PACSとDICOM 画像の保存・共有とCDの見方

他の病院で撮ったCTやMRIの画像をCDでもらいました。PACSやDICOMという言葉も聞きます。どんな仕組みで、CDはどう見ればいいのでしょうか?
DICOM(ダイコム)は医用画像の共通の規格、PACS(パックス)はその画像を保管して配る仕組みです。CDには画像のデータと見るためのソフトが入っていることが多く、紹介先の病院に持っていけば、取り込んで比較してもらえます。仕組みと注意点を整理します。

先に結論:DICOMは「画像と情報の共通ルール」、PACSは「画像の保管・配信の仕組み」。CDは、その画像を他院へ運ぶ入れ物

項目 ポイント
DICOMとは 医用画像と付帯情報(患者情報・撮影条件など)の形式と通信を定めた共通規格。メーカーの違う装置同士をつなぐための取り決め
PACSとは CT・MRI・X線などの装置から届いた画像を保管し、診察室や読影室のモニターへ配信するシステム
CDの中身 DICOM形式の画像データ、画像を見るビューア、目次のファイルが入っていることが多い。構成は施設で異なる
他院へ持参 前回の画像と比べることで診断の助けになる。取り込みに時間がかかることがあるので、早めに渡す
個人情報 画像のデータには氏名やIDが入っている。匿名化は設定しだいで漏れることがあり、公開の場には載せない

DICOMとは:医用画像の共通ルール

DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)は、特定のメーカーに依存しない、医用画像と関連情報のやり取りの規格です。画像の形式、ファイルの構造、通信の手順を定めています(Bidgood 1997)。CTやMRIの装置、画像を保存するサーバー、読影用の端末が別々のメーカーでも、DICOMに沿っていれば画像をやり取りできます。

DICOMが扱う範囲は、次の5つの領域にまとめられています(Bidgood 1997)。

領域 内容
ネットワークでの画像管理 装置・サーバー・端末の間で画像を送る、探す、取り出す
画像の読影の管理 読影の依頼や結果の受け渡し
印刷の管理 フィルムなどへの出力
検査手順の管理 検査の予約や進行などの情報
記録媒体での保管の管理 CDなどへ画像を書き出して持ち運ぶ

(Bidgood 1997)

この最後の領域が、後で出てくる「CDで画像をもらう」場面に当たります。また、2つの機器がつながるかどうかは、各機器が出している「適合性宣言書(Conformance Statement)」で確認できる仕組みになっています(Bidgood 1997)。

DICOMファイルの中身

医用画像のファイルの基本は、画素のデータ(画像そのもの)と、メタデータ(画像に付く情報)です(Larobina 2014)。メタデータには、患者名、ID、生年月日、検査日、撮影した装置や条件などが入ります。画像だけがあるふつうの写真(JPEGなど)と違い、「誰の、いつの、どの検査か」が一体になっています。

薄く撮影したCTのデータがあれば、あとから断面を作り直すこともできます。その見方はMPR・MIP・VRの違いで解説しています。装置ごとの画像の成り立ちは画像診断機器の原理とMRIアーチファクトまとめも参考になります。

PACSとは:画像の保管と配信の仕組み

PACS(Picture Archiving and Communication System、医用画像保管通信システム)は、撮影装置から届いた画像を保管し、必要な場所のモニターへ送る仕組みです。フィルムを袋に入れて運ぶ代わりに、ネットワークで画像を届けます。

構成要素 役割
モダリティ(撮影装置) CT、MRI、X線、超音波、核医学、マンモグラフィーなどで画像を作る
RIS(放射線情報システム) 検査の依頼、予約、患者情報、結果の管理
PACS 画像の保管と管理
ビューア(表示端末) 診察室や読影室のモニターで画像を表示する

(Alhasan 2025の図の構成に基づく)

PACSは便利な反面、ネットワークにつながるため、安全対策も欠かせません。PACSの安全性に関する総説では、PACSがインターネットから直接アクセスできる状態になっているなどの事故を防ぐため、病院全体の対策とPACS特有の対策を合わせて行う必要があるとされます。PACS特有の対策には、画像の匿名化、通信の安全化、DICOMのヘッダの暗号化、電子署名などがあります(Eichelberg 2020)。

