先に結論:内閉鎖筋の解剖

  • 内閉鎖筋は骨盤の内側の閉鎖膜とその周りから起こり、小坐骨孔を通って大腿骨の大転子内側面に付く筋肉です
  • 股関節の外旋を行い、CTでは骨盤の側壁を覆う筋肉として見えます
  • 支配神経は内閉鎖筋神経で、梨状筋の下から骨盤の外へ出て小坐骨孔から入り直し、内閉鎖筋に届きます(閉鎖神経ではありません)
  • 骨盤内のリンパ節(閉鎖リンパ節)・腫瘍の側壁浸潤・閉鎖孔ヘルニアの評価で、位置関係の目印になります

内閉鎖筋(ないへいさきん:obturator internus muscle)は、骨盤内面の閉鎖膜周囲およびその周囲骨から起こり、小坐骨切痕を通って骨盤外へ出て、大腿骨大転子内側に停止する筋です。

骨盤深部に位置する筋であり、股関節の外旋筋群のひとつとして重要です。

骨盤CT、股関節CTでは比較的安定して描出される筋であり、骨盤内膿瘍、炎症、筋内血腫、腫瘍性病変、坐骨直腸窩や骨盤壁病変の局在診断において重要なランドマークとなります。

内閉鎖筋のCT画像の解剖

骨盤CTやMRI画像を読む上で内閉鎖筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。

解剖がよく理解できるように骨盤の実際のCT画像の内閉鎖筋に色を付けてみました。

CTの横断像では以下の場所に内閉鎖筋があります。

内閉鎖筋は、骨盤内面から起こり、小坐骨切痕を回って骨盤外へ出て大腿骨へ停止する、やや独特な走行をもつ筋です。

内閉鎖筋は閉鎖孔の内側で骨盤側壁に沿って存在する扁平〜やや厚みのある筋として描出されます。内側には骨盤内臓器や脂肪織、外側には閉鎖孔と骨盤骨、後方には梨状筋や仙棘靱帯・仙結節靱帯周囲構造、下方には坐骨直腸窩が位置します。小児の骨盤内の化膿性筋炎(pyomyositis)では内閉鎖筋が最も多い罹患部位と報告されています(8例中5例、別の報告では13例中62%)。発熱と股関節痛のある小児では、股関節炎だけでなく内閉鎖筋の腫大や膿瘍の有無も確認しましょう。

骨盤内では閉鎖孔内面を覆う筋であり、後方で腱となって小坐骨切痕を折れ曲がるように通過し、骨盤外で大腿骨大転子へ向かう筋として理解することで、CTでの位置関係を把握しやすくなります。

CT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→内閉鎖筋(obturator internus muscle)のCT画像の解剖

内閉鎖筋の起始と停止

起始

  • 閉鎖膜の骨盤面
  • 閉鎖孔周囲の骨性辺縁
  • 恥骨枝および坐骨枝の内面
  • 坐骨の内面の一部
  • 一部は閉鎖筋膜から起こる

停止

  • 腱となって小坐骨切痕を通過
  • 大腿骨大転子内側面(転子窩の前上方)に停止

実用上は、内閉鎖筋は閉鎖孔内面から起こり、小坐骨切痕を回って大転子内側へ停止すると理解すれば十分である。CT読影では、起始部よりもむしろ「骨盤内面を覆う筋」と「後方で骨盤外へ折れ曲がって出る腱」の二段構えで把握するとわかりやすい。

内閉鎖筋の走行の特徴

内閉鎖筋の最大の特徴は、その走行が単純な直線ではないことである。骨盤内では側壁に沿って広く存在するが、後方で腱性成分となると、小坐骨切痕を通過する際にほぼ直角に近い方向転換を行う。この部位では小坐骨切痕部の骨性構造が滑車のような役割を果たし、腱はその表面を滑走して骨盤外へ向かう。

