先に結論:腹部・骨盤のがんのFDG-PET
- FDG-PETは膵がん・胆道がん・大腸がん・卵巣がん・子宮がん・悪性リンパ腫などの転移・再発の検索に役立ちます
- 一方、高分化の肝細胞がん・腎がん・前立腺がん・胃がんの一部は集積が弱く、尿路(腎・尿管・膀胱)や腸の生理的集積に隠れて見えにくいことがあります
- 炎症(胆嚢炎・膵炎など)にも集まるため、CT・MRIとあわせて判断します
- 正常の副腎や、閉経前の卵巣・子宮内膜にも生理的集積があり、副腎は撮像直前の迷走神経反射、卵巣・子宮内膜は月経周期で強く見えることがあります
肝腫瘍
- 肝臓には不均一な生理的集積がある。
- 肝細胞癌:形態と分化度で集積は異なる。
- 塊状の形態・低分化な腫瘍=高集積
- びまん型・高分化な腫瘍=脱リン酸化酵素活性が高い=低集積
胆道系腫瘍
- 胆嚢癌や胆管癌にはFDGは比較的よく集積する。
- 腫瘤を形成しない浸潤性胆管癌などは偽陰性となることが知られている。
- 胆嚢炎や胆管炎などの炎症性疾患にも集積するので注意。
- 鑑別には遅延画像を取ると、炎症部位の集積は低下(腫瘍の集積は残存)するため、有効と報告ある。しかし、実際はしばしば困難。
膵腫瘍
- 膵癌と腫瘤形成性膵炎はどちらにもFDGが集積するため、FDG-PETだけでの鑑別は困難。
- 浸潤性膵管癌(膵癌の大部分を占める)は中等度の集積を示す。
- 膵癌で集積が弱くなる原因として、腫瘍が小さい場合や耐糖能障害を伴っている場合が挙げられる。
- IPMNは細胞成分が少なく悪性の場合でも集積が弱いとされる。壁在結節に強い集積を認めることがあり、悪性を示唆する。
- 胆管癌や膵頭部癌で注意が必要なのは、胆道系狭窄の治療のためのステント挿入に伴う炎症であり、ステント留置部位に一致したFDG集積が認められる。
消化管腫瘍
胃癌
- 胃はさまざまな生理的集積を認めるため、胃癌の評価には基本的に使えない。
- 早期胃癌はFDG-PETでの描出が難しい。
- 進行癌でも検出できないことがある。粘液癌、印環細胞癌、低分化型腺癌、硬癌への集積は低い。
- 結節状の生理的集積もときに認められる。
- しかし、術後の再発診断には使える。特に肝転移、腹膜播種の検出に優れている。
消化管間質腫瘍(GIST : gastrointestinal stromal tumor)
- PETで検出されることが多い。
- 遠隔転移、腹膜播種診断に有用。
- 分子標的薬剤イマチニブの治療効果判定にも利用。なぜならば治療後必ずしも腫瘍径の縮小が見られない。CTで内部低濃度として描出されるから。
結腸癌・直腸癌
- 原発巣への集積は高いことが多い。
- リンパ節転移の特異度が高い。
- ビグアナイド系経口糖尿病治療薬メトホルミンの腸管集積への影響。
- 腸管粘膜のブドウ糖利用を促進=FDG集積増加。なので、見にくくなるため、薬剤を中止する。メトホルミンによる集積増加は結腸で強く、小腸でもみられます。休薬期間が72時間未満では遠位結腸の集積増加が残ったとの報告があり、48時間以上の休薬を勧める総説もあります。
子宮癌
- 上皮内癌、早期癌はPETによる描出は困難。
- 偽陽性:月経出血、炎症、子宮筋腫、子宮腺筋症
- 偽陰性:高分化型、境界病変
- 術前リンパ節診断にも用いられ、特異度は高いとされる。
- 遠隔診断、再発腫瘍の診断に有用。
卵巣癌
- 原発巣の診断精度はあまり高くない。
- なぜか? 嚢胞性腫瘤を形成するため。排卵時期から黄体形成期の正常卵巣に生理的集積が認められるため。
- 再発診断、特に腹膜播種の検出に有用。腫瘍マーカーが高値にも関わらず、CT検査にて異常が見られない場合、FDG-PETによる情報が付加されることが多いとの報告あり。
- 腹膜播種にて注意すべき好発部位:ダグラス窩、小腸間膜、回盲部、左右傍結腸溝、モリソン窩、横隔膜下、臍部皮下、大網
子宮・卵巣の生理的集積(月経周期・出血性嚢胞)
- 閉経前の子宮内膜は月経期と排卵期に集積が高くなる。平均SUVは月経期5±3.2、排卵期3.7±0.9、増殖期2.6±1.1、分泌期2.5±1.1で、ホルモン療法を受けていない閉経後は1.7±0.5だった(Lerman 2004)。
- 卵巣は月経開始から約2週後(排卵期ごろ)に集積が最も高く(SUVmax中央値3.40)、月経開始後1週目に最も低かった(同1.60)(Kim 2019)。
- 閉経前の卵巣の集積は機能性のことがある一方、閉経後の卵巣の集積は悪性と関連していた(Lerman 2004)。
- 黄体出血などの出血性嚢胞を含む機能性嚢胞は、閉経前の周期的な変化の一部。集積があってもすぐに悪性とは考えず、月経周期・ホルモン治療の有無・MRI所見(出血成分か充実部か)と合わせて判断する。
症例 20歳代女性(黄体嚢胞への生理的集積)

引用:Radiopaedia(Physiologic FDG uptake in corpus luteal cyst)
リンパ腫の治療中に撮影したPET/CTの冠状断融合画像です。骨盤の左側に限局したFDG集積があります。

引用:Radiopaedia(Physiologic FDG uptake in corpus luteal cyst)
同じ症例の横断像(上からPET・造影CT・融合画像)です。集積は左卵巣に一致し、黄体嚢胞への生理的集積と診断されました。悪性と取り違えないよう注意が必要な所見です。
副腎腫瘍
- 正常副腎や周囲の褐色脂肪にも集積を認める事がある(下の「副腎の生理的集積」を参照)。
- 副腎転移と腺腫の鑑別では、CTやMRに内部濃度(脂肪成分の有無)の情報に加え、FDGの集積程度による鑑別が可能と報告されている。
- SUVmaxの閾値は報告により異なり(例:2.65)、腺腫でも高集積を示して偽陽性(手術例の約28%)となることがあるため、CT・MRIの所見とあわせて判断する。21研究・1391病変のメタ解析では、FDG-PETによる副腎病変の良悪性鑑別の感度は97%、特異度は91%で、視覚評価とSUVによる評価で精度に差はなかった。ただし特異度はがんの既往の有無によって変わるとされる。
- 偽陽性を示す良性腫瘍:腺腫、褐色脂肪腫、oncocytoma、血腫など。
副腎の生理的集積はどのくらい?