遠隔画像診断で画像が届く仕組み(一般論)

遠隔画像診断では、撮影した施設と読影する場所が離れています。仕組みの大筋は次のとおりです。具体的な構成は施設や事業者によって異なります。

段階 内容
1.撮影 施設の装置でCTやMRIなどを撮影する
2.保管 施設のPACSに画像が保存され、検査の依頼情報とひも付けられる
3.送る 暗号化された通信(VPNなど)や、クラウド上の保管場所を通じて、読影する側へ画像を送る
4.読影 読影医が、割り当てられた検査の一覧から選び、診断用のモニターで画像を表示する
5.報告 レポートを作成して依頼元へ返す。緊急の所見は電話などで直接伝える

在宅読影の設備を整理した総説は、この流れを「撮影施設(装置・RIS・PACS)」「遠隔読影の基盤(安全な通信、PACSまたはクラウド保管、検査リストの管理、レポート作成、連絡)」「読影する環境」「品質管理」の4つの区画で示しています。近年はクラウド型のPACSも登場しています(Alhasan 2025)。

図 遠隔読影の構成(総説の図)

遠隔読影の構成図 撮影施設・PACS・クラウド・読影環境
引用:Alhasan MS, Alhasan AS. Insights Imaging 2025;16:198(Figure 1)、CC BY 4.0

左に撮影施設(撮影装置、RIS、施設のPACS、読影室、依頼した医師)、中央に遠隔読影の基盤(安全な通信、PACSやクラウドの保管場所、検査リストの管理、レポート作成、連絡)、右に読影する環境と品質管理が描かれた構成図です。

CDで画像をもらったとき

他の病院に紹介されるときなどは、画像をCDなどに書き出して渡されることがあります。米国の大学病院の報告では、院外から届く検査の大半がCDで届いており、PACSへの取り込みと院内の検査番号との紐付けに人手がかかっていました(Elahi 2020)。

CDに入っていることが多いもの 役割
DICOM形式の画像データ CT・MRIなどの元の画像。診断に使うデータ
ビューア(閲覧ソフト) パソコンで画像を見るためのソフト。自動で起動するものもある
目次のファイル(DICOMDIR) どの検査・どのシリーズがあるかの一覧
レポート(別紙) 画像とは別に、紙やファイルで添えられることがある

構成は施設や作成ソフトで異なります。ここでは一般的な例として示しました。

受け取ったときの手順

  1. まず受け取った病院で、何を撮った画像か、レポートは付いているかを確認します。
  2. 紹介先の病院へ、診察の日より前に渡せるなら早めに渡します。取り込みには時間がかかることがあります。
  3. 自宅のパソコンで見る場合は、CDの案内に従ってビューアを起動します。パソコンの種類によっては動かないことがあります。
  4. 読み込めないときは、CDを作った病院に問い合わせます。

ビューアを開くと、次のような言葉が出てきます。

言葉 意味の目安
スタディ(検査) 1回の検査のまとまり。例:ある日の胸部と腹部の造影CT
シリーズ 検査の中の撮影のまとまり。例:造影前、造影後、断面の向きや厚みの違い
画像(スライス) 1枚ずつの断面。シリーズの中で順にめくって見る

医療者が受け取る側では、取り込んだあとに患者名・検査日・シリーズの数がそろっているかを確認します。依頼された検査が、すべて入っているかを見るためです。取り込んだ画像は、診断のために元の検査と並べて見ることになります。

画像は、検査の種類(シリーズ)ごとに、断面を順にめくって見ます。ただし診断は医師の読影と合わせて行うものです。気になる症状があれば、画像だけで判断せずに医療機関で相談してください。

なぜ他院の画像を持っていくのか

前の画像と見比べる比較読影では、変化があるかないかが診断の大きな手がかりになります(詳しくは比較読影のコツ)。マンモグラフィーの検診で、前回の画像を取り寄せる日数を調べた研究があります。FAXで依頼して郵送(フィルムやCD)を待つ方法では、依頼から到着まで平均6.08日でした。クラウドで受け渡す方法では平均3.16日で、2.92日短くなりました(各30件、Morgan 2017)。画像を渡す手段によって、比較に必要な前回画像が届くまでの日数が変わるということです。

