先に結論:肝腫瘍破裂(肝臓がんの破裂)とは

  • 肝臓の腫瘍が破れておなかの中に出血する状態で、原因は肝細胞癌(肝臓がん)が最も多く、ほかに肝血管腫・肝細胞腺腫・転移などがあります。肝臓の表面から飛び出すように育った腫瘍が破れやすいです。肝細胞癌の患者さんの3〜15%に起こるとされます(Aziz 2024)
  • 症状は突然の上腹部痛・右肩への痛み・おなかの張り、出血が多いと血圧低下(ショック)になります。治療は輸液・輸血で全身状態を保ちながら、カテーテルで出血している血管を詰める治療(TAE:肝動脈塞栓術)が第一選択です
  • CTでは、単純CTで肝臓のまわりの濃い(白っぽい)腹水=血性腹水(CT値がふつうの腹水より高い)、造影CTで造影剤が血管の外へ漏れ出る所見(extravasation)や仮性動脈瘤を探します。外傷による肝損傷(肝破裂)でも同じように血性腹水が見られます

※肝臓の病気がある人の突然の強い腹痛・ふらつきは、すぐに救急受診してください。

肝腫瘍破裂(rupture of liver tumor)とは?

  • 肝腫瘍が破裂して、腹腔内に出血をきたす病態。
  • 破裂の原因は、肝細胞癌、血管腫、腺腫、転移性腫瘍など。
  • 肝細胞癌の頻度が最も高い。肝細胞癌の3〜15%に起こるとされ(Aziz 2024)、肝細胞癌4209例の施設では200例(4.8%)が破裂していました(Zhu 2012)。
  • 破裂する肝細胞癌の多くは肝表面に位置している。破裂した肝細胞癌12例のCTでは、全例が肝の辺縁にあり、肝表面から突出していました(Choi 2001)。
  • 破裂の危険因子として、高血圧、肝硬変、腫瘍径5cm超、脈管内の腫瘍栓、肝外への浸潤が挙げられています。肝表面からの突出は破裂例で66.0%、非破裂例で44.6%でした(Zhu 2012)。
  • 症状は、上腹部痛、肩への放散痛、腹部膨満感、腹部不快感、ショックなど。
  • 治療は、輸液や輸血による初期治療で、循環動態を安定させ、止血法としてはTAEが第一選択となる。TAEは急性期に最も低侵襲に止血できる方法で、止血成功率は53〜100%、30日死亡率は開腹手術の28〜75%に対しTAEは0〜37%と報告されています(Lai 2006)。全身状態と肝予備能が許せば、止血後に待機的に肝切除を行い、止血と根治を兼ねることもあります。9研究681例のメタ解析では、緊急肝切除はTAEで止血してから待機的に肝切除する方法に比べて院内死亡が多く(相対リスク2.17)、再発・腹膜転移・1年/3年生存率には差がありませんでした。

肝腫瘍(肝臓癌)破裂のCT画像所見

  • CTでは、単純、造影2相(動脈優位相、門脈優位相)を少なくとも撮影する。
    ※ただし全身状態が悪く腎機能障害があり、造影できないこともある。
  • 単純CTでは血腫を反映して、高吸収域を認める。血性腹水・血腫は水濃度より高濃度を呈する。明らかな高吸収域を認めなくても、肝から突出した腫瘤から破裂することが多いため、その周囲の腹水のCT値を測る。
  • 造影CTでは、早期相から造影剤のextravasationや仮性動脈瘤を認める。

肝細胞癌破裂を疑うCT所見のまとめ

破裂した肝細胞癌12例のヘリカルCTでは、次のような所見が見られました(Choi 2001)。

CT所見 見られた例
肝の辺縁にあり、表面から突出する腫瘍 12例中12例
肝表面の途切れ(連続性の断裂) 12例中11例
腫瘍のまわりの高吸収の血腫 12例中7例
enucleation sign(腫瘍の中身が辺縁の造影される縁から離れ、肝の外へ出ている) 12例中7例

これに、単純CTでの血性腹水(ふつうの腹水よりCT値が高い)と、造影CTでのextravasationを合わせて評価します。

症例 80歳代男性 HCC 突然の腹痛で救急搬送

rupture of HCC plain CT findings

腹部単純CTで肝臓に不均一な低吸収腫瘤を認めており、肝臓の辺縁には通常の腹水よりは濃度の高い(白い)腹水を認めています。

実際に、CT値を測定してみると

rupture of HCC CT findings3

肝臓辺縁では平均で56HU、骨盤底では、35HUと通常の腹水よりはかなり高値であり、血性腹水であることがわかります。

造影剤を用いた造影CTでは、

rupture of HCC contrast CT findings

腫瘍の辺縁に造影剤の漏出(extravasation)を認めています。

肝細胞癌の破裂と診断されました。

rupture of HCC CT findings7

緊急アンギオで止血が施行されました。

腹腔動脈からの造影では、extravasationと思われる部位が検出されました。

症例 80歳代男性 HCC、突然の腹痛

ruptureofHCC

造影CTで肝辺縁に高吸収の液体貯留を認めており、出血が疑われます。

肝臓下縁の腫瘍から高吸収は連続しており、この腫瘍の破裂による出血が疑われます。

緊急でTAE治療が施行されました。

参考文献

  1. Sahu SK, Chawla YK, Dhiman RK, et al. Rupture of Hepatocellular Carcinoma: A Review of Literature. J Clin Exp Hepatol. 2019;9(2):245-256. PubMed
  2. Lubner M, Menias C, Rucker C, et al. Blood in the belly: CT findings of hemoperitoneum. Radiographics. 2007;27(1):109-25. PubMed
  3. Kim PT, Su JC, Buczkowski AK, et al. Computed tomography and angiographic interventional features of ruptured hepatocellular carcinoma: pictorial essay. Can Assoc Radiol J. 2006;57(3):159-68. PubMed
  4. Lai EC, Lau WY. Spontaneous rupture of hepatocellular carcinoma: a systematic review. Arch Surg. 2006;141(2):191-8. PubMed
  5. Zhang W, Huang Z, Che X. Emergency versus delayed hepatectomy following transarterial embolization in spontaneously ruptured hepatocellular carcinoma survivors: a systematic review and meta-analysis. World J Surg Oncol. 2022;20(1):365. PubMed
  6. Aziz H, Kwon YIC, Park A, et al. Comprehensive review of clinical presentation, diagnosis, management, and prognosis of ruptured hepatocellular carcinoma. J Gastrointest Surg. 2024;28(8):1357-1369. PubMed
  7. Choi BG, Park SH, Byun JY, et al. The findings of ruptured hepatocellular carcinoma on helical CT. Br J Radiol. 2001;74(878):142-6. PubMed
  8. Zhu Q, Li J, Yan JJ, et al. Predictors and clinical outcomes for spontaneous rupture of hepatocellular carcinoma. World J Gastroenterol. 2012;18(48):7302-7. PubMed

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