先に結論:EOB・プリモビストMRIの落とし穴
- EOB-MRIは肝細胞癌の検出に優れますが、一部は典型と違う信号を示します。造影剤の量が少なく、肝細胞に取り込まれるため、細胞外液性造影剤と見え方が違います
- 遅延相(移行相)の低信号をwashoutと決めつけない、動脈相の濃染が弱く見える、小さな血管腫やAPシャントも肝細胞相で抜ける、肝細胞相で高信号のHCCもある、といった点に注意します
- green hepatomaは肝細胞相で周りの肝臓と同じか高い信号を示すHCCで、腫瘍が胆汁を作って緑色に見えることに由来する呼び名です(Asayama 2011)
- 肝硬変が強いと肝実質の取り込みが落ちて病変が見えにくくなるため、ダイナミックCTと組み合わせて判断します
肝癌診断において、EOB・プリモビストは万全か?
- 典型例ばかりでなく、本来見られる造影効果と逆の信号を呈するものもある。したがって、過度の期待は禁物。
- 細胞外液性Gd造影剤と比較すると、含まれるGd量が少なく、また、肝腎双方から排泄されるため、抜けが速い特徴がある。したがって、EOB・プリモビスト造影剤MRIでは「平衡相」という言葉は使わずに、「遅延相」「後期相」あるいは「移行相」という。
この特徴があるために
肝硬変
- 肝硬変症により肝細胞数の減少や肝細胞機能の低下を生じると、肝細胞相での取り込み遅延し、落ちる。
- 線維化は肝の辺縁からおこる。辺縁から取り込みは低下し、中心部は門脈血保たれるため、肥大する。
HCC
- 多血性HCCなのに早期相で描出されにくい(されない)ことがある。原因の一つに、EOB投与直後の一過性の呼吸苦による動脈相の画質低下(transient severe motion)がある。
- 遅延相での抜けをwash outとしてはいけない。
- 古典的HCCの被膜の描出が悪いことがある。
- 肝細胞相での抜けは実際より過剰になることがある。
- 転移、門脈腫瘍栓を拾いにくいことがある。
- 中分化HCCなどで肝細胞相でhighとなるものがある(green hepatoma)。肝細胞相で高信号を示すHCCの背景として、β-カテニン変異HCCが知られています。138病変の検討では、β-カテニン変異HCCは分化度が高く、OATP1B3の発現と相関して肝細胞相の造影比が高く、ADCも高い傾向を示しました。
- HCCをFNHにmisleadすることがある。
- 小さな副病変の描出には限界がある(CTの方がよいこともある)。
hemangioma
- 小さな血管腫が早期相で染まらないことがある。
- 血管腫での抜けが速くHCCと誤ることがある。
その他
- FNHでもまれに肝細胞相で抜けることがある。
- AP-shuntも肝細胞相で抜けることがある(Zahn梗塞(T2WIでhigh)など)
症例 70歳代男性(C型肝硬変)

引用:Ozaki K et al. Jpn J Radiol 2026 (Figure 20)
肝細胞癌(矢頭)は、ダイナミックCTで(A)動脈相の濃染と(B)門脈相のwashoutを示し、MRIでも(C)T2強調脂肪抑制像で不均一な高信号、(D)動脈相で濃染します。一方、EOB-MRIでは(E)門脈相のwashoutも(F)肝細胞相の低信号もはっきりしません。進んだ肝硬変で肝臓のEOB取り込みが落ち、腫瘍と背景肝のコントラストが下がったためです。(出典:Ozaki K et al. Jpn J Radiol 2026, Figure 20, CC BY 4.0)
動脈相の一過性アーチファクト(TSM)はどう扱う?
EOB・プリモビスト(ガドキセト酸)では、造影剤の注入直後に起こる一過性の強い体動アーチファクト(transient severe motion:TSM)で、最も大事な動脈相が乱れることがあります。動脈相の濃染が評価できないと、多血性の肝細胞癌を見逃したり、典型的なパターンを判定できなくなったりします。
- 頻度:動脈相のアーチファクトは5〜39%と報告されており(Poetter-Lang 2024)、836件の検討ではTSMが5.14%にみられました。独立した危険因子は、65歳を超える高齢(調整オッズ比4.59)と血清アルブミンが低いこと(同0.33)でした(Hirun 2025)。別の検討でも、アルブミン低値がTSMの独立した危険因子でした(Sugiura 2022)。
- 撮像での対策:生理食塩水で1:1に希釈し、1mL/秒でゆっくり注入して、自動のタイミング検出で動脈相を撮る方法が試されました。1413人の3T肝MRIで、アーチファクトのない動脈相が77.8%、有意なアーチファクトがあったのは1.1%でした(Poetter-Lang 2024)。
- 読影での考え方:動脈相がアーチファクトで評価できないときは、「濃染がない」と判断せず、評価不能として扱います。必要に応じて再検査、ダイナミックCT、細胞外液性造影剤のMRIで補います。
肝細胞相は肝機能の目安になる?
