
先に結論:RECISTは「決めた病変の長さの合計」が何%変わったかで、治療の効き方を4つに分ける約束事
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 固形がんの治療効果をCTなどの大きさで判定する国際的な基準。現在使われるのは2009年のRECIST 1.1(Eisenhauer 2009) |
| 4つの判定 | CR(病変が消えた)・PR(合計が30%以上縮小)・SD(どちらでもない)・PD(合計が20%以上かつ5 mm以上増大、または新しい病変) |
| 数え方 | 標的病変は全体で最大5個、1臓器あたり最大2個。リンパ節は短径で測る |
| 注意点 | 測定者による差がある。治療後の変化(一時的な増大など)は大きさだけでは判断できない場面がある |
RECISTとは
RECISTは「Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(固形がんの治療効果判定基準)」の略です。腫瘍が小さくなる(奏効)ことも、大きくなる(進行)ことも、治療の効果を見る大切な指標です。2000年に最初の版が発表され、多くの研究グループや製薬企業、規制当局が使うようになりました。その後に出た疑問を整理して改訂されたのが、現在のRECIST 1.1(2009年)です(Eisenhauer 2009)。
もともとは新しい薬の効果を、どの施設でも同じものさしで比べるための臨床試験の基準です。2000年以降、腫瘍の反応を評価する標準として使われています(Smesseim 2026)。日々の診療の報告書でも、治療前後の変化を伝えるために同じ考え方が使われることがあります。
RECIST 1.1の測り方:標的病変・非標的病変・新病変
RECISTでは、治療を始める前(ベースライン)のCTで、病変を次の3つに分けて記録します。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 標的病変(target lesion) | 大きさを実際に測って合計に入れる病変。測りやすく、繰り返しても同じように測れるものを選ぶ |
| 非標的病変(non-target lesion) | 測らずに「ある・ない・はっきり増えた」で見ていく病変 |
| 新病変(new lesion) | 治療後に新しく出てきた病変。見つかるとPDの根拠になる |
標的病変になれる大きさ(測定可能の目安)は、リンパ節以外の病変でおおむね10 mm以上です。大きさだけでなく、測定のしやすさと再現性も条件に含まれます(Iannessi 2021)。
RECIST 1.1では、標的病変は全体で最大5個、1つの臓器あたり最大2個までです。RECIST 1.0では全体で最大10個(1臓器5個)でしたが、多数の臨床試験のデータを解析して減らされました(Eisenhauer 2009)。合計の長さに入れるのは、病変の最も長い径(長径)です。ただしリンパ節だけは短径を使います。
リンパ節は「短径」で測る
リンパ節は、もともと体にある正常な構造で、正常でも大きさがあります。そのため転移かどうかの判断には、長径より短径のほうが再現しやすく、悪性かどうかの予測にも向いているとされます(Schwartz 2009)。RECIST 1.1では次のように決められています(Eisenhauer 2009)。
| 短径 | 扱い |
|---|---|
| 15 mm以上 | 測定可能。標的病変にできる |
| 10 mm以上15 mm未満 | 病的かもしれないが測定可能の基準には届かない(非標的病変として扱うのが基本) |
| 10 mm未満 | 正常とみなす。治療で10 mm未満まで縮んだリンパ節は正常と判断する |
つまり、リンパ節転移が治療で縮んでも、短径が10 mm未満にならなければ「消えた」とはされません。「リンパ節は正常でもゼロにならない」ことを前提にした決まりです。
CR・PR・SD・PDの判定
治療中のCTでは、ベースラインで決めた標的病変の長さを測り直して、合計(径和)を計算します。判定は次のとおりです(Eisenhauer 2009、Smesseim 2026)。
| 判定 | 標的病変 | 非標的・新病変 |
|---|---|---|
| CR(Complete Response) | 標的病変がすべて消える(リンパ節は短径10 mm未満) | 非標的病変も消え、新病変がない |
| PR(Partial Response) | ベースラインの合計から30%以上の縮小 | PDの所見がない |
| SD(Stable Disease) | PRにもPDにも当たらない | PDの所見がない |
| PD(Progressive Disease) | 治療中でもっとも小さかった合計から20%以上増え、かつ絶対値でも5 mm以上増えた | 非標的病変がはっきり悪化した、または新病変が出た |
PDに「5 mmの増加」が加わったのは、合計がもともと小さいときに、わずかな変化でPDと判定してしまう「言い過ぎ」を防ぐためです(Eisenhauer 2009)。また、新しい病変が出てきたこと、非標的病変がはっきり悪化したことも、PDの根拠として同じ重さで扱われます。ただし、客観的な数値の決まりがあるのは標的病変だけで、非標的病変と新病変は目で見て判断するため、読む人による差が出やすい部分です(Ruchalski 2024)。
計算例(架空の数字)
次の数字は、考え方を示すための架空の例です。
| 場面 | 標的病変の合計 | 判定 |
|---|---|---|
| 治療前 | 60 mm | ベースライン |
| 治療後の1回目 | 40 mm(33%縮小) | PR(30%以上の縮小) |
| 治療後の2回目 | 30 mm | PR(最小値は30 mm) |
| 治療後の3回目 | 35 mm | 最小値30 mmから5 mm(17%)増えたが、20%に届かない。SD |
| 治療後の4回目 | 36 mm | 最小値30 mmから6 mm(20%)増えた。5 mm以上でもあるのでPD |
合計が小さいときは、20%の増加だけでは5 mmに届かないことがあります。たとえば最小値が15 mmなら、20%は3 mmなので、PDには5 mmの増加(20 mm以上)が必要です。逆に、PRは治療前の合計と比べ、PDは治療中の最小値と比べる点が、間違えやすいところです。
図 標的病変と非標的病変の選び方

引用:Iannessi A, et al. RECIST 1.1 and lesion selection: How to deal with ambiguity at baseline? Insights Imaging 2021;12:36 (Figure 2). CC BY 4.0
