先に結論:上衣下腫のMRI
- 上衣下腫は、脳室の壁から出るゆっくり育つ良性の腫瘍(WHOグレード1)で、中高年男性の第4脳室や側脳室(モンロー孔付近・透明中隔)に多く、症状がなく偶然見つかることも多いです
- MRIでは脳室内に突き出す分葉状の境界明瞭な腫瘤で、T2・FLAIRで高信号、周りのむくみがなく、造影されないか弱いのが特徴です(第4脳室のものは造影されることがあります)
- 名前の似た上衣下嚢胞・上衣下出血(新生児)や上衣下結節(結節性硬化症)は別の病気です
- 水頭症がなければ経過観察のこともあります。上衣腫・中枢性神経細胞腫・上衣下巨細胞性星細胞腫などとの区別が大切です
- WHO分類(2021年、CNS5)では、上衣系腫瘍はテント上・後頭蓋窩・脊髄の部位ごとに分けて考えます。上衣下腫は上衣腫と別の腫瘍型として残されました
上衣下腫(subependymoma)
- 脳室壁に付着して発生する上衣細胞の特徴を持つ予後良好な脳室内腫瘍。
- CNS WHO grade 1に分類される。
- 非浸潤性で増大傾向に乏しい。
- 中高年男性に多い。米国のデータベース731例では男性が69.9%で、5年生存率は92.0%でした(Zhang 2023)。
- まれな腫瘍で、ある施設で8年間に手術された中枢神経腫瘍の0.51%でした(Ragel 2006)。
- 第4脳室や側脳室に好発する。
- 第4脳室底部や側脳室では透明中隔や外側壁に付着して見られることが多い。
- 境界の明瞭・不明瞭の程度はさまざまである。大きな腫瘍では石灰化や嚢胞を伴うことがある。腫瘍内出血は稀。
上衣下腫の画像所見
- 腫瘍は分葉状で境界明瞭。脳室壁と基本的に1点で付着する。
- T1強調像は低~等信号を示す。T2強調像やFLAIR像では高信号を示す。
- 周囲脳実質の浮腫は通常伴わない。
- 増強効果は認められないか、 あっても弱いことが多い。
- 第四脳室上衣下腫は時に強い増強効果を示すこともある。
症例 40歳代 女性 嘔気・頭痛で来院

右側脳室モンロー孔付近に、T1WIにて低信号、T2WIおよび FLAIR像にて高信号、造影にて造影されない腫瘍あり。それに伴う水頭症あり。
手術の結果、subependymomaであった。
鑑別診断
脳室内腫瘍が鑑別に挙がる。
- 上衣腫:より若年者、増強効果あり。
- 中枢性神経細胞腫:増強効果強い。上衣下腫と中枢性神経細胞腫はいずれも側脳室前部に好発し、断面像で不均一な嚢胞状を示すことが多いため紛らわしいが、上衣下腫は高齢者に、中枢性神経細胞腫は40歳未満に多い。年齢が鑑別の大きな手がかりになる。
- 脈絡叢乳頭腫:脈絡叢から発生する分葉状で血流の豊富な腫瘍で、増強効果強い。
- 上衣下巨細胞性星細胞腫:多くは結節性硬化症の症例に見られ、Monro孔付近に好発、増強効果を伴う。
脳室内腫瘍の中でも不均一な信号、不均一な造影効果を示すもの
- 上衣腫
- 上衣下腫
- 中枢性神経細胞腫
上衣腫と上衣下腫の見分け方:部位別(テント上・第四脳室・脊髄)
2021年のWHO分類(CNS5)では、上衣系の腫瘍をテント上・後頭蓋窩・脊髄の3つの部位に分けます。メチル化解析で、部位ごとに別の分子グループがあることが示されたためです。上衣下腫と粘液乳頭状上衣腫は、病理で定義される腫瘍型として残されました(Ellison 2020)。
| 部位 | 上衣腫(分子分類) | 上衣下腫との見分けの手がかり |
|---|---|---|
| テント上 | ZFTA融合陽性とYAP1融合陽性の2型。ZFTA融合型は嚢胞・出血・著明なむくみを伴うことが多く、YAP1融合型は辺縁に花輪状の充実部の造影効果と拡散制限を示します(Thomas AG 2026) | 上衣下腫は造影されないか弱く、周囲のむくみを伴わない境界明瞭な腫瘤。広いむくみ、出血、辺縁の造影効果があれば上衣腫を考えます(ただし上衣下腫でも、大きな腫瘍では嚢胞や石灰化を伴うことがあります) |
| 後頭蓋窩(第四脳室) | メチル化でPFA(典型的な後頭蓋窩上衣腫)とPFB。PFBは年長の小児に多く、病変が小さく予後が比較的良好です(Thomas AG 2026) | 上衣下腫は成人に多い良性腫瘍で、後頭蓋窩では独自の分子グループ(PFSE)を持ちます(Thomas C 2021)。年齢が大きな手がかりです |
| 脊髄 | 変化が小さく、新しくMYCN増幅型が加わりました。進行した状態や播種した状態で見つかることが多く予後不良です(Thomas AG 2026) | 脊髄の上衣下腫はまれで、髄内で見つかった症例報告があります(Jallo 1996) |
病理で上衣腫と上衣下腫が混在する場合の画像の読み方
後頭蓋窩では、上衣腫と上衣下腫の両方の形態が混ざった腫瘍がまれではありません。50例の検討では、純粋な上衣腫が12例、上衣下腫が14例、混在型が24例でした。混在型は上衣腫の成分の割合が2〜95%とさまざまで、いずれも上衣下腫と同じ分子グループに分類されました。染色体6番の欠失とTERT変異は、上衣腫の成分で多くみられ、無増悪生存期間が短いことと関係していました。このことから、上衣下腫が経過の中で上衣腫の成分を生じると考えられています(Thomas C 2021)。
- 画像では、典型的な「造影されない境界明瞭な腫瘤」の中に、造影される部分や大きくなる部分があれば、上衣腫成分の混在を考えて所見に書いておくと、経過観察の参考になります
- 画像だけで上衣腫成分の有無を決めることはできません。診断は病理と分子検査を合わせて行います
- 同じ「上衣腫」の病名でも、部位や分子グループによって画像も予後も異なります。2016年以前の分類(古典的・退形成性の区別)は、2021年の分類では使われなくなりました(Ellison 2020)
名前が似ている「上衣下」の病変との違い
「上衣下」は脳室の壁(上衣)のすぐ下の層を指す言葉で、上衣下腫とはまったく別の病気にも使われます。
| 病名 | 主な年齢 | どんなものか |
|---|---|---|
| 上衣下腫 | 中高年 | 脳室壁から出るゆっくり育つ腫瘍。造影されないか弱い |
