
先に結論:内臓脂肪CTは「腹壁の内側の脂肪」を断面積で測る。日本の診断基準では100cm²が目安
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 測り方 | 臍の高さのCT 1断面で、脂肪の濃度(CT値)の範囲を自動で色分けし、腹壁の内側を内臓脂肪、外側を皮下脂肪として面積(cm²)を出す |
| 内臓脂肪と皮下脂肪 | 内臓脂肪は腹壁の内側(腸のまわり)、皮下脂肪は皮膚の下。内臓脂肪のほうが生活習慣病との関連が強いと報告されている |
| 日本の基準 | メタボリックシンドロームの診断基準(2005年)では、腹部CTで内臓脂肪面積100cm²以上が内臓脂肪蓄積の目安 |
| 注意 | 測る高さで数字が変わる。内臓脂肪が「悪者」と言い切れるかは研究でも議論がある |
内臓脂肪CTとは
内臓脂肪CTは、おなかのCTの断面から内臓脂肪の面積(VFA:visceral fat area)を測る検査です。体の内側の腹筋の壁(腹壁)を境に、その内側にある脂肪が内臓脂肪、外側で皮膚の下にある脂肪が皮下脂肪です。内臓脂肪は胃・腸・肝臓・膵臓のまわりや腸間膜(腸を支える膜)につき、皮下脂肪はつまめる脂肪にあたります。
体重やBMIだけでは、脂肪が「おなかの中」か「皮膚の下」かは分かりません。同じBMIでも内臓脂肪の量は人によって違うため、CTで直接測ります。日本のグループは1983年にCTによる体脂肪の分析方法を報告し、内臓脂肪の蓄積が糖尿病・脂質異常・高血圧・動脈硬化などにつながるという考え方(内臓脂肪型肥満)を示しました。この方法では、臍の高さのCTで腹部の脂肪面積を測る撮影条件も整えられました(Ryo 2014)。
どうやって測るのか
測る高さ:臍の高さの1断面
全部の断面を測ると時間がかかるので、1枚の断面の面積を使います。日本のグループは臍の高さのCTで脂肪面積を測る条件を整えており、第4腰椎(L4)の高さの1断面の内臓脂肪面積は、おなか全体の内臓脂肪の体積(多列CTで測定)とよく相関したと報告されています(Ryo 2014)。
ただし、どの高さが最もよいかは研究によって違います。次の表のように、報告ごとに最も相関がよい高さが異なります。
| 研究 | 調べたこと | 結果 |
|---|---|---|
| Framingham Heart Study 200人(Irlbeck 2010) | 7つの高さの面積と、内臓脂肪の体積との相関 | どの高さでも強い相関。第3〜4腰椎の間(L3/4)の高さが最もよく相関した |
| 乳がん患者44人(Sottier 2013) | 臍の高さと第3〜4腰椎の間の高さの比較 | 臍の高さの内臓脂肪量は椎間板を基準にした高さとよく相関し、測定者間のばらつきも小さかった |
| 中国人311人(Chen 2022) | 腎臓の上端・腎門部・L2/3・L5/S1・臍の高さの比較 | 腎臓の血管が出入りする部分(腎門部)の高さが最も相関がよかった(男性r=0.938、女性r=0.916) |
臍は体の表面から見つけやすい目印で、測定者による差も小さいと報告されています(Sottier 2013)。同じ人の経過を見るときは、毎回同じ高さで測ることが大切です。
脂肪を色分けする:CT値の閾値の考え方
CTでは、脂肪は水より低い値(CT値:HU)で黒っぽく映ります。そこで、脂肪のCT値の範囲を決めて、その範囲の画素を色分けし、面積を数える方法が使われます。中国の研究では、-150〜-50HUの範囲を半自動で脂肪として色分けし、腹壁の輪郭を自動でなぞって内側(内臓脂肪)と外側(皮下脂肪)に分けました(Chen 2022)。この閾値はソフトや施設で設定が違うので、数字は比較するときに同じ条件で揃える必要があります。
引用元の図 内臓脂肪と皮下脂肪の色分け(腎門部の高さ)

引用:Chen S, et al. Front Endocrinol (Lausanne) 2022;13:870552(Figure 1)。CC BY 4.0 PMC
脂肪のCT値の範囲をもとに半自動で脂肪が青く色分けされています。図の説明には、腹壁の外側の輪郭を使って、内側を内臓脂肪、外側を皮下脂肪として区別したと書かれています。この図は腎臓の腎門部の高さの断面で、臍の高さの図ではありません。
内臓脂肪と皮下脂肪のちがい
| 項目 | 内臓脂肪 | 皮下脂肪 |
|---|---|---|
| 場所 | 腹壁の内側。腸・臓器のまわり、腸間膜 | 皮膚の下。腹壁の外側 |
| CTでの見え方 | 腸や臓器の間にある黒っぽい(低吸収の)脂肪 | 腹壁の筋肉の外側を囲む黒っぽい帯 |
| 健康との関連 | 生活習慣病の危険因子との関連が強いと報告されている(Kaess 2012) | 内臓脂肪より関連が弱いとされる |
| 量の目安 | 日本の診断基準では100cm²以上が目安(後述) | 日本の診断基準には含まれない |
