腹部造影CTを見ていると、後期相や排泄相で膀胱の中に白く映る造影剤が確認されることがあります。

さらに、尿管口からスーッと細い線状に造影剤が流れ込んでいる様子を目にすることも。

この現象、初めて見ると「何かおかしいのでは?」と思うかもしれませんが、実はこれ、ごく普通の生理的な動きなんです。

腎臓から膀胱まで、造影剤の旅路

ヨード造影剤は静脈に注射されると、腎臓で濾過されて尿に混じって出てきます。そして尿管を通って膀胱へと移動します。この流れは個人差はありますが、およそ10分くらいで起きます。ですので、CTの撮影タイミングによっては、膀胱内に造影剤がたまって見えるのです。

また、尿管の開口部からジェットのように吹き出すように造影剤が流れ込む様子が見えることがあります。

これは「尿管ジェット現象(ureteral jet phenomenon/urerteric jets)」と呼ばれていて、超音波やCTで見えることがあります。

尿管から膀胱へ尿を間欠的に平滑筋によって生理的に排出する様子を直接描出したものです。

症例 20歳代 女性

左側の画像では両側に尿管口付近に造影剤を認めます。やや尾側のスライスでは膀胱内にジェット状に交叉する膀胱内排泄を認めます。「尿管ジェット現象(ureteral jet phenomenon/urerteric jets)」ともCTヨード造影剤の膀胱内排泄を見ており、正常所見です。

排泄の様子はタイミングと量で変わる

膀胱内の造影剤の見え方は、撮影したタイミングや投与した造影剤の量によって変わってきます。例えば、撮影が早すぎるとまだ造影剤が膀胱まで到達しておらず、ほとんど映らないこともありますし、遅めに撮れば膀胱内にたっぷり造影剤がたまって真っ白に見えることも。

一度に排尿されずに膀胱内に残る量も人によって違うので、貯留量や分布の仕方も一定ではありません。こうしたバリエーションがあることを理解しておくと、変に心配しなくて済みますね。

異常と誤解しやすいけど、実は正常

膀胱の中に白く映るものを見ると、血尿や出血を疑ってしまうことがあります。でも、造影剤は重力に従ってたまるというよりも全体に広がる傾向があり、分布の仕方や濃度の変化である程度見分けることができます。

そして、尿管ジェットが見えるということは、尿の通り道がちゃんと機能している証拠でもあります。観察できること自体が、腎臓から膀胱への排泄経路が正常だという安心材料になります。

まとめ

造影CTで膀胱内に造影剤が見える、尿管から細く流れ込む…どちらもよくある正常所見です。

知っておくことで、不必要な不安や誤診を防ぐことができますね。

参考文献・出典

  • Kalmon EH, Albers DD, Dunn JH. Ureteral jet phenomenon; stream of opaque medium simulating an anomalous configuration of the ureter. Radiology. 1955;65(6):933-5.
  • Summers RM, Adler RS, et al. A model of the ureteral jet phenomenon. Investigative Radiology. 1992;27(12):1044-1050.
  • Radiopaedia.org. Ureteric jet. Available at: https://radiopaedia.org/articles/ureteric-jet

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