先に結論:大腰筋の解剖
- 大腰筋は第12胸椎〜第5腰椎の椎体と横突起から起こり、腸骨筋と合わさって(腸腰筋)大腿骨の小転子に付く筋肉です
- 股関節を曲げる主な筋肉で、筋肉の中を腰神経叢が通ります。支配神経は主にL1〜L3の前枝(腰神経叢からの直接枝)です
- 腸腰筋膿瘍(化膿性脊椎炎や腎・腸の炎症から)・血腫の評価や、サルコペニアの指標(大腰筋の面積)として、CTでよく評価される筋肉です
大腰筋(だいようきん:psoas major muscle)は、腰椎の前外側から起こり、骨盤内を下行して大腿骨小転子に停止する細長い筋であり、腸骨筋とともに腸腰筋複合体を構成します。
腹部CT、骨盤CT、股関節CTでは比較的安定して描出される筋であり、後腹膜病変、筋内血腫、膿瘍、筋萎縮、腫瘍性病変の局在診断において重要なランドマークとなります。
大腰筋の基本データ(一覧)
| 場所(どこ?) | 腰椎の両わき〜骨盤内〜鼠径部の後腹膜。CTでは腰椎椎体の前外側 |
|---|---|
| 起始 | T12〜L5椎体側面・椎間板、L1〜L5横突起 |
| 停止 | 腸骨筋と合流し、大腿骨小転子 |
| 支配神経 | L1〜L3前枝(腰神経叢の直接枝) |
| 主な作用 | 股関節の屈曲、腰椎の安定化 |
大腰筋のCT画像の解剖
腹部のCTやMRI画像を読む上で大腰筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に大腰筋があります。

腹部CT横断像では、大腰筋は腰椎椎体の前外側に接する左右対称の縦長筋として描出されます。
したがって、CTでは「椎体前外側の縦走筋」としてまず大腰筋を認識し、その後方に腰方形筋、外側に腸骨筋があると考えると理解しやすいです。
CT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→大腰筋(psoas major muscle)のCT画像の解剖
大腰筋の起始と停止
起始
- T12〜L5椎体側面
- T12〜L4またはL5椎間板
- L1〜L5横突起
停止
- 腸骨筋と合流して腸腰筋腱を形成し、大腿骨小転子へ停止
一般的には、浅層は胸腰椎椎体・椎間板から、深層は腰椎横突起から起こると整理されることが多い。すなわち、大腰筋は「脊椎由来の筋」であり、そこから骨盤内を通って大腿骨へ向かう長い走行をもつ。
腸腰筋を作る3つの筋の違い
| 筋 | 起始 | 停止 | 支配神経 |
|---|---|---|---|
| 大腰筋 | T12〜L5椎体・横突起 | 小転子 | L1〜L3前枝 |
| 腸骨筋 | 腸骨窩 | 小転子(大腰筋と合流) | 大腿神経 |
| 小腰筋 | T12・L1椎体 | 恥骨の腸恥隆起付近 | L1前枝 |
小腰筋は大腰筋の前面にある細い筋で、ない人もいます。CTでは大腰筋と腸骨筋が骨盤内で一つにまとまり、腸腰筋として見えます。
大腰筋の層構造と腰神経叢との関係
大腰筋は単純な一塊の筋ではなく、浅層線維と深層線維からなる層構造を有する。この層の間、あるいは筋実質内には腰神経叢が走行しており、解剖学的にも臨床的にも重要である。
腰神経叢は多くの場合、大腰筋の内部、特に後方寄りに位置する。したがって、大腰筋病変や後腹膜病変では、筋自体の異常だけでなく、腰神経叢への影響も問題となりうる。画像上は神経そのものを明瞭に描出しにくいことも多いが、大腰筋の腫大、血腫、膿瘍を見た場合には神経症状との関連を意識すべきである。
大腰筋の作用
- 股関節屈曲
- 大腿外旋の補助
- 体幹前屈の補助
- 腰椎および股関節の安定化
- 立位・歩行時の姿勢制御
大腰筋は股関節屈曲筋として有名であるが、それだけではない。脊椎由来の筋であるため、腰椎の安定化や体幹姿勢の維持にも深く関与する。とくに立位や座位での姿勢保持、歩行時の下肢前方振り出しで重要な役割を果たす。
神経支配
大腰筋は主としてL1〜L3前枝の支配を受ける。腸骨筋が主に大腿神経支配であるのに対し、大腰筋は腰神経叢由来の直接枝で支配される点が解剖学的に異なる。この違いは、神経障害や萎縮パターンの理解に役立つ。大腰筋はサルコペニア評価にも用いられ、第3腰椎レベルの単純CTで測った大腰筋面積を身長の2乗で割った値(PMI)について、日本人の生体肝移植ドナーのデータから低骨格筋量のカットオフを男性6.36 cm²/m²、女性3.92 cm²/m²とする提案がある(PMID: 27292773)。日本肝臓学会のサルコペニア判定基準(第2版)では、筋肉量計測ソフトを持たない施設の簡易法として、manual trace法によるこのPMIのカットオフ値(男性6.36、女性3.92 cm²/m²)を用いてもよいとされています(日本肝臓学会 2021)。
大腰筋でよくある疑問(Q&A)
Q. 大腰筋の支配神経は?
A. 主にL1〜L3の前枝で、腰神経叢から直接枝を受けます。腸骨筋は主に大腿神経の支配です。
Q. 腸腰筋膿瘍はCTでどう見えますか?
A. 大腰筋が左右差をもって腫れ、内部に液体の濃さの部分が見えます。腸腰筋の病気は症状がはっきりしないことがあり、断面画像による診断が役立つとされます(Cronin 2008)。腰や脚の付け根の痛み・発熱が続くときは医療機関を受診してください。
関連記事:前鋸筋のCT画像の解剖と起始停止のまとめ
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実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの腹部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は腹部CTの解剖にまとめています。
参考文献:
- Siccardi MA, Varacallo M. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb: Psoas Major. StatPearls Publishing; updated 2023.
- Bordoni B, Varacallo M. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Iliopsoas Muscle. StatPearls Publishing; updated 2023.
- Cronin CG, Lohan DG, Meehan CP, Delappe E, McLoughlin R, O’Sullivan GJ, McCarthy P. Anatomy, pathology, imaging and intervention of the iliopsoas muscle revisited. Emerg Radiol. 2008;15(5):295-310. PubMed
- Kirchmair L, et al. Lumbar plexus and psoas major muscle: not always as expected. Reg Anesth Pain Med. 2008;33(2):109-114.
- Kepler CK, et al. Anatomy of the psoas muscle and lumbar plexus with respect to the surgical approach for lateral transpsoas interbody fusion. Eur Spine J. 2011;20(4):550-556.
- Benglis DM, et al. An anatomical study of the lumbosacral plexus as related to the minimally invasive transpsoas approach to the lumbar spine. J Neurosurg Spine. 2009;10(2):139-144.
- Farny J, et al. Anatomy of the posterior approach to the lumbar plexus block. Can J Anaesth. 1994;41(6):480-485.
- Hamaguchi Y, Kaido T, Okumura S, et al. Proposal for new diagnostic criteria for low skeletal muscle mass based on computed tomography imaging in Asian adults. Nutrition. 2016;32(11-12):1200-1205. PubMed
- 日本肝臓学会. 日本肝臓学会が提唱するサルコペニアの判定基準(第2版). 2021. PDF
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