大事。
※Rosenmüller 窩への進展は傍咽頭間隙にも到達していないので、T1。
上咽頭癌T2
▶T2の傍咽頭間隙への進展形式は2通りある。
- Morgani洞を経て進展する。
- 咽頭頭底筋膜から直接進展する。
これを画像で見るには、咽頭頭底筋膜が見える場合はそれでよいが、見えない場合は、翼状突起の内板(口蓋帆張筋内側)と内頸動脈の外側壁に引いたラインよりも外側に腫瘍が進展していたら、傍咽頭間隙への進展ありとする。
まとめ:傍咽頭間隙への浸潤所見
- 傍咽頭間隙の脂肪織の消失。
- 口蓋帆挙筋の不明瞭化。
- 翼状突起の内板(口蓋帆張筋内側)と内頸動脈の外側壁に引いたラインよりも外側に腫瘍が進展。
つまり、このように口蓋帆張筋がきちんと追える場合は、傍咽頭間隙に進展なし=T1といえる。
一方で、口蓋帆張筋が不明瞭化しており、翼状突起の内板と内頸動脈の外側壁に引いたラインを腫瘍が超えており、T2と診断できる。
上咽頭癌T4
▶頭蓋内進展形式は3パターン
- 上方進展→破裂孔→海綿静脈洞
- 側方進展→内側翼突筋後面→卵円孔
- 前側方進展→翼口蓋窩→正円孔、下眼窩裂
神経周囲進展形式
・上咽頭癌の神経周囲進展はさまざまな経路から生じうる。
・側方進展において傍咽頭間隙から咀嚼筋間隙に進展した場合、卵円孔から頭蓋外に出た後に外側翼突筋後面に接して走行するV3
・前側方進展により翼口蓋窩に進展した場合、正円孔から出た後同領域に到達するV2に浸潤。・中枢側では正円孔を介して海綿静脈洞に腫瘤を形成。
・末梢側では上顎洞後壁に沿った分布を示す後上歯槽神経、下方では大・小口蓋孔に連続する大・小口蓋神経、前方では眼窩下神経に沿った進展。
・末梢側では上顎洞後壁に沿った分布を示す後上歯槽神経、下方では大・小口蓋孔に連続する大・小口蓋神経、前方では眼窩下神経に沿った進展。
上咽頭癌の進展範囲を読影するときのポイント(レポートに書くべきこと)
- 扁平上皮癌は粘膜より弱い増強効果を呈する腫瘤として描出される。
- 癌と内頸動脈との関係。
- 頭蓋底の骨への浸潤の有無。
- 頭蓋内進展の有無。(通常は破裂孔から海綿静脈洞経由が多い。特に三叉神経V3に沿った神経周囲進展も来しやすい)
- 傍咽頭間隙への進展の有無。
リンパ節転移評価(N因子)
- 初診時に70-90%で頚部リンパ節転移あり。
- 両側性リンパ節転移は50%。
- 咽頭後リンパ節→上深頚リンパ節(Ⅱ)の経路と、直接、上深頚リンパ節(Ⅱ)に転移する場合がある。
- リンパ節転移の頻度はT因子と相関しない。
- リンパ節転移陽性の症例は遠隔転移の高危険群である。
上咽頭癌におけるリンパ節転移(N分類UICC,2010)
- N0:所属リンパ節転移なし
- N1:鎖骨上窩より上方の片側頸部リンパ節転移または片側・両側の咽頭後リンパ節転移でいずれも6cm以下のもの。
- N2:鎖骨上窩より上方の両側頸部リンパ節転移でいずれも6cm以下のもの。
- N3a:6cmを超える径のリンパ節転移
- N3b:鎖骨上窩リンパ節転移