そのため、画像で内閉鎖筋を理解する際は、単一断面だけでなく、骨盤内から股関節後方への連続性を意識することが重要である。骨盤内だけを見ていると「骨盤側壁の筋」に見えるが、股関節周囲では「深層外旋筋」として現れる。

内閉鎖筋の作用

  • 股関節外旋
  • 股関節屈曲位での外転補助
  • 大腿骨頭の寛骨臼内での安定化

内閉鎖筋は深層外旋筋群の一員として、股関節伸展位では外旋、屈曲位では外転補助に関与する。また、他の短外旋筋と同様に、大腿骨頭を寛骨臼に安定化させる役割も重要である。

神経支配

内閉鎖筋は内閉鎖筋神経により支配される。一般に神経根レベルはL5〜S2とされる。これは閉鎖神経支配ではなく、名称が似ていても神経支配は別である点に注意が必要である。

内閉鎖筋神経の走行

内閉鎖筋神経は仙骨神経叢から出て、梨状筋下孔から骨盤の外(殿部)へ出ます。坐骨棘の後ろを回って小坐骨孔から再び会陰側へ入り、内閉鎖筋の骨盤面に入ります。途中で上双子筋にも枝を出します。陰部神経・内陰部動静脈と並んで走るため、殿部深部の手術や病変ではこれらとの位置関係が問題になります。

小坐骨切痕・小坐骨孔とは

小坐骨切痕は、坐骨棘と坐骨結節の間にある骨のくぼみです。ここに仙棘靱帯と仙結節靱帯が張ることで小坐骨孔ができます。小坐骨孔は内閉鎖筋の腱、陰部神経、内陰部動静脈、内閉鎖筋神経の通り道です。内閉鎖筋の腱はこの切痕で向きを大きく変えるため、切痕の部分には滑液包があります。

この滑液包に液体がたまる内閉鎖筋滑液包炎では、MRIで内閉鎖筋腱と坐骨後面の溝の間に「ブーメラン状」の液体貯留が見えると報告されています(Hwang 2008)。

内閉鎖筋と外閉鎖筋の違い

内閉鎖筋 外閉鎖筋
位置 閉鎖孔の内面(骨盤の側壁) 閉鎖孔の外面(骨盤の外)
通り道 小坐骨孔を通って骨盤の外へ 大腿骨頸部の後下方を回る
停止 大転子の内側面 転子窩
支配神経 内閉鎖筋神経 閉鎖神経(後枝)

外閉鎖筋の詳しい解剖は外閉鎖筋のCT画像の解剖をご覧ください。

内閉鎖筋でよくある疑問(Q&A)

Q. 内閉鎖筋の英語と読み方は?
A. 英語はobturator internus (muscle)、読み方は「ないへいさきん」です。

Q. 内閉鎖筋の作用は?
A. 主な作用は股関節の外旋です。股関節を曲げた姿勢では外転を助け、大腿骨頭を寛骨臼に安定させる働きもあります。

Q. 内閉鎖筋の膿瘍はどのくらいあるのですか?
A. 発熱・股関節痛で受診した小児の検討では、股関節周囲の筋肉の感染は化膿性股関節炎の2倍以上多く、その60%超で閉鎖筋群が侵されていました(Menge 2014)。股関節の痛みと発熱が続くときは、早めに医療機関を受診してください。

【腹部CT読影用】骨盤・大腿部周辺の筋肉解剖まとめ

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参考文献:

  1. Larson MR, Mazur S. Anatomy, Abdomen and Pelvis, Obturator Muscles. StatPearls Publishing; updated 2025.
  2. Fischerova D, et al. Ultrasound assessment of the pelvic sidewall: methodological consensus opinion. Ultrasound Obstet Gynecol. 2025;65(1):94-105.
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  7. Bertrand SL, Lincoln ED, Prohaska MG. Primary pyomyositis of the pelvis in children: a retrospective review of 8 cases. Orthopedics. 2011;34(12):e832-40. PubMed
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