転移性肺腫瘍総論
・血行性肺転移が肺悪性腫瘍中の30-50%。
・原発腫瘍が静脈内に浸潤し、肺動脈経由がほとんど。
・気管支動脈経由の頻度は低い。
・血行性の他に、リンパ行性(乳癌が代表的)、経胸腔性、経気道性、直接浸潤。
・3/4が多発性。
CT所見
・両側性の境界明瞭・辺縁平滑な多発結節
・下肺野優位・末梢側優位
・大きさはさまざま
・びまん性粒状影ではランダムな分布
より細かく。
・3mm以下の肺転移巣のうち、11%が小葉中心に、68%が小葉内、21%が小葉間隔壁に認められる。
・肺転移の画像所見は、38%が境界明瞭で辺縁整、60%が境界明瞭で辺縁不整、16%が境界不明瞭で辺縁整、30%が境界不明瞭で辺縁不整な結節として認められる。
・不整な結節は咽・喉頭癌>大腸癌>乳癌
・腎細胞癌、肝細胞癌は辺縁明瞭・平滑な結節を呈する頻度が高い。
・組織型別では、腺癌や扁平上皮癌は辺縁明瞭・不整な結節。境界不明瞭な辺縁を呈した結節はすべて腺癌であったとの報告あり。
付随所見からの鑑別
・孤立性転移:大腸癌(30〜40%)、腎癌、精巣癌、乳癌、悪性黒色腫、骨肉腫、膀胱癌、乳癌。
・空洞性転移:頭頚部癌、子宮頸癌などの扁平上皮癌、肉腫、大腸癌、膵癌
・びまん性微小結節転移:腎癌、甲状腺髄様癌、肺癌、悪性黒色腫、乳癌、骨肉腫、絨毛癌、前立腺癌
・石灰化転移:骨肉腫、軟骨肉腫、大腸癌
多い原発巣
・肺転移で多い原発巣は、乳癌、大腸癌、腎癌、子宮癌、頭頚部癌、前立腺癌。
・高率に肺転移を起こすのは、甲状腺癌、骨肉腫、絨毛癌、精巣腫瘍、悪性黒色腫、Ewing肉腫など。
・腎癌、甲状腺癌、大腸癌、乳癌、唾液腺腫瘍などでは、腫瘍宿主関係で宿主側が優位にある状態では、たとえ多発肺転移を来しても、きわめて発育が緩徐で長期間無症状で生存できることも稀ではない。
・肺転移を起こしにくいのは、前立腺癌(多いにも入ってるが?)、神経系腫瘍。
【各論】
頭頸部腫瘍
・遠隔転移を来すことは、上咽頭の低分化型扁平上皮癌や唾液腺腫瘍を除きまれ。
・喉頭や舌の高分化型扁平上皮癌の肺転移は空洞形成を伴うことが多い。
・小唾液腺由来の腺様嚢胞癌は肺転移を生じやすいが、きわめて発育が緩徐。
消化管腫瘍
・結腸、直腸癌では孤立性あるいは数個の多発性結節性転移を起こす。画像所見は多彩。気管支腔内進展の例も多い。
・発育が比較的緩徐であるため、外科的切除の適応あり。時に腫瘍内に石灰化を伴う。
・胃の硬癌(印環細胞癌や低分化型腺癌)では癌性リンパ管症の形の肺転移を起こすことが多い。
肝細胞癌
・境界明瞭な円形の充実性病変。
・原発巣の多血性所見を反映して造影CTでよく濃染される。
・びまん性の肺塞栓性転移を起こすことあり。
胆管細胞癌
・結節性病変の場合が多いが、粘液産生のある高分化型腺癌の場合には、肺原発の粘液産生性気管支肺胞上皮癌と画像的に鑑別困難な場合もある。
膵癌
・辺縁不整な結節影として認められることが多い(lepidic lung metastais)。
腎癌
・比較的数の少ない大結節性転移を来すことが多いが、発育は緩徐。原発巣の多血性を反映して、造影CTで強く濃染される。
・原発巣を切除すると転移巣が縮小消失することがある。
・時に、気管支壁内転移を起こしたり、腹腔から横隔膜経由で縦隔から肺門リンパ節に転移することがある。
子宮頸癌
・肺転移巣からのリンパ行性に進展する傾向の強い腫瘍。
膀胱癌・尿管癌
・辺縁不整な結節影として認められるが、空洞を有することでも知られている。
前立腺癌
・肺転移を来すことは稀であるが、結節性転移より癌性胸膜炎を呈することが多いとされる。
軟部悪性腫瘍(骨肉腫、血管肉腫、悪性線維組織球腫)
・骨肉腫や血管肉腫で特徴のある所見を呈する場合もあるが、通常は境界明瞭な結節あるいは腫瘤で特徴的所見に乏しい。
甲状腺癌
・両側肺に微小な砂粒状の多発性結節の散布が見られるのが特徴。単発のこともある。
乳癌
・結節性転移や癌性リンパ管症型転移を来たし、胸水貯留を伴うことが多い。
・原発巣治療して5年以上経過した後遠隔転移を起こすことが稀ではない。骨転移に比較して肺転移は予後不良。
・肺癌と同様に多彩な転移像を呈する。
・単発転移の場合、原発性肺癌との鑑別が困難なことがある。