内陰部動脈(internal pudendal artery)は、内腸骨動脈系の枝であり、会陰部、肛門周囲、外陰部、陰茎・陰核などを栄養する重要な動脈である。

通常の腹部骨盤造影CTでは細い血管として描出されるため見逃されやすいが、骨盤外傷、会陰部出血、骨盤内腫瘍、血管塞栓術、術前血管評価などでは走行を理解しておく必要がある。

特に骨盤骨折では、内陰部動脈損傷により坐骨直腸窩や会陰部に造影剤血管外漏出を来すことがあり、CTで出血源を推定するうえで重要である。

また、内陰部動脈は下殿動脈と共通幹を形成することが多く、分岐パターンのvariationを意識して読影する必要がある。

ポイント

  • 内陰部動脈は、主に内腸骨動脈前枝から分岐する。
  • しばしば下殿動脈と共通幹を形成する。
  • 骨盤内から一度大坐骨孔を出て、坐骨棘・仙棘靱帯周囲を回り、小坐骨孔から会陰部へ入る。
  • 会陰部では坐骨直腸窩の外側、閉鎖筋膜内の陰部神経管(Alcock管)付近を走行する。
  • 終末枝として、陰茎・陰核背動脈、深動脈などに連続する。

内陰部動脈の起始

内陰部動脈は、一般に内腸骨動脈前枝の終末枝の一つとして分岐する。内腸骨動脈は上殿動脈、下殿動脈、内陰部動脈などの骨盤壁・殿部・会陰部へ向かう枝を出すが、その分岐様式には個人差が多い。

解剖学的研究では、内腸骨動脈の分岐様式において、上殿動脈が単独で分岐し、下殿動脈と内陰部動脈が共通幹を形成する型が多いとされる。したがってCTで内陰部動脈を追う際には、「内腸骨動脈前枝から直接分岐する血管」と決めつけず、まず下殿動脈との共通幹を探すのが実践的である。

CTでの追い方

内陰部動脈は細い血管であるため、通常の横断像のみで追跡するよりも、動脈相CT、MPR、MIP、VR画像を併用すると理解しやすい。追跡の基本は、内腸骨動脈から末梢側へ向かって順に確認することである。

1. 内腸骨動脈を確認する

まず総腸骨動脈分岐部から内腸骨動脈を同定する。内腸骨動脈は骨盤内へ入り、前枝と後枝に分かれる。上殿動脈は後方へ向かい大坐骨孔から殿部へ出るため、これをランドマークとして、より尾側・前方の枝を確認する。

2. 下殿動脈との共通幹を探す

内陰部動脈は、下殿動脈と共通幹を形成することが多い。CTでは、内腸骨動脈から後下方へ向かう比較的太い枝として見え、その後、殿部へ向かう下殿動脈と、坐骨棘周囲から会陰部へ回り込む内陰部動脈に分かれる。

3. 坐骨棘周囲で折り返す血管を確認する

内陰部動脈の解剖学的特徴は、骨盤腔から一度外へ出て、坐骨棘周囲を回り込むことである。大坐骨孔を通って骨盤外へ出た後、坐骨棘・仙棘靱帯の背側付近を走行し、小坐骨孔を通って会陰部へ入る。

CT横断像では、坐骨棘レベルで外側・後方に向かう小血管として確認できることがある。冠状断や斜位MPRを用いると、骨盤内から会陰部へ回り込む立体的な走行を把握しやすい。

4. 坐骨直腸窩外側を走る血管を追う

会陰部に入った内陰部動脈は、坐骨直腸窩の外側壁に沿って前方へ走行する。閉鎖内筋の筋膜内に形成される陰部神経管、いわゆるAlcock管の近傍を走るため、CTでは坐骨結節内側、閉鎖内筋外側〜内側縁付近を意識して観察する。

5. 恥骨下枝・坐骨恥骨枝に沿う末梢枝を確認する

内陰部動脈は前方へ進み、陰茎・陰核方向へ向かう終末枝へ移行する。男性では陰茎背動脈、陰茎深動脈、尿道球動脈などに分岐し、女性では陰核背動脈、陰核深動脈、前庭球枝などに相当する枝を出す。

CTでは、末梢枝は非常に細いため、通常の門脈相CTでは明瞭でないことが多い。しかし動脈相CTAでは、坐骨恥骨枝に沿って前方へ走る血管として確認できる場合がある。

 

症例 70歳代男性 透析患者

ただし、上の症例のように単純CTであっても動脈硬化が強く両側の内陰部動脈を追うことができることもある。

CT画像でのランドマーク

内陰部動脈を同定する際には、以下の構造をランドマークにするとよい。

ランドマーク 読影上の意味
内腸骨動脈 内陰部動脈の起始部を探す出発点である。
下殿動脈 内陰部動脈と共通幹を形成することが多い。
坐骨棘 内陰部動脈が骨盤外から会陰部へ回り込む重要な目印である。
坐骨直腸窩 内陰部動脈損傷による血腫や造影剤漏出が出現しやすい部位である。
坐骨恥骨枝 末梢の内陰部動脈・陰茎/陰核動脈枝を追う際の骨性ランドマークである。
閉鎖内筋 Alcock管付近を走る内陰部動脈を同定する際に有用である。

