
先に結論:死後CTは「分かること」と「分からないこと」がある。解剖と補い合う検査
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| Aiとは | Autopsy imaging(オートプシー・イメージング)。死亡時の画像診断で、主に死後CTを指す |
| 分かりやすいもの | 骨折などの外傷、出血、ガスの貯留、大きな構造の異常 |
| 分かりにくいもの | 虚血性心疾患、肺塞栓、肺炎、腹腔内病変など |
| 解剖との関係 | どちらかが上というより補い合う。CTで見えて解剖では見えないものも、その逆もある |
| 読む上の注意 | 血液の沈下・血管内ガス・右心系の拡張など、死後の変化を病気と間違えない |
Ai(死亡時画像診断・死後CT)とは
Aiは Autopsy imaging(オートプシー・イメージング)の略で、亡くなった方に行う画像診断を指す言葉です。実際には死後CT(postmortem CT、PMCT)のことを指す場面が多く、MRIを使うこともあります。体を切らずに、全身を短時間で撮影できるのが特徴です。
解剖(剖検)は、体を開いて臓器を直接調べる検査です。一方、死後CTは画像で全身の構造を調べます。どちらにも得意・不得意があり、片方だけでは分からないことを補い合う関係にあります。死因や検査の説明は、担当の医師に相談してください。
| 解剖(剖検) | 死後CT(Ai) | |
|---|---|---|
| 方法 | 体を開いて臓器を直接観察・組織検査 | 体の外から全身を撮影 |
| 得意 | 臓器の色や質感・血栓・小さな病変・組織の診断 | 骨折・出血・ガス・位置のずれなど形の異常を全身で見る |
| 苦手 | 体内のガスは見つけられない | 小さな病変、血栓、心臓の病気(心筋梗塞など) |
死後CTで分かりやすい死因・分かりにくい死因
死後CTの診断能を解剖と比べた研究が、世界でいくつも行われています。結果は、病気の種類によって大きく違います。
| 分かりやすい | 分かりにくい |
|---|---|
| 外傷(骨折・臓器損傷)・出血・体内のガス | 虚血性心疾患(心筋梗塞など) |
| 骨の損傷(骨折) | 肺塞栓症 |
| (血管造影を併用すると)軟部組織・臓器の所見 | 肺炎、腹腔内の病変、小さな挫傷・血栓・新しい梗塞 |
英国の成人死亡182例で、CT・MRIの結果を解剖と比べた研究では、死因が大きく食い違った(大きな不一致)割合はCTで32%でした。死因を間違えた原因として最も多かったのは虚血性心疾患(27例)で、次いで腹腔内病変(16例)、肺炎(13例)、肺塞栓(11例)でした。一方、放射線科医が死因を確信できた例に限ると、不一致は16%と有意に低くなりました(Roberts 2012)。
院外心停止で亡くなった450例(病死336例、外因死114例)の検討では、死後CTだけで死因を診断できた、または示唆できたのは、病死(自然死)で30.3%、外因死で66.6%でした。病死では原因が心臓にあることが多く、CTには写りにくいためです(Nakaki 2024)。
文献を総合した報告もあります。成人の剖検例を調べた66研究(4,213人)のメタ解析では、骨折などの骨の損傷は死後CTとMRIを合わせた感度が0.97と高く、軟部組織・臓器の所見は血管造影を併用した死後CT(PMCTA)の感度が0.91でした。出血の感度は死後CTとMRIを合わせて0.88でしたが、95%信頼区間は0.35〜0.99と広く、研究間のばらつきも大きいものでした。死因そのものの感度はPMCTAで0.79(95%信頼区間0.52〜0.93)で、これも研究ごとのばらつきが大きいという結果でした(Ampanozi 2020)。
つまり、外傷や出血のように「形で分かる」死因は強く、心臓や肺の血管の病気のように「中の血流や小さな変化」が決め手になる死因は弱いというのが基本です。出血の見え方については、sentinel clot signも参考になります。
解剖と補い合う
英国で、病死と不審でない外因死の成人241例(解析は210例)に、冠動脈の標的造影を併用した死後CTを行い、その後に解剖を行った研究があります。大きな不一致の頻度に、死後CTと解剖で有意な差はありませんでした(p=0.65)。ただし、肺血栓塞栓症の診断は解剖のほうが優れていました。著者らは、多くの突然の病死では侵襲的な解剖を避けられる可能性があるとしつつ、診断の基準としては死後CTと解剖の両方を含めるべきだと結論しています(Rutty 2017)。
解剖で分からず、死後CTだけで分かるものもあります。体内のガス(血管内ガスなど)は、解剖では見つけられないため、画像で見えた所見は病理医に伝えることが大切とされています(Ishida 2015)。逆に、腹部の死後CTと解剖を比べた研究では、小さな挫傷・血管の血栓・新しい梗塞巣・X線を通す異物が、CTで見逃されやすい所見として挙げられています(Charlier 2012)。
死後変化を病気と間違えない