肝臓に多発する病変の造影CTで、標的病変(TL)を両矢印、非標的病変(NTL)を丸で示した図です。最良の選び方(最上段)と、RECIST 1.1から外れた選び方(左列)、許容される選び方の違い(右列)が示されています。同じ患者でも、どの病変を標的にするかは読む人によって少しずつ変わりうることが分かります(Iannessi 2021)。
RECISTの限界:数字だけでは決められない場面
測る人・撮り方による差
RECISTは、閾値(30%・20%)や標的病変の個数を決めることで、読影者間の差を減らす工夫をしています。それでも差は残ります。88本の研究を集めた系統的レビューでは、測定の方法、病変の選び方、画像の質が読影者間のばらつきに影響していました(Smesseim 2026)。ある研究では、食い違いの53.7%が新病変を見つけたかどうかの差によるものだったと紹介されています(Smesseim 2026)。
前回と今回でCTの撮影条件やスライスの厚さが違うと、同じ病変でも測定値がぶれることがあります。測るときは、前回と同じ断面・同じ条件の画像で比べることが大切です。
免疫チェックポイント阻害薬とiRECIST
免疫療法では、腫瘍が治療の途中で一時的に大きくなってから縮むことが、一部の患者で起こります(偽増悪、pseudoprogression)。RECIST 1.1は従来の抗がん剤を想定して作られたため、この場合にPDと判定してしまう可能性があります(Waters 2026)。そこで、RECIST 1.1を免疫療法の試験向けに修正したiRECISTが、RECIST作業部会から2017年に発表されました(Seymour 2017)。iRECISTは便利な反面、運用が複雑とされています(Waters 2026)。ここでは「大きさの変化に時間差がある治療では、別の約束事がある」と押さえておけば十分です。
病気によって別の基準がある
肝細胞癌の治療効果には、造影される部分(生きている腫瘍)の大きさで見る改変版のmRECISTがあります(Smesseim 2026)。PETでの効果判定は別の基準で行われます。FDG-PET/CTについてはPET検査(FDG-PET/CT)の基礎知識と読影手順をご覧ください。
また、治療後には、壊死や炎症などの変化で病変が大きく見えることがあります。治療後に「大きくなった」だけでPDと決めず、その病変の中身(造影される部分や、周りの変化)も合わせて見る場面があります。
読影のときの心がまえ
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| ベースラインで | 標的病変は最大5個・1臓器2個まで。最も長い径を測れる、境界がはっきりした病変を選ぶ。リンパ節は短径 |
| 測るとき | 前回と同じ断面・同じ向きで測る。測った場所に印や番号を残す(読影の見落としはなぜ起こるも参照) |
| 判定するとき | PRは治療前と、PDは最小値と比べる。5 mmの増加も確認する |
| 新病変 | 標的病変が縮んでいても、新病変があればPD。見落としやすい場所は腹部CTの読み方も参照 |
| 数字が合わないとき | 撮影条件の違い、治療後の変化、測り方の差を考えてから報告する |
よくある疑問(Q&A)
Q. 「PR」と言われたら、がんが消えたという意味ですか?
A. いいえ。PRは標的病変の長さの合計が治療前から30%以上小さくなった状態で、がんが残っていても当てはまります。消えた状態はCRと呼びます(Eisenhauer 2009)。
Q. PDと言われたら、治療は効いていないのですか?
A. RECIST上は進行(増大や新病変)を意味しますが、治療方針は画像の数字だけでは決まりません。免疫療法のように一時的に大きくなってから縮む例もあり(Waters 2026)、症状や血液検査と合わせて主治医が判断します。
Q. 病院によって「PR」「SD」が違うことはありますか?
A. あります。測る人によって、標的病変の選び方や測定値が少し変わるためです(Smesseim 2026)。同じ施設で、同じ人が前回と比べて測ると、ぶれは小さくなります。
Q. 小さい病変や骨の病変はどうなりますか?
A. 小さくて測れない病変は非標的病変として、有無や悪化を見て判断します。気になる症状があるときは、医療機関で主治医に相談してください。
参考文献
- Eisenhauer EA, Therasse P, Bogaerts J, et al. New response evaluation criteria in solid tumours: revised RECIST guideline (version 1.1). Eur J Cancer. 2009;45:228-47. PubMed
- Schwartz LH, Bogaerts J, Ford R, et al. Evaluation of lymph nodes with RECIST 1.1. Eur J Cancer. 2009;45:261-7. PubMed
- Seymour L, Bogaerts J, Perrone A, et al. iRECIST: guidelines for response criteria for use in trials testing immunotherapeutics. Lancet Oncol. 2017;18:e143-e152. PubMed
- Iannessi A, Beaumont H, Liu Y, et al. RECIST 1.1 and lesion selection: How to deal with ambiguity at baseline? Insights Imaging. 2021;12:36. PubMed
- Ruchalski K, Anaokar JM, Benz MR, et al. A call for objectivity: Radiologists’ proposed wishlist for response evaluation in solid tumors (RECIST 1.1). Cancer Imaging. 2024;24:154. PubMed
- Smesseim I, Bucho TT, Tissier R, et al. Assessing the reliability of Response Evaluation Criteria In Solid Tumors (RECIST): a systematic review of the factors contributing to inter-observer variability. Insights Imaging. 2026;17. PubMed
- Waters C, Halpenny D. iRECIST: A Case Based Users Guide for Radiologists. Can Assoc Radiol J. 2026;77:139-159. PubMed
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