Framingham Heart Studyの3,223人をCTで調べた研究では、内臓脂肪は皮下脂肪より病的(pathogenic)であると位置づけたうえで、内臓脂肪と皮下脂肪の比(VAT/SAT比)が高いことが、血圧・脂質異常・インスリン抵抗性など多くの危険因子と関連しており、BMIや内臓脂肪量で調整しても関連が残る項目がありました(Kaess 2012)。どこに脂肪をためやすいか(脂肪のつき方)も、量とは別の指標になりうるということです。
内臓脂肪とインスリン抵抗性の関係については、「原因なのか、ただ相関しているだけなのか」という議論があります。内臓脂肪から脂肪酸が肝臓へ流れ込むという説明は、よく考えると難しい点があり、皮下脂肪が内臓脂肪より数倍多いことも考慮すべきだという指摘があります(Frayn 2000)。内臓脂肪が「悪者」と単純には言い切れず、皮下脂肪の量も合わせて考えることが必要です。
日本のメタボリックシンドロームの診断基準での位置づけ
日本のメタボリックシンドロームの診断基準(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会、2005年)では、内臓脂肪蓄積を必須の項目とし、腹部CTで判定した腹腔内脂肪面積100cm²以上が、男女共通の内臓脂肪蓄積のカットオフ値とされています。これに対応するウエスト周囲径として、男性85cm、女性90cmが設定され、ウエスト周囲径は立位・軽い呼気時・臍の高さで測ると書かれています(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005)。
この「100cm²」の根拠として、日本の大規模な集団の検討では、肥満に関連する心血管の危険因子(高血圧・脂質異常・高血糖)の平均数が、内臓脂肪面積100cm²付近で1.0を超えており、性別・年齢・BMIによらずその傾向が見られました(Ryo 2014)。なお、基準の数字は版や学会によって改訂されることがあります。ここで示したのは2005年の診断基準の値です。
面積100cm²は「病気」の線ではなく、危険因子がたまり始める目安と考えます。基準を超えたときの対応は、血圧・血糖・脂質などの結果と合わせて、主治医や健診機関の指示に従ってください。
健康への影響:分かっていること・分からないこと
| テーマ | 文献で確認できる内容 |
|---|---|
| 危険因子の集積 | 内臓脂肪面積100cm²付近で危険因子の平均数が1.0を超える(Ryo 2014) |
| 脂肪のつき方 | VAT/SAT比が高いほど、血圧・脂質・糖代謝の異常と関連(Kaess 2012) |
| 死亡との関係 | 12のコホートの系統的レビューで、65歳以下では内臓脂肪が多いほど全死亡のリスクが上がる傾向があった。ただし血糖・BMI・他の脂肪の指標で調整すると有意でなくなった(Saad 2022) |
| 高齢者 | 65歳を超えると結果は一定せず、関連が弱くなったり、逆になったりする可能性がある(Saad 2022) |
| 因果関係 | 内臓脂肪とインスリン抵抗性の因果関係の証明は十分ではない(Frayn 2000) |
死亡との関係を調べた系統的レビューでは、65歳以下で内臓脂肪の面積や体積が増えるごとに、全死亡の相対リスクが11〜98%高い傾向がありました。ただし、血糖の指標・BMI・他の脂肪の指標で調整すると、関連は有意でなくなりました(Saad 2022)。内臓脂肪が直接の原因というより、糖代謝の異常などを介して影響している可能性があります。
CTで内臓脂肪を測る場面と注意点
内臓脂肪CTは、人間ドックや保健指導の目的で行われます。診断のために撮るCTでも、画像から内臓脂肪や筋肉量(CTで筋肉量(サルコペニア)を測る方法)を後から測れる場合があります。
| 注意点 | 理由 |
|---|---|
| 同じ高さ・同じ条件で比べる | 測る高さやCT値の閾値で面積が変わる(Irlbeck 2010、Chen 2022) |
| 1断面は全体の目安 | 体積の代わりの指標。強く相関するが、同じ数字ではない(Ryo 2014) |
| 脂肪肝は別に評価する | 肝臓の脂肪は内臓脂肪とは別の評価。肝臓の脂肪の見え方は脂肪肝の記事にまとめた |
| 臓器の位置を確認する | 断面の高さの目安として、腹部CTの臓器・血管の位置を腹部CTの解剖で確認できる |
検査を受ける前の注意(飲食や服薬)は、主治医や検査施設の指示に従ってください。CTは放射線を使う検査なので、受ける必要があるかどうかも、目的に応じて医療機関で相談してください。健診で内臓脂肪の指摘を受けたときや気になる症状があるときは、医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 内臓脂肪100cm²とは、どのくらいの量ですか?
