回盲部を中心に侵す腸炎の鑑別診断をまとめました。
有名どころはエルシニア、結核、クローン病です。
炎症が、右半結腸や小腸にも及ぶ場合はさらに鑑別診断は増えてきます。
回盲部の腸炎の鑑別診断
- エルシニア:小児に好発
- 結核
- Crohn病
- 悪性リンパ腫
- 腸炎ビブリオ
- カンピロバクター
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エルシニア
- 回腸末端炎(腸間膜リンパ節炎)を引き起こす。
- 豚肉や生水などから感染する。
- リンパ組織との親和性が強く、回盲部のリンパ濾胞を主とする病変を形成し、リンパ節へ移行する。
- 診断は、便培養、血清抗体価測定(保険適応外)。
- CTにて、回腸末端に壁肥厚を認める。また回結腸動脈沿いにリンパ節腫大をきたす。右半結腸に及ぶことがあるが、回腸末端に限局することが多い。
腸炎ビブリオ
- 海産魚・貝などから感染。
- 産生毒素により病原性を生じる。
- CTにて、下部小腸〜右半結腸に壁肥厚を認める。
結核性腸炎(腸結核)
- 回盲部に好発。
- 活動性結核の合併は14-20%とされる。
- Crohn病と誤診してはいけない。ステロイドを投与すると増悪するので注意。
- 臨床症状は、下痢、嘔吐、悪心、イレウス、血便、腹部膨満、右下腹部痛。
- 合併症は狭窄による通過障害や腸閉塞、腸穿孔、膿瘍、瘻孔形成。
- 診断は便の結核菌培養や、病理組織診断による乾酪性肉芽腫および菌体の証明。
- 病型は潰瘍型、腫瘤形成型、混合型に分類。
- 潰瘍型では腸管内の結核菌が粘膜下へ浸潤し、リンパ濾胞内に結核結節を作る。この結節が粘膜面に破れ小潰瘍を形成、融合して大潰瘍を作る。
- 潰瘍治癒の線維化時に腸管狭窄を来す。
- イレウスの狭窄部は生理的に管腔が狭い小腸が大半。
- 穿孔や瘻孔形成は回腸末端に多い。
- 小腸のリンパ流が腸間膜対側のリンパ濾胞から腸管長軸に対して垂直に流れることで潰瘍が腸管軸に直角または斜めとなるため、狭窄の形態は輪状、帯状となる。
- 回盲部や結腸、空腸下部に好発する理由は、
- 内容物が生理的に停滞しやすい。
- パイエル板などのリンパ組織が豊富にある。
- 胃酸による菌の発育抑制が少ない。
ことが考えられる。
- 診断は、病理での結核菌の照明、乾酪壊死を伴う肉芽腫の照明など。
腸結核の画像所見
- CTはCrohn病に類似。
- 壁の繊維化を反映した均一濃染。著明な壁肥厚。壁肥厚は偏心性。瘻孔形成。
- 周囲リンパ節腫大は10mmを超えることあり。
うち、1/3でリンパ節内部の壊死性変化あり(Crohnと異なる点)