胸部CTや胸部レントゲンの解剖を理解する上で切っても切れないのが、肺区域です。しかしこれが左右対象ではない上に、上から順番に番号が付いているわけでもなくややこしいのです。
肺区域以前に肺は肺葉に分けられます。
そこで今回は、肺葉の解剖、肺区域の解剖についてイラストを用いてわかりやすく解説しました。
肺葉の解剖
左右の肺を前から見た図
まず肺は肺葉に分けられます。
- 右肺:上葉、中葉、下葉 の3葉。
- 左肺:上葉、下葉 の2葉。
にそれぞれ分けられます。左肺の右肺でいう中葉にあたる部位は舌区と呼ばれますが、上葉の一部です。
右肺を肺葉に分ける構造は以下の2つです。
- 斜裂=大葉間裂(major fissure(メジャーフィッシャー))→上葉・中葉と下葉を分ける。
- 水平裂=小葉間裂(minor fissure(マイナーフィッシャー))→上葉と中葉を分ける。
一方で左肺は2葉であり、分ける構造物は1つのみです。
- 斜裂=大葉間裂(major fissure(メジャーフィッシャー))→上葉と下葉を分ける。
肺は左右対称ではありません。
さらに横から肺を見るとわかるように上から、上葉、中葉、下葉と均等に分けられているわけでなく、かなり上の方まで下葉があったり、かなり下まで中葉があったりしますので、注意が必要です。
左右の肺を外側から見た図
左右の肺を後ろから見た図
これを見てわかるように、背側では下葉はかなり上まで存在していますね。
正しいものを一つ選べ。
- 右肺は2葉、左肺は2葉からなる
- 右肺は3葉、左肺は2葉からなる
- 右肺は3葉、左肺は3葉からなる
正解!
不正解...
正解は右肺は3葉、左肺は2葉からなるです。
右肺:上葉、中葉、下葉 の3葉で、左肺:上葉、下葉 の2葉からなります。
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正しいものを一つ選べ。
- 小葉間裂は左側のみにある
- 小葉間裂は両側にある
- 小葉間裂は右側のみにある
正解!
不正解...
正解は小葉間裂は右側のみにあるです。
小葉間裂は右側のみにあり、上葉と中葉を分ける間裂です。
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肺区域の解剖
肺葉はさらに肺区域に分けられます。結核など肺の区域に一致した病変を示すこともあり、どこに病変があるのかを示す上で、
「右の上葉に病変がある。」
だけでなく、
「右の上葉のS2に病変がある。」
などと示した方がより部位を絞って示すことができます。
肺区域も左右対称ではなく、左はS1+2と表現したり、S7が存在しません。
右肺の肺区域は?
右肺葉に存在する肺区域は以下の通りです。
- 右上葉の肺区域:S1,S2,S3
- 右中葉の肺区域:S4,S5
- 右下葉の肺区域:S6,S7,S8,S9,S10
左肺の肺区域は?
左肺葉に存在する肺区域は以下の通りです。
- 左上葉の肺区域:S1+2,S3,S4,S5
- 左下葉の肺区域:S6,S8,S9,S10
左では、S1,S2とは言わずに、S1+2と表現すること、S7が存在しないのが特徴でした。
肺を正面から見ると、肺区域の解剖は図のようになります。S6は背側にあるため、前から見た場合は見えないということになります。
なおSはsegmentの頭文字のSです。
左肺には存在しない肺区域を一つ選べ。
- S8
- S7
- S6
正解!
不正解...
正解はS7です。
左肺にはS7は存在しません。またS1,S2とは言わずにS1+2と表現することも重要です。
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まとめ
肺は左右対称ではありません。まず肺葉に大きく分けられ、さらに肺葉は肺区域に分かれます。今回は、
- 肺を正面、側面、背面から見たときに肺葉はどのように見えるのか。
- 肺を正面から見たときに肺区域はどのように見えるのか。
ということを学びました。
CTで肺を見たときに肺区域はどのように見えるのかについては、別途こちらにまとめました。
→胸部CTの肺区域の解剖・覚え方は?ブロンコ体操でわかりやすく!
こんばんは。お忙しいところコメント失礼します。
肺区域の読影の練習を、このホームページの胸部画像診断ツールでさせていただいています。
何冊か本で調べても解決しないので質問させてください。
肺区域の明確な境目って、小葉間裂や大葉間裂といった構造物、右葉のS2とS3の境界となるV2C等以外に存在するのでしょうか?
例えば、S2、S3、S6で構成される右葉のスライスから頭側に上がって行ったときに、どこからS1にすればいいのかなぁと悩んでおります。
B1の支配範囲を追っていって、大体この辺がS1かなぁみたいな感じでいいのでしょうか。
コメントありがとうございます。
>どこからS1にすればいいのかなぁと悩んでおります。
B1の支配範囲を追っていって、大体この辺がS1かなぁみたいな感じでいいのでしょうか。
そうですね。明確な境界というのはないので、B1やA1を追うことになると思います。
動脈の方が末梢まで残って見やすいのでA1を追えばいいのではないでしょうか。
胸部画像診断ツールでも区域の境目は直線になっていたりすると思います。
動脈をメルクマールにして作成しています。
https://www.youtube.com/watch?v=m7RO98Kwnk0
回答ありがとうございます。
なるほど! 動脈を追っていけばいいんですね。
すっきりしました。
本当にありがとうございます。