食道癌の頻度
- 男女比で5.4:1と男性に多い。
- 年齢は60~70歳台に好発。
食道癌の占拠部位
- 胸部中部食道癌が47%(最多)>胸部下部食道28%>胸部上部食道12%>腹部食道8%>頸部食道5%
食道癌の組織型
- 扁平上皮癌が86%と最も多い。
- 腺癌は約7%と少数。
食道癌の治療法
- 内視鏡治療(18%)
- 手術で食道切除(61%)
- 化学放射線療法(51%)
内視鏡的切除(EMR/ESD)
- 深達度がT1b(SM)以深であれば適応外。
- 深達度がT1a-EP/LPMおよびT1a-MMの病変であっても治療適応外となる場合もある。
- 深達度がT1a-EP/LPMの場合は大きさが5cmを超える全周性病変は、内視鏡治療適応外。
- 深達度がT1a-MMの場合は、大きさにかかわらず全周性病変は内視鏡治療適応外。
- 深達度を鑑別するには、非拡大内視鏡に加えてNBI(narrow band imaging)/BLI(blue laser imaging)併用拡大内視鏡の実施が弱く推奨されている。
手術療法
- cStage 0〜Ⅲの食道癌に対して推奨される。
- cStage Ⅳ Aの病変も化学放射線療法を行った後に切除可能となった場合は適応となる。
- 食道胃接合部癌の手術に関しては、術式を決定するために、リンパ節転移の部位および食道浸潤長を術前に診断することが重要。上縦隔および中縦隔にリンパ節転移がある場合は経右胸腔アプローチで手術を行い、上縦隔および中縦隔にリンパ節転移がない場合は経食道裂孔アプローチを行う。そのため、リンパ節転移の部位を丁寧に記載する必要がある。上縦隔および中縦隔にリンパ節転移がない場合も食道浸潤長が4cm以上の場合は経右胸腔アプローチで手術を行う。
化学放射線療法
- cStage 0〜Ⅳ Aの病変に関してシスプラチン+5FU両方が推奨されている。
- ドセタキセルを併用したDCF両方も行われているが、有害事象の発生率が高くなるため、適応には慎重な検討が必要。
- cStage Ⅳ Bの病変に対しては、ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬の有用性が示されている。
放射線単独療法
- 化学放射線療法と比較すると、治療効果が低い。
- 合併症、高齢、全身状態不良、患者の拒否などで化学療法の実施が困難な場合のみ適応。
治療後の局所再発検索のモダリティおよび期間
- 局所再発やリンパ節転移の評価にはCTで行うことが多い。
- 深達度がT1bの症例→術後3年目までの12ヶ月ごとの胸腹部CT検査を行うことが推奨されている。
- 深達度がT2〜T4の症例→2年目までは6ヶ月ごとの胸腹部CT検査を行うことが推奨されている。
- 再発の大部分が、術後3年以内に発生し、術後6年目以降には大幅に再発率が減少する。
FDG-PETはどんなときに有用か?
- 10mm以下の小さな転移や上肢の転移の検出に有用。食道癌の多くは扁平上皮癌であり、強い集積を示す。
- 内部壊死などがなく、形状からは転移と診断できない病変や、サイズが小さいためCTでは評価が困難な病変であっても、PET/CTは同定が可能。
治療後の局所再発検索の画像所見
- 局所再発とリンパ節再発がある。
- 病理でリンパ管浸潤が見られた症例、術前に食道ステントが留置されていた症例、深達度がT3~4の食道癌で術前にリンパ節転移を伴った症例は、局所再発率が高いとされている。
- 腫瘍の病理組織型(扁平上皮癌・腺癌の2種類がある)も参考になり、術前化学療法後に手術をした場合、病理で非CR(complete remission)である場合は、扁平上皮癌の方が局所再発や鎖骨上窩リンパ節転移の頻度が高いとされている。
リンパ節転移
- 原発巣の位置によりリンパ節転移の好発部位も変化することが知られている。
- 胸部上部食道癌術後の場合は、反回神経リンパ節や上〜中部傍食道リンパ節転移度の頻度が高くなる。
- 胸部下部食道癌術後の場合は、下部の傍食道リンパ節や腹部リンパ節への転移の頻度が高くなる。
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遠隔転移
- 肺(27.6%)
- 肝臓(18.3%)
- 骨(14.8%)
- 脳(10.5%)
- 副腎(10.3%)
が食道癌における転移臓器。
- 遠隔転移を有する患者に対しては、基本的に化学療法が適応となるが、肺転移に対する手術療法は、化学療法と比較して予後が良い
- オリゴ転移に関しては、遠隔転移であっても、手術によって予後が改善される。
オリゴ転移とは??
遠隔転移を来した病巣の数が数個のみの状態をオリゴ転移という。転移があってもオリゴ転移であれば局所治療を行うことによって長期生存、場合によっては根治に導けることがあることが知られるようになった。
肺転移・肝転移
- 食道癌原発巣の部位によって、転移の頻度に違いがみられ、血流動態での違いが影響し、肺転移は、上部食道で頻度が高く、肝転移は、下部食道で頻度が高い。
- 原発巣が扁平上皮癌ならば腺癌より、肺転移の頻度が高い。
- 原発巣が腺癌ならば扁平上皮癌より、肝転移の頻度が高い。
- 腺癌は、扁平上皮癌と比較して遠隔転移の頻度が高い。
脳転移
- 脳転移は、肺癌および乳がんで頻度の高い転移様式。
- 食道癌の経過観察において、定期的に頭部MRIを施行することはあまりしない。
骨転移
- 前立腺癌や乳癌、肺癌と比較すると頻度は少ない。
- 食道癌に骨転移が発生した場合は、肝転移や肺転移よりも予後が不良となる。
- 骨転移は、脳転移の発生頻度と正の相関関係があり、食道癌に骨転移がある場合には、脳転移を意識する必要がある。
副腎転移
- 肺癌で多くみられる所見で、食道癌による発生率は副腎転移の中では2.7%と低いが、術後の副腎単独転移の症例報告もある。
重複癌
- 食道癌は、他臓器癌との重複癌が多い。
- 他臓器重複癌による死亡率は、食道癌患者の死因の6%を占める。
- 重複癌は、頭頸部領域が最も多く、胃癌、肺癌、肝細胞癌、大腸癌もみられる。
- 頭頸部領域の頻度が高い理由は、病理組織が食道癌と同じ扁平上皮癌であり、飲酒や喫煙など同じ発癌危険因子を有していることが考えられる。
- 他癌先行例、同時性重複例、食道癌先行例いずれの場合もみられる。
参考文献:画像診断 Vol.43 No.11 増刊号 2023 P50-59