腎梗塞は側腹部の痛みや腰痛の原因となります。
ただし、頻度が少ないのもあり、尿管結石などと誤診されたり、診断に有効な造影CT検査が施行されないこともしばしばあります。
今回は腎梗塞の特徴と画像診断で見るべきポイントをまとめました。
腎梗塞(renal infarction)とは?
腎動脈が急速に閉塞すると、腎組織は壊死に陥る。これを腎梗塞という。
腎動脈は終末動脈であるため急速に閉塞すると側副血行路を作る余裕がありません。
腎梗塞の原因は?
原因は大きく、
- 塞栓性:血栓などが飛んできて動脈が詰まる。
- 血栓性:動脈硬化などで動脈が狭窄する。
- 外傷性
- 静脈閉塞
に分かれるが、塞栓性がほとんど。
塞栓性では
- 心房細動
- 亜急性細菌性心内膜炎
- 弁膜症
などの心疾患に起因する心原性塞栓症がほとんどを占める。
※血栓症としては動脈硬化症、大動脈解離、腹部大動脈、結節性多発動脈炎、SLE、抗リン脂質抗体症候群などの基礎疾患に伴って生じる。
※その他、腎茎部損傷や血管造影時におけるカテーテル、ガイドワイヤー操作が原因となることもある。
腎梗塞の原因
ほとんどは、心原性の血栓が飛んできて詰まる塞栓性。
腎梗塞の症状は?検査所見は?
- 突然発症の側腹部痛、腰痛、悪心、嘔吐、発熱などの症状を呈する。
- 1/3の症例で血尿を認める。ただしほとんどは顕微鏡的血尿なので注意。
- 血液生化学検査で24時間以内に白血球増多、LDH・GOTの上昇を認める。ただし非特異的。
これらの所見と画像を組み合わせて診断します。
腎梗塞の治療は?
治療は、
- 血栓溶解療法
- 抗凝固療法
- 抗血小板療法
といった保存的治療が行われる。血栓溶解療法は、選択的に腎動脈へ注入する方法と全身療法がある。
腎梗塞の画像所見は?
- 単純CTではほとんど異常を認めない。
- 造影CTでは、閉塞した血管領域に一致する非造影領域として捉えられる。
- 腎動脈のどこが閉塞するかで大きく、
腎動脈本幹レベルでの閉塞により腎実質の50%以上が非造影域となるglobal infarction
腎動脈分枝レベルでの閉塞により皮質を底辺とする楔状の非造影域を示すfocal infarction
の2つの型に分けられる。
- エコーではドプラーエコーが有用。
症例 60歳代男性 背部痛、右下肢麻痺
cortical rim signとは?
- 被膜下皮質はさまざまな側副血行路があるため、腎皮質の外側縁のみに帯状の造影効果が残存することがある。これをcortical rim signと呼ぶ。
- 腎梗塞に特徴的な所見。
- ただし少なくとも発症から8時間を要する。
- 腎梗塞の50%に見られ、globalおよびfocal infarctionいずれでも出現する。
- ただし、腎梗塞に特異的ではなく、急性皮質壊死、腎静脈血栓症でも観察される。
- 1週間以降では全例認められたとの報告あり。
focal infarctionと同様の楔状低信号領域を示す急性腎盂腎炎との鑑別に有用とされます。
症例 70歳代男性 左腎梗塞
腎梗塞の鑑別診断は?
- 急性腎盂腎炎→症状やlabo dataといった臨床情報が役立つ。画像では非常に似ているが、腎梗塞ではcortical rim signが参考になる。
- 多発性転移
- 浸潤性腫瘍
- 腎外傷