亡くなった直後から、体には独特の変化が始まります。死後CTでは、これを病気と間違えないことが読影の大きなテーマです(Levy 2010)。
| 死後の変化 | CTでの見え方 | 間違えやすいもの |
|---|---|---|
| 血液の沈下(血液就下、hypostasis) | 血液が重力で背側に沈み、心臓・大血管に液面(ニボー)ができる。背側の血液は濃くなり、ヘマトクリットが80%に達することもある(Ishida 2015) | 大動脈解離、血栓、出血 |
| 肺の背側の濃度上昇 | 水平な境界をもち、左右対称なことが多い | 肺炎・肺水腫 |
| 血管内・臓器内のガス | 心臓、血管、肝臓の血管にガスが見える。腐敗や心肺蘇生が原因となる | 空気塞栓、消化管壁内気腫 |
| 右心系の拡張 | うっ血で右心が大きく見える | 右心不全・心拡大 |
| 脳の変化 | 脳溝・脳室が狭くなり、灰白質と白質の区別が薄れる | 脳浮腫、虚血 |
| 体液の貯留 | 腹腔などに漏れ出す液体(死後の漏出液) | 腹腔内出血 |
血液の沈下(血液就下)
亡くなると心臓が止まり、血液は重力で背側に沈みます。赤血球が下に溜まり、血管や心臓の中に液面(fluid-fluid level)ができて、背側ほど高吸収になります(Levy 2010、Ishida 2015)。これは正常な死後変化ですが、本物の血栓との見分けが問題になります。血栓は液面をつくらず、動かない高吸収の鋳型として血管をふさぐように見えるとされます。ただし遺体の姿勢が変わっていると、この基準は使えません(Ishida 2015)。大動脈の壁が厚く・濃く見えることも死後の変化で、大動脈解離と紛らわしいことがあります(Ishida 2015)。生前のCTでの解離の見間違いは大動脈解離に見えるものでまとめています。
肺の背側が白い:血液就下か、肺炎か
肺でも血液は背側に溜まり、水平に近い境界をもつ高吸収として写ります。左右対称のことが多いのが特徴です。一方、左右非対称で区域状の濃度上昇は病的な所見で、生前のCTと同じように診断します(Ishida 2015)。胸水と血胸の見分けは血胸の読み方が参考になります。
症例 73歳男性 肺の死後変化と肺炎

引用:Ishida M, et al. Korean J Radiol. 2015;16(4):798-809 (Figure 5)。CC BY-NC 3.0、PubMed
画像Aでは、上葉の背側に水平な境界をもつ濃度上昇(矢印)があり、死後の血液就下によるものと考えられています。画像Bでは、右下葉に左右非対称で区域状の濃度上昇(矢印)があり、解剖で肺炎と確認されました(死亡後約16時間48分のCT)。C・Dは解剖後の顕微鏡像で、AとBに対応してうっ血(C)と肺炎の細胞浸潤(D)が確認されています。
血管内ガス:腐敗か、心肺蘇生か
死後CTでは、心臓や血管、肝臓などにガスが見えることがよくあります。原因としては腐敗(死後24〜48時間ほどで腸内細菌が産生)と心肺蘇生が考えられています(Ishida 2015)。腐敗のガスは、血管内から始まり、全身の臓器・軟部組織へ広がります(Levy 2010)。腐敗していない遺体73例の検討では、外傷例の98%、外傷のない例の80%でガスが見られました。外傷では開放創や血管の損傷に伴うことが多いものの、腐敗によるガスと外傷によるガスを画像だけで区別するのは難しいとされます(Gebhart 2012)。腹部では、腐敗ガスを空気塞栓や腸管壁内気腫と誤る例が挙げられています(Charlier 2012)。
症例 65歳男性 全身の血管内・臓器内ガス

引用:Ishida M, et al. Korean J Radiol. 2015;16(4):798-809 (Figure 7)。CC BY-NC 3.0、PubMed
右心房・右心室の内腔(A)、肝臓内(B)、左大腿動脈・静脈(C)にガスが見えます(死亡後約12時間20分のCT)。この症例では蘇生処置は行われていませんでした。
心臓が大きく見える:右心系の拡張
右心系(右房・右室)の拡張は、死後CTでよく見られる正常な変化で、血液のうっ血によるものです。そのため、右心不全を死因と診断するのは困難です。ただ、通常の死後変化より右心の拡張が目立ち、肺動脈の拡張や肺水腫を伴っていた場合に、解剖で肺静脈閉塞症と分かった例も報告されています(Ishida 2015)。
読むときのチェックリスト
- 亡くなってから撮影までの時間、遺体の姿勢、蘇生処置の有無を確かめる
- 液面・左右対称・背側優位の高吸収は、まず血液就下を考える
- 左右非対称・区域状・円形に近い所見は、病的な所見として読む
- 血管内ガスは、腐敗・蘇生・外傷のどれかを、経過と分布から考える
- 「死後変化だろう」と決めつけず、近くの線状・不整な高吸収に注意する(隣に出血が隠れていた例がある)
- 生前の病歴・薬・検査データと合わせて、全体で解釈する
最初は死後の血液就下と考えた高吸収が、よく見ると脳の表面に沿う線状の高吸収で、解剖でくも膜下出血と確認された例も報告されています(Ishida 2015)。画像だけでなく、経過全体と合わせて考えることが基本です。