匿名化と個人情報:画像のデータには名前が入っている

DICOMのデータは、ヘッダに氏名やIDが入っています。さらに、画像の画素そのものに文字が焼き込まれていることもあり、匿名化を難しくしています(Vcelak 2019)。症例を学会や教育、研究に使うときは、これらを取り除く匿名化が必要です。

個人情報が残りやすい場所 例
DICOMのヘッダ 氏名、ID、生年月日、検査日、施設名など
画像の中の文字 画像に焼き込まれた名前や日付
ファイル名・フォルダ名 書き出した際の名前に氏名が入ることがある
付属のレポート 文書の中の氏名や記載

無料の匿名化ツール10種類を調べた研究では、個人を特定しうる50項目を消すことをめざしましたが、初期設定のままで全部消せたのは1つだけでした。設定を調整して全部消せたのは4つで、適切に匿名化できたのは5つにとどまりました。研究者は、特に初期設定のまま使うと個人情報が漏れる危険があるので、注意して使うよう述べています(Aryanto 2015)。

画像を公開の場に載せるときは、ツールの結果を目で確認することが大切です。患者さん自身が受け取ったCDも、氏名などの個人情報を含みます。SNSや公開の場所へ載せないようにしてください。

よくある疑問(Q&A)

Q1.DICOMとふつうの画像ファイル(JPEG)は何が違いますか?

DICOMは画素のデータと、患者情報・検査情報などのメタデータをひとつにしたものです(Larobina 2014)。JPEGは画像を見るための形式で、検査の情報を含みません。診断には元のデータが使われます。

Q2.CDが読み込めないときは?

CDを作った病院に問い合わせて、再作成やビューアの案内を受けてください。診察日が近いときは、紹介先にもその旨を伝えておくと準備しやすくなります。

Q3.画像を画面ごとスマートフォンで撮って渡してもいいですか?

画面を撮影した写真は、元のデータと同じ情報にはなりません。画像の状態や明るさも変わるため、診断には元のデータを渡すのが基本です。

Q4.CDではなくクラウドで画像を共有できますか?

施設によっては可能です。クラウドで受け渡すことで、マンモグラフィーの前回画像の入手日数が短くなった報告もあります(Morgan 2017)。ただし対応は施設ごとに違うので、病院に確認してください。

参考文献

  1. Bidgood WD Jr, Horii SC, Prior FW, et al. Understanding and using DICOM, the data interchange standard for biomedical imaging. J Am Med Inform Assoc. 1997;4(3):199-212. PubMed
  2. Larobina M, Murino L. Medical image file formats. J Digit Imaging. 2014;27(2):200-6. PubMed
  3. Alhasan MS, Alhasan AS. Technical requirements and optimization strategies for home-based teleradiology workstations: a review article. Insights Imaging. 2025;16:198. PubMed
  4. Eichelberg M, Kleber K, Kämmerer M. Cybersecurity in PACS and Medical Imaging: an Overview. J Digit Imaging. 2020;33(6):1527-1542. PubMed
  5. Elahi A, Reid D, Redfern RO, et al. Automating Import and Reconciliation of Outside Examinations Submitted to an Academic Radiology Department. J Digit Imaging. 2020;33(2):355-360. PubMed
  6. Morgan MB, Young E, Harada S, et al. Ditching the Disc: The Effects of Cloud-Based Image Sharing on Department Efficiency and Report Turnaround Times in Mammography. J Am Coll Radiol. 2017;14(12):1560-1565. PubMed
  7. Vcelak P, Kryl M, Kratochvil M, et al. Identification and classification of DICOM files with burned-in text content. Int J Med Inform. 2019;126:128-137. PubMed
  8. Aryanto KY, Oudkerk M, van Ooijen PM. Free DICOM de-identification tools in clinical research: functioning and safety of patient privacy. Eur Radiol. 2015;25(12):3685-95. PubMed

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