肝腫瘍破裂(rupture of liver tumor)とは?
- 肝腫瘍が破裂して、腹腔内に出血をきたす病態。
- 破裂の原因は、肝細胞癌、血管腫、腺腫、転移性腫瘍など。
- 肝細胞癌の頻度が最も高い。中でも中分化型の多血性病変であることが多い。
- 破裂する肝細胞癌の多くは肝表面に位置している。
- 破裂時の血清総ビリルビン値が3.0mg/dl以上、門脈腫瘍栓症例では止血できても早期に肝不全に移行し、予後不良。
- 症状は、上腹部痛、肩への放散痛、腹部膨満感、腹部不快感、ショックなど。
- 治療は、輸液や輸血による初期治療で、循環動態を安定させ、止血法としてはTAEが第一選択となる。
肝腫瘍(肝臓癌)破裂のCT画像所見
- CTでは、単純、造影2相(動脈優位相、門脈優位相)を少なくとも撮影する。
※ただし全身状態が悪く腎機能障害があり、造影できないこともある。 - 単純CTでは血腫を反映して、高吸収域を認める。血性腹水は20-40HU、血腫は40-70HUと水濃度より高濃度を呈する。明らかな高吸収域を認めなくても、肝から突出した腫瘤から破裂することが多いため、その周囲の腹水のCTを測る。
- 造影CTでは、早期相から造影剤のextravasationや仮性動脈瘤を認める。
- ただし、extravasationが見られる頻度は15〜35%程度である。
症例 80歳代男性 HCC 突然の腹痛で救急搬送
腹部単純CTで肝臓に不均一な低吸収腫瘤を認めており、肝臓の辺縁には通常の腹水よりは濃度の高い(白い)腹水を認めています。
実際に、CT値を測定してみると
肝臓辺縁では平均で56HU、骨盤底では、35HUと通常の腹水よりはかなり高値であり、血性腹水であることがわかります。
造影剤を用いた造影CTでは、
腫瘍の辺縁に造影剤の漏出(extravasation)を認めています。
肝細胞癌の破裂と診断されました。
緊急アンギオで止血が施行されました。
腹腔動脈からの造影では、extravasationと思われる部位が検出されました。
症例 80歳代男性 HCC、突然の腹痛
造影CTで肝辺縁に高吸収の液体貯留を認めており、出血が疑われます。
肝臓下縁の腫瘍から高吸収は連続しており、この腫瘍の破裂による出血が疑われます。
緊急でTAE治療が施行されました。