A. おなかのCT断面の中で、内臓脂肪が占める面積が100cm²という意味です。日本のメタボリックシンドローム診断基準(2005年)では、腹部CTでこの値以上を内臓脂肪蓄積の目安としています(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005)。体全体の脂肪の重さではありません。
Q. 皮下脂肪が多いだけなら、健康への影響は少ないですか?
A. 内臓脂肪のほうが危険因子との関連が強いと報告されていますが、皮下脂肪が安全という意味ではありません。内臓脂肪と皮下脂肪の比も危険因子と関連しています(Kaess 2012)。
Q. 内臓脂肪は減らせますか?
A. 日本の研究では、生活習慣の改善(保健指導)で内臓脂肪が減ると、肥満に関連する危険因子の数も減ったと報告されています(Ryo 2014)。具体的な方法は、医療機関や保健指導の担当者にご相談ください。
Q. 他の病気でCTを撮ったとき、内臓脂肪の量も分かりますか?
A. 腹部のCTがあれば、画像から後で内臓脂肪の面積を測れることがあります。ただし、撮影した高さや範囲、設定によって数字は変わるため、基準値と比べるときは同じ条件の測り方が必要です(Chen 2022)。
参考文献
- Ryo M, Kishida K, Nakamura T, et al. Clinical significance of visceral adiposity assessed by computed tomography: A Japanese perspective. World J Radiol. 2014;6(7):409-16. PubMed
- Irlbeck T, Massaro JM, Bamberg F, et al. Association between single-slice measurements of visceral and abdominal subcutaneous adipose tissue with volumetric measurements: the Framingham Heart Study. Int J Obes (Lond). 2010;34(4):781-7. PubMed
- Chen S, Ma D, Su D, et al. The Optimal Axial Anatomical Site for a Single-Slice Area to Quantify the Total Volume of Visceral Adipose Tissue in Quantitative CT. Front Endocrinol (Lausanne). 2022;13:870552. PubMed
- Sottier D, Petit JM, Guiu S, et al. Quantification of the visceral and subcutaneous fat by computed tomography: interobserver correlation of a single slice technique. Diagn Interv Imaging. 2013;94(9):879-84. PubMed
- Kaess BM, Pedley A, Massaro JM, et al. The ratio of visceral to subcutaneous fat, a metric of body fat distribution, is a unique correlate of cardiometabolic risk. Diabetologia. 2012;55(10):2622-2630. PubMed
- Saad RK, Ghezzawi M, Horanieh R, et al. Abdominal Visceral Adipose Tissue and All-Cause Mortality: A Systematic Review. Front Endocrinol (Lausanne). 2022;13:922931. PubMed
- Frayn KN. Visceral fat and insulin resistance–causative or correlative? Br J Nutr. 2000;83 Suppl 1:S71-7. PubMed
- メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. メタボリックシンドロームの定義と診断基準. 日本内科学会雑誌. 2005;94(4):794-809. J-STAGE(原本)
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