ヒトの脊柱は、側面から見た際に直線ではなく、緩やかなS字状のカーブを描いている。

これを「脊柱の生理的弯曲(Physiological Curvature)」と呼びます。

この弯曲は、直立二足歩行を行う人間が重力に対して効率的に姿勢を保持し、歩行時の衝撃を吸収するバネ(shock absorber)としての役割を果たすために不可欠な構造です。

今回は、頚椎・胸椎・腰椎それぞれの正常な弯曲と、画像診断における評価ポイントについてまとめました。

各椎体における生理的弯曲とは?定義は?

  • 脊柱の弯曲は、前方に凸となる「前弯(Lordosis)」と、後方に凸となる「後弯(Kyphosis)」に大別される。
  • 脊柱の生理的弯曲は、単なる形態的な特徴ではなく、重力下でのエネルギー効率を最大化するための機能的な構造である。
  • 近年は、「Cone of Economy(経済性の円錐)」という概念が重要視されている。これは、身体の重心が適切な範囲内に収まっていれば、最小限の筋力で姿勢を保持できるという理論。生理的弯曲の破綻は、この範囲から逸脱し、補正のために背筋群の過剰な緊張や骨盤の後傾を招き、腰痛や疲労の原因となる。
  • 画像診断においては、単にヘルニアや狭窄の有無を見るだけでなく、全脊柱アライメントを俯瞰的に評価することが重要。

頚椎(Cervical Spine):前弯

頚椎は生理的前弯(Cervical Lordosis)を呈する。これは乳児が首がすわる時期(生後3〜4ヶ月頃)に形成され始める二次的弯曲である。

  • 正常値:C2-C7間のCobb角で20〜40度程度とされるが、個人差が大きい。
  • 病的意義:前弯の消失(ストレートネック)や後弯変形は、頚部痛や神経根症状のリスク因子となる。

胸椎(Thoracic Spine):後弯

胸椎は生理的後弯(Thoracic Kyphosis)を呈する。これは胎児期から存在する一次的弯曲である。肋骨籠(Rib cage)と共に胸郭を形成し、臓器を保護する。

  • 正常値:T1-T12間のCobb角で20〜50度程度。
  • 加齢変化:骨粗鬆症性椎体骨折などにより、後弯が増強(円背)しやすい部位である。

腰椎(Lumbar Spine):前弯

腰椎は生理的前弯(Lumbar Lordosis: LL)を呈する。歩行開始時期(生後1年頃)に形成される二次的弯曲である。

  • 正常値:L1-S1間のCobb角で40〜60度程度。
  • 骨盤との連関:腰椎前弯は骨盤の形態(Pelvic Incidence: PI)と強い相関があり、「PI = LL ± 9度」という式が脊柱変形矯正の指標として広く用いられる1)

胸椎は心臓を守るために包むように盛り上がっているので後弯している。それ以外はその逆の前弯していると考えると覚えやすいですね。

症例 20歳代女性

  • 頚椎:前弯
  • 胸椎:後弯
  • 腰椎:前弯

の生理的弯曲を認めている。

画像診断の要点:立位X線の重要性

  • 生理的弯曲や脊柱配列(Alignment)の正確な評価には、重力の影響を反映する立位全脊柱X線(側面像)がゴールドスタンダード。
  • 臥位で撮影されるMRIやCTでは、重力除去により弯曲が平坦化し、すべり症や不安定性が過小評価されるリスクがあるため注意を要する。

主な評価指標

  • Sagittal Vertical Axis (SVA):全身バランス(Global Sagittal Alignment)の基本指標。C7垂線とS1後上角の水平距離を測定し、5cm未満を正常範囲とする。前方偏位(Positive balance)はQOL低下と相関する。
  • Cobb角(Cobb Angle):
    • 頚椎:C2-C7間などで測定。理想的な前弯の消失は、慢性疼痛や変性進行と関連する。
    • 腰椎:L1-S1間で腰椎前弯(LL)を測定するのが一般的である。

     

    参考文献

      1. Schwab F, et al. Adult spinal deformity-postoperative standing imbalance: how much can you tolerate? An overview of key parameters in assessing alignment and planning surgical reconstruction. Spine. 2010;35(25):2224-2231.
      2. Glassman SD, et al. The impact of positive sagittal balance in adult spinal deformity. Spine. 2005;30(18):2024-2029.
      3. Harrison DD, et al. Modeling of the sagittal cervical spine as a method to discriminate hypolordosis: results of elliptical and circular modeling in 72 asymptomatic subjects, 52 acute neck pain subjects, and 70 chronic neck pain subjects. Spine. 2004;29(22):2485-2492.

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