大腰筋(だいようきん:psoas major muscle)は、腰椎の前外側から起こり、骨盤内を下行して大腿骨小転子に停止する細長い筋であり、腸骨筋とともに腸腰筋複合体を構成します。
腹部CT、骨盤CT、股関節CTでは比較的安定して描出される筋であり、後腹膜病変、筋内血腫、膿瘍、筋萎縮、腫瘍性病変の局在診断において重要なランドマークとなります。
大腰筋のCT画像の解剖
腹部のCTやMRI画像を読む上で大腰筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に大腰筋があります。

腹部CT横断像では、大腰筋は腰椎椎体の前外側に接する左右対称の縦長筋として描出されます。
したがって、CTでは「椎体前外側の縦走筋」としてまず大腰筋を認識し、その後方に腰方形筋、外側に腸骨筋があると考えると理解しやすいです。
CT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→大腰筋(psoas major muscle)のCT画像の解剖
大腰筋の起始と停止
起始
- T12〜L5椎体側面
- T12〜L4またはL5椎間板
- L1〜L5横突起
停止
- 腸骨筋と合流して腸腰筋腱を形成し、大腿骨小転子へ停止
一般的には、浅層は胸腰椎椎体・椎間板から、深層は腰椎横突起から起こると整理されることが多い。すなわち、大腰筋は「脊椎由来の筋」であり、そこから骨盤内を通って大腿骨へ向かう長い走行をもつ。
大腰筋の層構造と腰神経叢との関係
大腰筋は単純な一塊の筋ではなく、浅層線維と深層線維からなる層構造を有する。この層の間、あるいは筋実質内には腰神経叢が走行しており、解剖学的にも臨床的にも重要である。
腰神経叢は多くの場合、大腰筋の内部、特に後方寄りに位置する。したがって、大腰筋病変や後腹膜病変では、筋自体の異常だけでなく、腰神経叢への影響も問題となりうる。画像上は神経そのものを明瞭に描出しにくいことも多いが、大腰筋の腫大、血腫、膿瘍を見た場合には神経症状との関連を意識すべきである。
大腰筋の作用
- 股関節屈曲
- 大腿外旋の補助
- 体幹前屈の補助
- 腰椎および股関節の安定化
- 立位・歩行時の姿勢制御
大腰筋は股関節屈曲筋として有名であるが、それだけではない。脊椎由来の筋であるため、腰椎の安定化や体幹姿勢の維持にも深く関与する。とくに立位や座位での姿勢保持、歩行時の下肢前方振り出しで重要な役割を果たす。
神経支配
大腰筋は主としてL1〜L3前枝の支配を受ける。腸骨筋が主に大腿神経支配であるのに対し、大腰筋は腰神経叢由来の直接枝で支配される点が解剖学的に異なる。この違いは、神経障害や萎縮パターンの理解に役立つ。
参考文献:
- Siccardi MA, Varacallo M. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb: Psoas Major. StatPearls Publishing; updated 2023.
- Bordoni B, Varacallo M. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Iliopsoas Muscle. StatPearls Publishing; updated 2023.
- Cronin CG, Lohan DG, Meehan CP, Delappe E, McLoughlin R, O’Sullivan GJ, McCarthy P. Anatomy, pathology, imaging and intervention of the iliopsoas muscle revisited. Emerg Radiol. 2008;15(5):295-310.
- Kirchmair L, et al. Lumbar plexus and psoas major muscle: not always as expected. Reg Anesth Pain Med. 2008;33(2):109-114.
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