先に結論:肝粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)
- 肝のMCNはほぼ女性にでき、卵巣様間質を持つ嚢胞性腫瘍です。膵臓のMCNとよく似ています
- 肝左葉(S4)に多く、嚢胞の中に嚢胞がある(cyst in cyst)多房性の形で、胆管とはつながらないのが特徴です
- 腺腫から浸潤癌まであり、壁在結節や隔壁の厚さは悪性を疑う所見です。単純性肝嚢胞と違い、切除が基本です
- CT・MRIでは壁から直接出る隔壁とその造影効果が単純性肝嚢胞との区別に役立ちます。胆管との交通があれば胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)を考えます
肝粘液性嚢胞性腫瘍(Hepatic MCN)
・腺腫から腺癌、浸潤癌まで、多彩な組織像をとる。
・原則女性。
・発生は卵巣様間質を有し、原始卵巣原基の迷入・遺残から発生すると推測されている。2010年WHO分類以降、卵巣様間質の存在が肝MCNの確定診断の要件とされている。画像所見は示唆的だが特異的ではなく、確定には病理診断が必要である。
・胆管との交通は原則ない。
・発生部位としては肝左葉が多い。卵巣様間質を必須条件とした36例の検討では、全例が女性(平均51歳)で平均径11cm、72%が左葉にあり、浸潤癌は6%と膵MCN(16%)より少なかった。また、以前「胆管嚢胞腺腫/嚢胞腺癌」と診断されていた例の25%は卵巣様間質を欠き、MCNではなかった。
・cyst in cyst構造を有することが多い。
肝MCNのCT・MRI所見と鑑別
- 手術例の比較(肝MCN 22例、単純性嚢胞56例)では、単房性の嚢胞は単純性嚢胞の可能性が高く(陽性的中率95.2%)、壁のくぼみなしに壁から直接出る隔壁はCTで肝MCNに対する感度100%(特異度56.3%)、MRIでの隔壁の造影効果も感度100%でした(Boyum 2021)。
- メタ解析では、肝MCNの厚い隔壁は50.61%にみられ、壁在結節・上流胆管の拡張・石灰化も肝MCN側の所見でした(Manzari Tavakoli 2025)。
- 嚢胞型IPNBは胆管と交通し、胆管内の腫瘤や胆管拡張を伴い、卵巣様間質を持ちません(Lee 2021)。下流の胆管拡張と胆管との交通はIPNBに特異度が高い所見です(それぞれ97.9%、100%)(Xiao 2025)。
症例 60歳代女性 肝嚢胞の精査

引用:Radiopaedia(Mucinous cystic neoplasm (MCN) of the liver with gross pathology)
肝臓の内側区(S4)に、隔壁で仕切られた多房性の大きな嚢胞性腫瘤があります。房ごとに信号が異なり、背側の房は他より低い信号を示しています。この症例では腫瘤の大きさの割に胆管拡張はほとんどなく、肝左葉切除で肝MCNと確認されました。
肝MCNでよくある疑問(Q&A)
Q. 肝MCNの確定診断はどうしますか?
A. 画像は示唆的でも特異的ではなく、針生検の価値も限られるため、切除標本で卵巣様間質を確認して診断します(Hutchens 2023)。
Q. 肝嚢胞に隔壁があれば肝MCNですか?
A. いいえ。単純性肝嚢胞の50.1%にも隔壁があり、厚い隔壁も10.52%にみられました(Manzari Tavakoli 2025)。隔壁の出方・造影効果・壁在結節を合わせて判断します。
参考文献
- Cicerone O, Basilico G, Tassi C, et al. Mucinous cystic neoplasms of the liver: Literature review and case series. World J Clin Oncol. 2025;16(8):108557. PubMed
- Manzari Tavakoli G, Afsharzadeh M, Mobinikhaledi M, et al. Differentiation between mucinous cystic neoplasms and simple cysts of the liver: a systematic review and meta-analysis. Abdom Radiol (NY). 2025;50(9):4125-4138. PubMed
- Quigley B, Reid MD, Pehlivanoglu B, et al. Hepatobiliary Mucinous Cystic Neoplasms With Ovarian Type Stroma (So-Called “Hepatobiliary Cystadenoma/Cystadenocarcinoma”): Clinicopathologic Analysis of 36 Cases Illustrates Rarity of Carcinomatous Change. Am J Surg Pathol. 2018;42(1):95-102. PubMed
- Hutchens JA, Lopez KJ, Ceppa EP. Mucinous Cystic Neoplasms of the Liver: Epidemiology, Diagnosis, and Management. Hepat Med. 2023;15:33-41. PubMed
- Boyum JH, Sheedy SP, Graham RP, et al. Hepatic Mucinous Cystic Neoplasm Versus Simple Biliary Cyst: Assessment of Distinguishing Imaging Features Using CT and MRI. AJR Am J Roentgenol. 2021;216(2):403-411. PubMed
- Lee MH, Katabathina VS, Lubner MG, et al. Mucin-producing Cystic Hepatobiliary Neoplasms: Updated Nomenclature and Clinical, Pathologic, and Imaging Features. Radiographics. 2021;41(6):1592-1610. PubMed
- Xiao SY, Shi YT, Xu JX, et al. To develop a classification system which helps differentiate cystic intraductal papillary neoplasm of the bile duct from mucinous cystic neoplasm of the liver. Eur J Radiol. 2025;182:111822. PubMed
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