よくある疑問(Q&A)
Q. 死後CTで、死因はいつも分かりますか?
A. 分かる場合も分からない場合もあります。外傷や出血は分かりやすい一方、虚血性心疾患・肺塞栓などは見逃されやすいと報告されています(Roberts 2012)。院外心停止の病死では、死後CTだけで診断できた、または示唆できたのは30.3%でした(Nakaki 2024)。
Q. 死後CTがあれば、解剖は不要ですか?
A. 多くの突然の病死では解剖を避けられる可能性が示されていますが、肺血栓塞栓症は解剖のほうが診断に優れており、診断の基準としては死後CTと解剖の両方を含めるべきだとされています(Rutty 2017)。
Q. 死後CTで血管内にガスがあれば、空気塞栓ですか?
A. そうとは限りません。腐敗や心肺蘇生でも血管内にガスが見えます(Ishida 2015)。空気塞栓と診断するには、経過や分布を合わせて考えます。
Q. 肺の背中側が白く写っているのは、肺炎ですか?
A. 水平な境界をもち、左右対称な濃度上昇は血液就下で説明できることが多いです。左右非対称で区域状の所見は病的なものとして評価します(Ishida 2015)。
参考文献
- Roberts IS, Benamore RE, Benbow EW, et al. Post-mortem imaging as an alternative to autopsy in the diagnosis of adult deaths: a validation study. Lancet. 2012;379(9811):136-42. PubMed
- Rutty GN, Morgan B, Robinson C, et al. Diagnostic accuracy of post-mortem CT with targeted coronary angiography versus autopsy for coroner-requested post-mortem investigations: a prospective, masked, comparison study. Lancet. 2017;390(10090):145-154. PubMed
- Ampanozi G, Halbheer D, Ebert LC, et al. Postmortem imaging findings and cause of death determination compared with autopsy: a systematic review of diagnostic test accuracy and meta-analysis. Int J Legal Med. 2020;134(1):321-337. PubMed
- Nakaki Y, Fukumoto W, Higashibori H, et al. Performance of postmortem CT in the diagnosis of natural death from out-of-hospital cardiac arrest. Jpn J Radiol. 2024;42(8):825-831. PubMed
- Ishida M, Gonoi W, Okuma H, et al. Common Postmortem Computed Tomography Findings Following Atraumatic Death: Differentiation between Normal Postmortem Changes and Pathologic Lesions. Korean J Radiol. 2015;16(4):798-809. PubMed
- Levy AD, Harcke HT, Mallak CT. Postmortem imaging: MDCT features of postmortem change and decomposition. Am J Forensic Med Pathol. 2010;31(1):12-7. PubMed
- Charlier P, Carlier R, Roffi F, et al. Postmortem abdominal CT: assessing normal cadaveric modifications and pathological processes. Eur J Radiol. 2012;81(4):639-47. PubMed
- Gebhart FT, Brogdon BG, Zech WD, et al. Gas at postmortem computed tomography–an evaluation of 73 non-putrefied trauma and non-trauma cases. Forensic Sci Int. 2012;222(1-3):162-9. PubMed
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