- 正常の副腎は細いため、PET単独では位置が分かりにくく、CTと重ねて初めて確認できることが多い。悪性リンパ腫の患者20人(40副腎)の検討では、PET単独で副腎と確認できたのは5%、PET/CTでは68%で、正常副腎のSUVmaxは0.95〜2.46。視覚的にも肝臓より弱いものから肝臓より強いものまで幅がある(Bagheri 2004)。
- FDG注射の直前に迷走神経反射(気分不良・血圧低下)を起こした4人では、形が正常な両側副腎に強い集積がみられた。1358人のうち、形が正常なのに両側副腎へ強く集積したのは10人(0.74%)だった(Jinguji 2016)。
- 読影のコツ:CTで副腎の形が正常で左右対称のうっすらした集積なら生理的集積を考え、片側の結節に一致する集積なら転移などを考えて、CT値やMRIの化学シフト画像と合わせて判断する。
腎腫瘤
- FDGが尿中に排泄されるため、腎癌、尿管癌、膀胱癌など尿路系悪性腫瘍の診断は困難なことが多い。
- 腎細胞癌への集積は乏しい。→PETは使えない。
- 腎盂癌や腎転移では高集積を呈する事が多いとされる。
精巣腫瘍
- 原発腫瘍への集積も高く、病期診断・再発診断に非常に有用。
- 精巣に生理的な集積があり、若年者で高い傾向があるが、左右差に注目し、左右差があれば指摘する。
前立腺癌
- 膀胱の背側に位置していることもあり、原発腫瘍の評価は難しい。
- 骨転移の検出能も骨シンチの方が高い。
【2013年問題】
問題18
子宮や卵巣への生理的なFDG集積と病的集積を鑑別するために必要な情報はどれか、2つ選べ。
a. 月経周期
b. 妊娠・出産の経験の有無
c. 初経年齢
d. ホルモン治療の有無
e. 下剤服用の有無
解答:a, d
参考文献
- Lee SH, Jin S, Lee HS, et al. Metformin discontinuation less than 72 h is suboptimal for F-18 FDG PET/CT interpretation of the bowel. Ann Nucl Med. 2016;30(9):629-636. PubMed
- Steenkamp DW, McDonnell ME, Meibom S. Metformin may be associated with false-negative cancer detection in the gastrointestinal tract on PET/CT. Endocr Pract. 2014;20(10):1079-1083. PubMed
- Lang BH, Cowling BJ, Li JY, et al. High False Positivity in Positron Emission Tomography is a Potential Diagnostic Pitfall in Patients with Suspected Adrenal Metastasis. World J Surg. 2015;39(8):1902-1908. PubMed
- Boland GW, Dwamena BA, Jagtiani Sangwaiya M, et al. Characterization of adrenal masses by using FDG PET: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance. Radiology. 2011;259(1):117-26. PubMed
- Lakhani A, Khan SR, Bharwani N, et al. FDG PET/CT Pitfalls in Gynecologic and Genitourinary Oncologic Imaging. Radiographics. 2017;37(2):577-594. PubMed
- Bagheri B, Maurer AH, Cone L, et al. Characterization of the normal adrenal gland with 18F-FDG PET/CT. J Nucl Med. 2004;45(8):1340-3. PubMed
- Jinguji M, Nakajo M, Nakajo M, et al. Vasovagal-related stress immediately before FDG injection may increase bilateral adrenal FDG uptake. Br J Radiol. 2016;89(1061):20150950. PubMed
- Lerman H, Metser U, Grisaru D, et al. Normal and abnormal 18F-FDG endometrial and ovarian uptake in pre- and postmenopausal patients: assessment by PET/CT. J Nucl Med. 2004;45(2):266-71. PubMed
- Kim TH, Kim MR, Jung Y, et al. Relationship between sex hormones levels and 18F-FDG uptake by the ovaries in premenopausal woman. Radiol Oncol. 2019;53(3):293-299. PubMed
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