内陰部動脈の主な分枝

内陰部動脈は、会陰部・外陰部・肛門周囲を栄養する複数の枝を出す。代表的な分枝は以下である。

下直腸動脈

下直腸動脈は、肛門管下部、外肛門括約筋、肛門周囲皮膚などを栄養する。坐骨直腸窩内を内側へ向かって走行するため、肛門周囲膿瘍、痔核、肛門周囲腫瘍、外傷性出血などの評価で意識される。

会陰動脈

会陰動脈は、浅会陰隙の筋群、陰嚢または大陰唇、会陰皮膚などへ分布する。CTでは細く描出困難なことが多いが、会陰部の血腫や動脈性出血を認める場合には、内陰部動脈からの分枝損傷を考慮する。

陰茎球動脈・前庭球動脈

男性では陰茎球動脈、女性では前庭球動脈に相当する枝が分岐し、尿道球部や前庭球を栄養する。尿道損傷や会陰部外傷では、これらの枝の損傷が問題となることがある。

陰茎深動脈・陰核深動脈

陰茎深動脈または陰核深動脈は、海綿体へ向かう重要な枝である。勃起機能に関与する血管であり、CTAや血管造影では血管性勃起障害の評価、外傷後血管評価、再建術前評価などで問題となる。

陰茎背動脈・陰核背動脈

陰茎背動脈または陰核背動脈は、陰茎・陰核の背側を走行する終末枝である。前方へ向かう内陰部動脈末梢枝として、造影CT動脈相やCTAで確認できることがある。

内陰部動脈と鑑別すべき血管

骨盤CTで内陰部動脈と混同しやすい血管として、下殿動脈、閉鎖動脈、中直腸動脈、外陰部へ向かう外陰部動脈系がある。

下殿動脈との鑑別

下殿動脈は内陰部動脈と共通幹を形成することが多いが、分岐後は殿部へ向かって大坐骨孔を通り、臀筋群へ分布する。これに対して内陰部動脈は、坐骨棘周囲を回り込んで会陰部へ入る。したがって、殿部へ向かう枝か、会陰部へ折り返す枝かを確認することが鑑別の要点である。

閉鎖動脈との鑑別

閉鎖動脈は骨盤側壁を前方へ走り、閉鎖孔・閉鎖管へ向かう。内陰部動脈はより後下方を走行し、坐骨棘周囲から会陰部へ向かう。閉鎖動脈は寛骨臼内側、閉鎖孔近傍の出血源として重要であり、内陰部動脈とは走行部位が異なる。

中直腸動脈との鑑別

中直腸動脈は直腸側方へ向かう枝であり、直腸壁や周囲組織を栄養する。内陰部動脈の下直腸動脈枝も肛門管周囲へ向かうため、末梢では走行が近接することがある。直腸側方を内側へ向かう血管か、坐骨直腸窩外側から会陰部前方へ走る血管かを意識する。

骨盤外傷における内陰部動脈の重要性

骨盤骨折では、内腸骨動脈系の枝が損傷され、活動性出血を来すことがある。内陰部動脈損傷では、CTで坐骨直腸窩、会陰部、恥骨下枝・坐骨枝周囲に血腫や造影剤血管外漏出を認めることがある。

特に下恥骨枝骨折、坐骨枝骨折、会陰部外傷を伴う症例では、内陰部動脈またはその分枝からの出血を考慮する。CTで坐骨直腸窩内に造影剤漏出がある場合、出血源として内陰部動脈を疑うことが重要である。

血管造影では、内陰部動脈からの活動性出血が確認されれば、マイクロカテーテルを用いた選択的塞栓術の対象となる。骨盤骨折に伴う動脈性出血では、TAEが有効な止血法となりうるが、塞栓範囲、塞栓物質、側副血行、虚血合併症に注意する必要がある。

内陰部動脈のvariation

内陰部動脈のvariationとして重要なのは、起始部の違いである。典型的には内腸骨動脈前枝から分岐するが、実際には下殿動脈との共通幹、上殿動脈・下殿動脈との分岐パターンの違い、左右差などが存在する。

内腸骨動脈分岐の解剖学的研究では、上殿動脈、下殿動脈、内陰部動脈を主要枝として分類した場合、上殿動脈が単独で分岐し、下殿動脈と内陰部動脈が共通幹を形成する型が多いとされる。したがって、CTで内陰部動脈が単独枝として明瞭に起始しない場合でも、下殿動脈との共通幹から分岐していないかを確認する必要がある。

また、陰茎・陰核へ向かう血流には、内陰部動脈以外に副内陰部動脈が関与することがある。副内陰部動脈は前立腺周囲や膀胱周囲から陰茎方向へ向かう血管として描出されることがあり、前立腺手術、前立腺動脈塞栓術、勃起機能温存の観点で重要である。

出典

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  7. Kenhub. Internal pudendal artery: Anatomy, branches and supply.

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