肝細胞相の取り込みは、肝細胞の機能を反映します。慢性肝疾患の検討では、肝脾コントラスト比(LSR)などの肝細胞相の指標が、アルブミンやMELD-Naなどの検査値・スコアと有意な関連を示しました。ただし関連の強さは中等度以下で、LSRはMELD-Naとの関連が最も強い指標でした(Işık 2026)。肝細胞相の信号は肝機能の目安にはなりますが、血液検査の代わりにはなりません。
green hepatoma(グリーンヘパトーマ)とは?
- 肝細胞相は、EOBが正常な肝細胞に取り込まれて肝臓全体が白くなる時相で、肝細胞の機能をもたない多くのHCCは黒く抜けます。
- 一方で、肝細胞相で周りと同等〜高信号を示すHCCがあります。切除された40病変の検討では8病変が等〜高信号で、取り込みに関わるトランスポーターOATP8(OATP1B3)の発現が保たれ、胆汁栓を伴う偽腺管状の増殖が多くみられました(Kitao 2010)。
- 60結節の検討では、EOBの取り込みを示すHCCと、肉眼で緑色の部分(胆汁産生)をもつHCC(green hepatoma)が有意に関連しましたが、取り込み部位と緑色部分が一致しない結節も多くみられました(Asayama 2011)。
- 肝細胞相で高信号になる病変はFNH、一部の肝細胞腺腫、線維性腫瘍や血管腫などもあり、ダイナミック相とあわせて判断します(Fujita 2020)。
このような特徴を理解した上でプリモビストを使わなくてはならない。
対策としては、HCCが疑われたときは
初回 CT+EOB
進行例では CTに加えてGdによる造影もするべきである。
EOB-MRIでよくある疑問(Q&A)
Q. 動脈相が乱れたときは、どうしますか?
A. 動脈相の濃染が評価できなければ、その相では判断せず、再検査やダイナミックCTで補います。注入を遅くする、造影剤を希釈するなどの撮像側の工夫もあります(Poetter-Lang 2024)。
Q. 肝細胞相で低信号になれば、肝細胞癌ですか?
A. いいえ。肝細胞癌の多くは低信号ですが、血管腫やAPシャントも低信号になることがあり、一部の肝細胞癌は等〜高信号(green hepatoma)です。ダイナミック相とあわせて判断します(Kitao 2010、Fujita 2020)。
健診などで肝臓の腫瘤を指摘された場合は、消化器内科や肝臓専門医に相談してください。
参考文献
- Kwok HM, Chau CM, Lee HCH, et al. Gadoxetic acid in hepatocellular carcinoma and liver metastases: pearls and pitfalls. Clin Radiol. 2023;78(10):715-723. PubMed
- Kitao A, Matsui O, Yoneda N, et al. Hepatocellular Carcinoma with β-Catenin Mutation: Imaging and Pathologic Characteristics. Radiology. 2015;275(3):708-17. PubMed
- Chernyak V, Fowler KJ, Kamaya A, et al. Liver Imaging Reporting and Data System (LI-RADS) Version 2018: Imaging of Hepatocellular Carcinoma in At-Risk Patients. Radiology. 2018;289(3):816-830. PubMed
- Kitao A, Zen Y, Matsui O, et al. Hepatocellular carcinoma: signal intensity at gadoxetic acid-enhanced MR Imaging–correlation with molecular transporters and histopathologic features. Radiology. 2010;256(3):817-26. PubMed
- Asayama Y, Tajima T, Nishie A, et al. Uptake of Gd-EOB-DTPA by hepatocellular carcinoma: radiologic-pathologic correlation with special reference to bile production. Eur J Radiol. 2011;80(3):e243-8. PubMed
- Fujita N, Nishie A, Asayama Y, et al. Hyperintense Liver Masses at Hepatobiliary Phase Gadoxetic Acid-enhanced MRI: Imaging Appearances and Clinical Importance. Radiographics. 2020;40(1):72-94. PubMed
- Hirun Y, Mai WNC, Pojchamarnwiputh S, et al. Investigation of transient severe motion artifacts on gadoxetic acid-enhanced MRI: frequency and risk factors. Abdom Radiol (NY). 2025;50(12):6214-6224. PubMed
- Poetter-Lang S, Ambros R, Messner A, et al. Are dilution, slow injection and care bolus technique the causal solution to mitigating arterial-phase artifacts on gadoxetic acid-enhanced MRI? A large-cohort study. Eur Radiol. 2024;34(8):5215-5227. PubMed
- Sugiura T, Okumura K, Sasaki M, et al. A low albumin level as a risk factor for transient severe motion artifact induced by gadoxetate disodium administration: A retrospective observational study with free-breathing dynamic MRI and an experimental study in rats. PLoS One. 2022;17(3):e0265588. PubMed
- Işık F, Akkuş AT, Yener MH, et al. Quantitative hepatobiliary phase MRI-derived indices for assessment of hepatic functional reserve in chronic liver disease. Eur J Radiol. 2026;204:113088. PubMed
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