
先に結論:感度は「見逃しにくさ」、特異度は「言い過ぎにくさ」。陽性と言われたときの当たる確率は、その病気がどれだけ多いかで変わる
| 用語 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 感度 | 病気のある人のうち、検査が陽性になる割合 | 見逃しにくさ(低いと見逃しが増える) |
| 特異度 | 病気のない人のうち、検査が陰性になる割合 | 言い過ぎにくさ(低いと偽陽性が増える) |
| 陽性的中率(PPV) | 陽性と出た人のうち、本当に病気の人の割合 | 「陽性」と言われたときの当たる確率 |
| 陰性的中率(NPV) | 陰性と出た人のうち、本当に病気でない人の割合 | 「陰性」と言われたときの安心度 |
感度と特異度とは
画像検査の価値を考えるとき、最初に使うのが感度と特異度です。どちらも「本当に病気があるか」を調べた基準(参照基準、gold standard。手術や病理、経過観察などで決めます)と、検査の結果を並べて数えます(Trevethan 2017)。
2×2の表で考える

引用:Trevethan R. Sensitivity, Specificity, and Predictive Values: Foundations, Pliabilities, and Pitfalls in Research and Practice. Front Public Health 2017;5:307 (Figure 1). CC BY(原図は英語表記・加工なし)
検査の結果(陽性・陰性)と、本当の状態(病気あり・なし)を組み合わせると、4つのマスに分かれます。病気があって陽性が「真陽性」、病気がないのに陽性が「偽陽性(言い過ぎ)」、病気があるのに陰性が「偽陰性(見逃し)」、病気がなくて陰性が「真陰性」です。感度は左の列(病気のある人)、特異度は右の列(病気のない人)、陽性的中率と陰性的中率は横の行で計算します(Trevethan 2017)。
計算式は次のとおりです。a=真陽性、b=偽陽性、c=偽陰性、d=真陰性とします。
| 指標 | 式 |
|---|---|
| 感度 | a ÷ (a + c) |
| 特異度 | d ÷ (b + d) |
| 陽性的中率 | a ÷ (a + b) |
| 陰性的中率 | d ÷ (c + d) |
感度と特異度は「病気の有無を知っている集団」から計算する数字、的中率は「検査結果が分かった人」から計算する数字、という違いがあります。
計算してみよう(架空の数字)
ここからの数字は、考え方を示すための架空の例です。ある画像検査の感度を90%、特異度を90%とし、1,000人に検査したとします。
病気が少ない集団(有病率1%)
| 病気あり(10人) | 病気なし(990人) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 陽性 | 9人(真陽性) | 99人(偽陽性) | 108人 |
| 陰性 | 1人(偽陰性) | 891人(真陰性) | 892人 |
陽性になった108人のうち、本当に病気なのは9人だけです。陽性的中率は9 ÷ 108で約8%です。一方、陰性892人のうち病気の人は1人なので、陰性的中率は約99.9%になります。
病気が多い集団(有病率20%)
| 病気あり(200人) | 病気なし(800人) | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 陽性 | 180人(真陽性) | 80人(偽陽性) | 260人 |
| 陰性 | 20人(偽陰性) | 720人(真陰性) | 740人 |
同じ検査(感度90%・特異度90%)でも、陽性的中率は180 ÷ 260で約69%に上がり、陰性的中率は720 ÷ 740で約97%に下がります。感度と特異度は検査そのものの性質ですが、的中率は「その検査を受ける人にどれだけ病気の人がいるか(有病率)」で変わります。ある集団で求めた的中率を、有病率の違う別の集団にそのまま当てはめてはいけません(Akobeng 2007)。
検診で「陽性だったのに異常なし」が多い理由
症状のない人を対象にする検診は、有病率が低い集団を調べることになります。そのため、特異度が高い検査でも、陽性になった人の多くが「病気ではなかった」ということが起こります。
実際の例として、米国の大規模試験(National Lung Screening Trial)では、高リスクの人に低線量CTで肺がん検診を行いました。3回の検診全体で、陽性と判定された割合は24.2%で、その陽性のうち96.4%は偽陽性でした。それでも、低線量CT群は胸部X線群に比べ、肺がんによる死亡が20.0%少なくなりました(NLST 2011)。つまり、偽陽性が多くても、検診として意味がある場合がある一方で、陽性と言われた人への説明と精密検査の体制が大切になります。気になる検診結果があれば、結果票を持って医療機関で相談してください。
見逃しと言い過ぎは両立しない:ROC曲線
画像の診断では、「どこから陽性とするか」という基準(しきい値)を動かせます。たとえば結節の大きさの基準を小さくすれば、小さな病変も拾えるので感度は上がりますが、病気でないものも陽性にするので特異度は下がります。基準を厳しくすれば逆になります。感度と特異度は、このように一方を上げるともう一方が下がる関係にあります。
この関係を1枚の図にしたのがROC曲線です。縦軸に感度、横軸に「1 − 特異度」(偽陽性の割合)をとり、しきい値を動かしながら点を結びます。曲線の下の面積(AUC)が大きいほど、検査の判別能力が高いと考えます(Park 2004)。
| ROC曲線の見方 | 内容 |
|---|---|
| 左上に近い | 感度が高く、偽陽性も少ない検査 |
| 対角線に近い | 当てずっぽうに近い検査 |
| AUC | 曲線の下の面積。1に近いほど判別能力が高い |
| しきい値の選び方 | 見逃しを避けたいのか、偽陽性を避けたいのかで変わる |
「除外に強い検査」と「確定に強い検査」
検査には得意な使い方があります。感度が高い検査は、陰性のときに病気を除外しやすい検査です。たとえば「見逃したくない病気」を最初にふるい分けるときに向いています。反対に、特異度が高い検査は、陽性のときに病気を確定しやすい検査で、治療に進む前の確認に向いています。
