急性胆嚢炎の画像診断、症状、治療、手術、ガイドラインについてまとめました。
急性胆嚢炎(Acute cholecystitis)
・胆嚢頚部や胆嚢管に結石が嵌頓することによる急性閉塞性胆嚢炎が大部分(85~95%)で細菌感染は二次的なもの。つまり、ほとんどは胆石が原因。
関連記事)胆石の分類とCT画像診断のポイントは?
・起炎菌は大腸菌などのグラム陰性桿菌が多い。
・急性胆嚢炎の発生率は胆石の保有率に依存している。
・外科手術後(迷走神経切離を伴う胃癌、食道癌など)やHCCに対するTAE後などにも起こりやすい。
・症状は食後の右季肋部痛、圧痛・筋性防御、腫大胆嚢の触知、Murphy徴候(感度は50-60%)が重要。
・血液検査ではWBC↑、CRP↑、肝胆道系酵素↑(AST,ALT,ALP,γGTP,T-bil)
・治療は一般に胆嚢摘出術が基本治療であるが、診断後はまず第一に内科的治療(抗生剤、絶食、補液)が施行されることが多い。
・その後手術を勧める。発症後48時間以内の緊急手術が推奨される。しかし、すぐに手術できない場合、PTGBD(経皮経肝胆嚢ドレナージ)の適応となることもある。
・緊急手術になるのは、壊疽性胆嚢炎や胆嚢穿孔、気腫性胆嚢炎(ガス産生菌を含む混合型細菌感染による)・モリソン窩にfluid collectionを認めた場合。
・合併症がなければ予後は極めて良好。致死率は1%未満と、閉塞性化膿性胆管炎に比べると随分低い。
関連記事)急性胆管炎の画像診断
急性胆嚢炎の診断基準
- A. 右季肋部痛(心窩部痛)、圧痛、筋性防御、Murphy徴候
- B. 発熱、WBC↑またはCRP↑
- C. 急性胆嚢炎の特徴的な画像所見
- 疑診:Aのいずれかand Bのいずれかを認めるもの
- 確診:上記疑診に加え、Cを確認したもの。
「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」
急性胆嚢炎の重症度判定基準
重症急性胆嚢炎
急性胆嚢炎のうち、以下のいずれかを伴う場合は「重症」である。
- 黄疸
- 重篤な局所合併症:胆汁性腹膜炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍
- 胆嚢捻転症、気腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎
中等症急性胆嚢炎
急性胆嚢炎のうち、以下のいずれかを伴う場合は「中等症」である。
- 高度の炎症反応(WBC>14000 or CRP>10mg/dl)
- 胆嚢周囲液体貯留
- 胆嚢壁の高度炎症性変化:胆嚢壁不整像、高度の胆嚢壁肥厚
軽症急性胆嚢炎
「重症」「中等症」を満たさないもの。
「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」
急性胆嚢炎の画像診断
エコー
・エコーがfirst choice。感度88%、特異度80%。
- 胆嚢腫大
- 胆嚢壁肥厚
- 胆嚢内の結石、ガス像
- プローブによる胆嚢圧迫時の疼痛(sonographic Murphy sign)、
- 胆嚢周囲の液体貯留、
- 胆嚢壁sonolucent layer、
- 不整な多層構造を呈する低エコー域、ドプラシグナルなど。
※胆嚢腫大、壁肥厚の基準としては、長径8cm以上、短径4cm以上、胆嚢壁4mm以上が目安。
造影CT所見
- 胆嚢壁肥厚
※ただし、慢性胆嚢炎でも壁肥厚を認めるので、症状などと合わせて考えることが必要。慢性胆嚢炎の場合は、遷延性に造影される壁肥厚。 - 胆嚢周囲の液体貯留
- 胆嚢周囲肝実質の早期濃染
※胆のう床には肝臓へ還流する静脈の発達があり、胆嚢炎が起こると、胆のう→胆のう静脈→肝臓(胆のう床)へと還流した血流が増加するため。
- 胆嚢周囲脂肪組織濃度上昇
- 漿膜下浮腫
- 胆嚢内ガス像
- 胆嚢拡張
重症胆嚢炎の造影CT所見
- 胆嚢内腔あるいは壁内のガス像
- 胆嚢内の膜様構造
- 胆嚢壁の造影不良
- 胆嚢周囲膿瘍