膀胱憩室(bladder diverticulum)は、膀胱壁の粘膜が筋層を突き破って外側へ突出した構造であり、しばしば排尿障害や尿路感染症、腫瘍の温床となるため、画像診断上の重要な所見となります。

CT検査は膀胱憩室の構造的評価に有用であり、診断と合併症の評価において重要な役割を果たします。

膀胱憩室(bladder diverticulum)の分類:真性憩室と仮性憩室

膀胱憩室は構造的特徴により以下の2つに分類されます。

  • 真性憩室(先天性):すべての膀胱壁の層(粘膜・筋層・漿膜)を含む憩室で、通常は単発で、筋層の解剖的欠損により発生します。小児期に発見されることが多い。
  • 仮性憩室(二次性):粘膜が筋層の隙間から外側に突出した構造で、排尿障害や前立腺肥大、神経因性膀胱などの基礎疾患に続発します。多発しやすく、筋層を欠くため壁が薄く、膨隆性を示すのが特徴です。

膀胱憩室(bladder diverticulum)のCT画像上の特徴

CTでは、膀胱本体から外側へ突出する嚢状構造として膀胱憩室が確認されます。造影CTでは、遅延相や排泄相で膀胱内の造影剤が憩室内にも充満し、連続性を持って描出される。

  • 形状:嚢状または袋状で、膀胱壁から突出した構造。
  • 位置:後天性憩室は三角部周囲に好発し、多発する傾向。

症例 90歳代男性

腹部単純CTで、膀胱前壁に憩室を2カ所認めています。

また前立腺腫大を認めています。

膀胱憩室(bladder diverticulum)の臨床的意義と合併症の評価

CT画像で膀胱憩室を確認することは、以下のような臨床的判断に寄与します。

  • 排尿障害の原因精査:前立腺肥大や神経因性膀胱などの基礎疾患との関連を評価できます。
  • 尿路感染症:尿のうっ滞により感染リスクが高まります。CTで周囲脂肪織濃度の上昇や壁肥厚があれば膀胱炎や憩室炎を示唆します。
  • 腫瘍合併の評価:憩室内に不整な壁肥厚や充実性腫瘤がある場合は膀胱癌の可能性を考慮します。筋層が欠如している仮性憩室では、早期に周囲組織へ浸潤する傾向があります。MRIと組み合わせて診断精度を高めることが重要。

まとめ

膀胱憩室(bladder diverticulum)はCTにより形態評価が可能。特に憩室内の腫瘤性病変を疑う場合には、MRIや膀胱鏡検査との併用で正確な診断を行う必要があります。

参考文献・出典

  • Gayer G, Zissin R, Apter S, et al. Urinomas caused by ureteral injuries: CT appearance. Abdom Imaging. 2002;27:88–92.
  • 画像診断2021年特集:泌尿器領域 p.493、p.1465-1468、p.253
  • Feinstein KA, Fembach SK. Septated urinomas in the neonate. AJR. 1987;149:997–1000.

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