画像診断でも同じです。症状から重い病気を除きたい場面では、見逃しの少ない検査や読み方が選ばれ、その代わりに偽陽性が増えることを受け入れます。逆に、手術や治療を決める場面では、言い過ぎを減らす別の検査で確かめます。検査を組み合わせるのは、感度と特異度の弱点を補うためです。
どちらの間違いが重いかは、病気と場面で変わる
| 場面 | 重く見る間違い | 考え方 |
|---|---|---|
| 命にかかわる病気を除外したい | 見逃し(偽陰性) | 感度を高くして、偽陽性は精密検査で整理する |
| 体への負担が大きい治療を決める | 言い過ぎ(偽陽性) | 特異度の高い確認検査を加える |
| 症状のない人の検診 | 言い過ぎによる不安や追加検査 | 的中率と、精密検査の体制もあわせて考える |
論文や新しい検査の数字を読むときの注意
「感度95%」と書かれていても、それだけでは検査の良さは分かりません。参照基準が何か、対象が症状のある人か検診の人か、しきい値をどこに置いたかで、数字は変わります。感度と特異度は、参照基準と比べた検査の性質を表すものとして使うのが基本で、4つの指標(感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率)をそろえて示すことが勧められています(Trevethan 2017)。新しい検査やAIの報告を見るときも、同じ確認が役に立ちます。
研修医のための3つの確認
検査の結果を受け取ったり、報告書を書いたりするときは、次の3つを順に確認すると整理しやすくなります。
| 順番 | 確認すること | 例(架空) |
|---|---|---|
| 1 | この検査は、見逃しと言い過ぎのどちらが起きやすいか | 小さい病変は見逃しやすい検査、炎症も陽性にしやすい検査 |
| 2 | この患者は、病気の可能性があらかじめ高いか低いか | 症状と危険因子がそろう人は有病率が高い集団に近い |
| 3 | 結果を受けて、次に何をするか | 陽性なら確認検査、陰性でも症状が続けば再評価 |
同じ「陽性」でも、可能性があらかじめ高い人と低い人では、意味の重さが違います。画像の所見を、患者の症状や経過と切り離さずに考えることが、数字を診療で使うコツです。
読影の現場で、数字をどう使うか
感度と特異度は、研究論文や検査の説明書に載っている「検査の性質」です。ただし、1人ひとりの患者さんに「病気がある確率」を伝えるためには、それだけでは足りません。感度と特異度は、個々の患者の病気の確率を推定するには役立たず、的中率が確率の目安になるが有病率で変わる、とされています(Akobeng 2007)。
研究で出た数字を使うときは、次の点を確認します。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 何を参照基準にしたか | 手術・病理で確認した人だけを対象にすると、数字が高く出やすい |
| どんな集団か | 症状のある人と検診の人では有病率が違い、的中率が変わる |
| 感度と特異度の両方 | 片方だけ高くても意味が限られる。4つの指標を並べて示すのが望ましい(Trevethan 2017) |
| どのしきい値か | 基準が違えば、感度と特異度も変わる |
読影では、画像の所見ごとに「その所見が出たとき、病気である確率はどれくらいか」を意識すると、報告書の「疑う」「否定できない」という言葉の重さが伝わりやすくなります。見逃しの原因は読影の見落としはなぜ起こるで、偽陽性・偽陰性の具体例はPET検査(FDG-PET/CT)の基礎知識と読影手順や胸部レントゲンで見落としやすい場所でも取り上げています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 感度が高い検査なら、陰性で安心してよいですか?
A. 感度が高いと見逃しが少ないので、陰性なら病気を否定しやすくなります。ただし有病率が高い集団では、陰性でも病気の人が残ります。陰性的中率も合わせて見ます(Akobeng 2007)。
Q. 特異度が高い検査なら、陽性で確実ですか?
A. 特異度が高いと偽陽性が少なくなりますが、有病率が低い集団では、陽性でも多くが病気でないことがあります。陽性的中率を見る必要があります(Akobeng 2007)。
Q. 感度・特異度とAUCはどう違いますか?
A. 感度・特異度は、あるしきい値での数字です。AUCは、しきい値を動かしたすべての組み合わせをまとめた指標です(Park 2004)。
Q. 検診は偽陽性が多いなら、受けないほうがよいですか?
A. 偽陽性が多くても、死亡の減少が示された検診もあります(NLST 2011)。検診を受けるかどうかは、年齢や危険因子を踏まえて、かかりつけ医と相談してください。
参考文献
- Trevethan R. Sensitivity, Specificity, and Predictive Values: Foundations, Pliabilities, and Pitfalls in Research and Practice. Front Public Health. 2017;5:307. PubMed
- Akobeng AK. Understanding diagnostic tests 1: sensitivity, specificity and predictive values. Acta Paediatr. 2007;96:338-41. PubMed
- Park SH, Goo JM, Jo CH. Receiver operating characteristic (ROC) curve: practical review for radiologists. Korean J Radiol. 2004;5:11-8. PubMed
- National Lung Screening Trial Research Team, Aberle DR, Adams AM, et al. Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening. N Engl J Med. 2011;365:395-409. PubMed
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