| 上衣下嚢胞 | 新生児 | 側脳室の床にできる小さな嚢胞。胚層(germinal matrix)が退縮してできる。基礎疾患がなければ発達は正常だったとの報告がある(Cevey-Macherel 2013) |
| 上衣下出血(胚層出血) | 早産児 | 胚層からの出血で、脳室内出血に広がることがある。主に頭部超音波で診断する(Cizmeci 2026) |
| 上衣下結節・上衣下巨細胞性星細胞腫 | 小児〜若年(結節性硬化症) | モンロー孔付近に多い。大きくなる・造影されるようになるのが進行のサイン(Clarke 2006) |
上衣下腫でよくある疑問(Q&A)
Q. 上衣下腫と上衣腫は画像でどう見分けますか?
A. 上衣下腫は成人に多く、造影されないか弱く、周りのむくみを伴わない境界明瞭な腫瘤です。上衣腫は部位ごとに特徴が違い、テント上ではZFTA融合型の嚢胞・出血・むくみや、YAP1融合型の花輪状の造影効果が手がかりになります(Thomas AG 2026)。画像で迷うときは年齢と部位を重ねて考えます。
Q. 病理で「混在」と言われたら悪性ですか?
A. 混在型は上衣下腫と同じ分子グループに分類されました。純粋な上衣腫の形態をもつ腫瘍は、無増悪生存期間が短かったと報告されています(Thomas C 2021)。症状があるときは主治医の説明を聞いてください。
Q. 頭痛や吐き気があるときはどうしますか?
A. 脳室の腫瘍は水頭症をきたすことがあります。症状が続くときは脳神経外科・脳神経内科を受診してください。
参考)よくわかる脳MRI第3版
参考文献
- Smith AB, Smirniotopoulos JG, Horkanyne-Szakaly I. From the radiologic pathology archives: intraventricular neoplasms: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2013;33(1):21-43. PubMed
- Louis DN, Perry A, Wesseling P, et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol. 2021;23(8):1231-1251. PubMed
- Koeller KK, Sandberg GD. From the archives of the AFIP. Cerebral intraventricular neoplasms: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2002;22(6):1473-505. PubMed
- Ragel BT, Osborn AG, Whang K, et al. Subependymomas: an analysis of clinical and imaging features. Neurosurgery. 2006;58(5):881-90. PubMed
- Zhang GJ, Cheng X, Chen C, et al. Survival of patients and risk factors for subependymoma: a population-based study. Neurol Res. 2023;45(2):173-180. PubMed
- Cevey-Macherel M, Forcada Guex M, Bickle Graz M, et al. Neurodevelopment outcome of newborns with cerebral subependymal pseudocysts at 18 and 46 months: a prospective study. Arch Dis Child. 2013;98(7):497-502. PubMed
- Cizmeci MN, Leijser LM, de Vries LS. Diagnostic neuroimaging and early detection of germinal matrix hemorrhage-intraventricular hemorrhage. Semin Fetal Neonatal Med. 2026;31(4):101726. PubMed
- Clarke MJ, Foy AB, Wetjen N, et al. Imaging characteristics and growth of subependymal giant cell astrocytomas. Neurosurg Focus. 2006;20(1):E5. PubMed
- Ellison DW, Aldape KD, Capper D, et al. cIMPACT-NOW update 7: advancing the molecular classification of ependymal tumors. Brain Pathol. 2020;30(5):863-866. PubMed
- Thomas AG, Chattopadhyay A, Dineen RA. Ependymal Tumors. Neuroimaging Clin N Am. 2026;36(1):69-83. PubMed
- Thomas C, Thierfelder F, Träger M, et al. TERT promoter mutation and chromosome 6 loss define a high-risk subtype of ependymoma evolving from posterior fossa subependymoma. Acta Neuropathol. 2021;141(6):959-970. PubMed
- Jallo GI, Zagzag D, Epstein F. Intramedullary subependymoma of the spinal cord. Neurosurgery. 1996;38(2):251-7. PubMed
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